表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1.畑中ユウキ

 得意な教科は体育。苦手な教科はそれ以外。文字の読み書きができない。簡単な計算に時間がかかる。友達はそこそこ。コミュニケーションはできる。それがおれ。それが畑中ユウキ。

 

 昼休みに、いつも本を読んでいるクラスメイトがいた。頭脳明晰で、いつもテストで百点を取っている。授業では積極的に手を挙げて、グループ活動ではリーダーを務めているまじめな子。

 おれは、友だちとドッジボールをしながら、チラチラと校庭からその子を観察した。

「おいユウキ!よそみすんな!ボールが顔に…」

 友だちのコウがさけぶ。なんだ、と振り向くと顔に強い衝撃がはしった。おれはそのまま後ろに倒れこむ。尻餅をついた。

 コウや、他の友だちもこちらに駆け寄ってきた。コウはため息をつきながら、「お前バカかよ」と言いながらもおれに手を伸ばす。

 しかしおれは、その行為をみんなの前でさらすのが、なんだか恥ずかしくなってコウの手を払いのけて、自力で立ち上がろうとした。腰に力を入れた瞬間、ズキっと鈍器で殴られたかのような鈍い痛みがはしった。


 しばらく沈黙して、おずおずとコウにお願いをする。

「コ、コウー……やっぱ手、貸して…」

 小さな声でいう。コウはめんどうくさそうな顔をしたあと、しぶしぶといった感じで再度手を伸ばす。

「ユウキ、あとでポケモンのレアカードよこせよ。お前、自覚してないだろうけど馬鹿力だから相当痛かったんだからな」

 おれのプライドとポケモンカードを犠牲に何とか助けてもっらったが、腰や鼻のジンジンとした痛みとは別に、鼻に違和感を感じた。触ってみると、手にべったりと血液が張り付いていた。

「うわっ!鼻血でた!」

 おれは大急ぎで保健室に走った。

 途中に教室から見えたあの子は、鼻で笑っていた。なんだか顔が更に熱くなっていくのを感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ