表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/40

第19話 焚火の作戦会議 後編

「私の作戦……聞いてくれますか?」


 まおが、いつになく小さな声で言った。


 焚火の火が揺れる。


「当たり前だろ? どうしたんだよ?」


 ドラが不思議そうに笑う。


 まおは少しうつむいた。


「私は……この間の作戦で、むねゆきさんとらいがさんを危険な目に合わせました……」


 その言葉に、むねゆきが目を丸くする。


「もしかして、俺たちが帰るの遅くなったこと、ずっと責任感じてたのか?」


「だって……」


 まおが小さくつぶやく。





 その姿が、いつものしっかりしたまおじゃなくて。


 なんだか年相応の女の子みたいで――ぼくは思わず吹き出してしまった。


「ぷっ……」


「なんで笑うんですか!」


 まおが顔を真っ赤にして怒る。


「だって~、ねー?」


 ひかりがニヤニヤしながらせいかを見る。


「うん。まおが可愛くて」


 せいかまで笑っていた。


「二人とも!」


 まおがさらに慌てる。


 すると、レオが真剣な顔になる。


「でもよ、まおの作戦のおかげで誰も欠けることなく、みんなここにいるんだろ?」


 その言葉に、まおがハッと顔を上げた。


「まお様」


 今度はセバスチャンが静かに口を開く。


「誰もあなたを責めていません。もっと自分に自信を持ってください」


 ぼくは驚いた。


 セバスチャンが、こんなふうにまおへ意見するなんて珍しい。


 でも、その言葉はまっすぐだった。


 まおは少しだけ目を見開き――。


 やがて、ぎゅっと拳を握る。


「……みなさん、ありがとうございます」


 さっきまで不安そうだった顔が、少しずついつものまおに戻っていく。


「私の考えた作戦、聞いてもらえますか?」


 今度の声には、自信があった。


「そうこなくっちゃ!」


 ドラが笑いながら立ち上がる。


 みんなも「おー!」と声を上げた。


 その様子を見ながら、ぼくはほっと息をつく。


 まおの顔も、どこか安心したように見えた。





 焚火の火が揺れる中、まおが小さく咳払いをした。


「まず、三つのチームを作ります。分かりやすく、“いわしチーム”“さけチーム”“まぐろチーム”とします」


(なんで魚? 逆に分かりづらいんだけど……)


 ぼくは心の中で思わずツッコむ。


 でも周りのみんなは真剣な顔だ。


 ぼくだけが変なことを考えている気がして、何も言えなかった。


「まず、いわしチームは洞窟の外にいる猿たちをひたすら相手にします。そして、その間にさけチームとまぐろチームが洞窟に潜入。洞窟に入ったら、さけチームが中猿たちと戦います。そして、まぐろチームはボス猿を捜索、対決してください」


 説明が終わる。


 ……全然頭に入ってこない。


 さすがに聞こうとした時だった。


「あのさ――」


「つまり」


 横からひかりが口を開いた。


「いわしチームが囮になって、さけチームが中猿を足止め、まぐろチームが真っすぐボス猿を目指して最短撃破を狙うってことよね?」


「そういうことです」


 まおがうなずく。


「数で上回る猿たちに持久戦は自滅します。最短でボス猿を倒して撤退させるしかありません」


「それしかないな」


「さすがまお、分かりやすい」


 仲間たちが口々に言う。


 どうやら理解できなかったのはぼくだけらしい。


 急に恥ずかしくなった。




 ぼくの落ち込み何て無視して、まおが話を続ける。


「まず、いわしチームに求められるのは持久力と連携です」


「だったらおれ達だろ」


 ドラがニヤッと笑う。


 レオも当然みたいにうなずいた。


 この二人ほど連携が取れるチームはいない。


「決まりね」


 ひかりも納得したように言う。


「次にまぐろチームですが、ここに求められるのはとにかく攻撃力。最高戦力で臨みたいです」


「だったら俺だろう」


 むねゆきが即答する。


「おいおい……冗談言ってる時じゃないぞ? ここは俺だろう」


 セバスチャンも負けじと前に出た。


 一瞬、空気がピリつく。


「二人でお願いします」


 まおが呆れたように言うと、二人は渋々うなずいた。





「最後にさけチームですが――ここで求められるのは判断力です。中猿の足止めをしながら必要であれば他のチームへの救援などもやってもらいたいです」


 まおの説明が終わる。


 みんなの視線がぼくに集まる。


「え? ぼく?」


「いや、一番こうたが向いてるだろ」


「意外と判断力あるしな」


 仲間たちが次々言う。


 胸がドクンと鳴った。


「この作戦で一番大変なポジションです……お願いできますか?」


 まおがまっすぐぼくを見る。


「こうちゃん……」


 せいかも不安そうだ。


 でも、ぼくはゆっくりうなずいた。


「わかった。引き受けるよ」


「俺たちもこうたについて行く!」


 らいがが元気よく言う。


 らいねもコクンとうなずいた。




 その後、 


 女性陣はキャンプ地で待機。


 もし作戦が失敗した時は、すぐ逃げられるよう準備しておく。


 そこまで決めると、その日の会議は終わった。


 出発は明日の午前中。


 いよいよ猿たちとの最終決戦だ。


「やるしかない……」


 ぼくは燃える焚火を見つめながら、強く拳を握った。






 決戦の日の朝。


 いつもと同じように焚火が燃えていて、魚の焼ける匂いもしている。


「おいレオ! その魚デカい方おれのな!」


「勝手に決めるな!」


 ドラとレオは朝から騒がしい。


 まおとせいかは荷物を確認しながらテキパキ動いているし、らいがとらいねも水筒や包帯を運んで手伝っていた。


 見た目だけなら、いつもの朝と変わらない。


 でも――どこか空気が重かった。


 みんな笑っているのに、心の奥では緊張しているのが分かる。


 ぼくだってそうだ。


 胸の奥がずっとソワソワして落ち着かない。


 シトロンさんは、今日も早朝からどこかへ出かけてしまったらしい。


 決戦の朝くらい、顔を見て話をしたかった。


 結局、最後までちゃんと打ち解けられなかったな……。


 そう思うと少し寂しかった。





 だけど、今日は少しだけ違うこともあった。


 モカが朝食の輪に来ていたんだ。


 このキャンプ地に来てから、ずっと一人でふさぎ込んでいたモカ。


 こうしてまた一緒にご飯を食べられているのが、なんだかすごくうれしかった。


 朝食がひと段落したころだった。


「あの……」


 急にモカが立ち上がった。


 みんなの視線が集まる。


「どうしたの?」


 せいかが優しく聞く。


 モカは胸の前で手をギュッと握りしめた。


「今日……決戦の日ですよね……。あの……私たちのためにありがとうございます!!」


 そう言って、大きく頭を下げた。


 一瞬、みんながポカンとする。





「へへへ……気にするな!」


 最初に笑ったのはドラだった。


「俺たちが好きでやってることだ!」


 満面の笑みで言うドラを見て、少し空気がやわらかくなる。


「それでも……ちゃんと出発前にお礼を言いたくて……」


 モカが照れくさそうに笑う。


 その笑顔を見て、みんなの顔も自然とゆるんだ。


 やっぱりモカはすごい。


 いるだけで空気を明るくする。


「それと……今日の朝、おじさんと話したんです」


「シトロンさんと?」


 まおが聞き返す。


 モカはコクリとうなずいた。


「みなさんが今日、猿たちと戦うって伝えたんです。そしたら……“そうか……”って」


 ぼくは少しだけ下を向く。


 家族じゃない。


 そう言ったシトロンさんの顔が頭をよぎった。





 でも、モカは続ける。


「それで、出発する前にこれを渡してほしいって」


 モカは水筒を三つ取り出した。


「陽だまりの実のジュースです。今はこれしかないけど、何かの役に立てばって……」


「えっ……」


 みんな驚いた顔をする。


 ぼくも思わず目を丸くした。


 シトロンさんが……?


「おじさんは……普段、あんまりしゃべらないし……口も悪いけど……本当はとっても優しい方なんです」


 モカがうつむきながら言う。


「だから……みなさん、どうかおじさんのことも嫌いにならないでください……」


 静まり返るキャンプ地。


 その空気の中で、セバスチャンが静かに立ち上がった。


「だったら尚更、この戦い――負けられないな」


 その言葉に、みんなが力強くうなずく。


 ぼくもギュッと拳を握った。


 帰ってきたら、もう一度ちゃんとシトロンさんと話そう。


 今度こそ、シトロンさんの本音を聞かないと。





 出発の時間が近づいてきた。


 みんな、それぞれ静かに準備をしている。


 ドラは木刀を肩に担いで何度も振っているし、レオは荷物を確認していた。セバスチャンとむねゆきも真剣な顔で装備を整えている。


 いつもの賑やかな空気とは少し違った。


 ぼくも自分の木刀をじっと見つめる。


 この木刀で、本当にみんなを守れるんだろうか。


 そんなことを考えていると――


「こうちゃん…」


 後ろからせいかの声がした。


 振り返ると、せいかが不安そうな顔で立っていた。


「どうした?」


 なんとなく言いたいことは分かっていた。


 でも、ぼくはなるべく明るく聞き返した。


「こうちゃん…心配だよ…」


 せいかの目には涙が浮かんでいた。





 胸がギュッと痛くなる。


 本当はぼくだって怖い。


 ボス猿なんてどれくらい強いのかも分からない。


 失敗したらどうなるのかも。


 でも――。


「大丈夫だよ!」


 ぼくは無理やり笑った。


「僕一人じゃないし、頼れる仲間もたくさんいるよ」


 ドラもレオも、セバスチャンもむねゆきもいる。


 らいがとらいねだって一緒だ。


 だから大丈夫。


 そう、自分にも言い聞かせる。


「今からでも逃げてもいいんだよ?」


 せいかが必死な声で言った。


 その言葉に、一瞬だけ心が揺れる。





 逃げたい。


 怖い。


 本当は今すぐ安全な場所に行きたい。


 でも、モカの泣いている顔が頭に浮かんだ。


「モカたちのことを考えると、それはできないよ…」


 ぼくは木刀を握りしめる。


「今、僕が出来ることを精一杯やってくるよ」


 そして、少しだけ笑った。


「帰ってきたら、またせいかの燻製肉を食べさせてよ!」


 自分でも分かる。


 笑顔がちょっと引きつっている。


 でも、せいかはそんなぼくを見て、ふっと笑った。


「こうちゃん…変わったね」


 どこかあきらめたみたいに、でも優しく笑う。


「わかった!最高のご飯を用意して待ってるから、気を付けて行ってきてね!」


「うん!」


 ぼくは大きくうなずいた。





 その時だった。


「こうたー!そろそろ出発するぞ!」


 ドラの大声がキャンプ地に響く。


 胸がドクンと鳴る。


 いよいよだ。


 ぼくは木刀を腰に差し、仲間たちの方へ歩き出した。


 キャンプ地の入り口に、みんなが集まっていた。


 ドラ、レオ、セバスチャン、むねゆき、らいが、らいね。


 そして、ぼく。


 少し離れた場所には、せいかとひかり、モカが立っている。


 静かな朝だ。


 でも、みんなの目には強い覚悟が宿っている。


 その時、まおが一歩前に出た。


「みなさん――ご武運を!」


 一瞬の静寂。


 そして――




「おう!!」


 力強い返事が森に響いた。


 レオが前を向く。


「行くぞ!」


 その声と同時に、ぼくたちは森へ走り出した。


 猿たちとの最終決戦が、ついに始まる。



最後まで読んでいただいてありがとうございます!


次回更新日は、未定です。もしよろしければ、ブックマーク登録よろしく願いします!


noteでも活動してます。よかったら「どら猫商店」で検索してみてください!


色々な「どら猫」たちのイラストも掲載してます。


ぜひ、遊びに来てください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ