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母を探しに異世界へ  作者: 鈴月桜
第1章 羽鳥勇太
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第1話 羽鳥家

中学3年

3月1日


中学に入学した時は勉強も運動もクラスで一番下だったのだが、中学2年になってから突然勉強が出来るようになった。


塾に行った訳でもなく、特別な勉強をしている訳でも無いのに、13歳の誕生日を越えてから、記憶力が異常なまでに良くなり、教科書をまるごと暗記出来る程の記憶力を宿したのである。

そのおかげで中学2年のテストから全て学年1位となる。


記憶力は急激に良くなったが、その時は運動神経に大きな変化は無かった



しかし、中学3年の時に行われた秋の体育祭で、無我夢中に走った100m競争でギリギリ1位になってから、日を追うごとに運動神経も良くなっていく。


中学2年から最高評価を得ていた僕は、東京都内でも有名なエリート校に入学が決まった。


運動神経も日々良くなり、走れば電車並みの速さで走る事が出来る。心肺機能も上がっているのか、いくら走っても息が上がらない。


中学の卒業式を間近にした僕は、人間離れした体力、知力を身につけていたのであった。


僕の夢はただ一つ


両親を楽にしてあげたい。

今まで僕の為に遊ぶ時間も無かった両親にいつまでも何不自由無い人生を送ってもらいたい。


本当にただそれだけである。


1週間後に迎える卒業式の予行練習を終えて家に帰る。


3月1日は僕の誕生日

15歳の誕生日である。


僕の誕生日を祝うために、家族全員大好きなステーキがテーブルに並べられる。

そして父親が会社から帰宅途中に買ったのだろう、大きなケーキを母に渡す

僕の家は2DKの築30年のアパートで、とにかく狭い。

普段は4畳半のキッチンにある小さい椅子付きテーブルで食事をとるのだが、今日みたいに料理が多い時はコタツとして使用できる4人用のテーブルを両親の部屋に置いて、食卓を囲む。

そのテーブルにステーキとライス、そして中央にケーキが置かれるとテーブルの上に食べ物がいっぱいになった。


「圭子さん、ケーキの準備してくれますか?」


父は母の事をさん付けで呼び、いつも母に敬語を使っている。


僕の父らしいと言っては父らしい


父が着替える間にケーキを箱から出して15本のロウソクを母と僕がさしていく。


「母さん、美味しそうだね」


「そうね、本当に美味しそうね」


笑顔の母さんを見ているだけで心が安らぐ


父が着替え終えると家族3人で「バースディーソング」を歌う。そして並べられた15本のろうそくを僕は一気に吹き消した。


家族を守るために一生懸命働く父

趣味もない、何の取柄もない父だけど、家族を守る為に一生懸命働いてくれる。

母は体が弱いらしくて働くことが出来ない。夏の日差しが強い日は、夜に買い物へ行くぐらいだ。


そんな母に負担をかけまいと、休日もアルバイトに行き、贅沢は出来ないが何不自由なく家族3人が生活出来ているのも父親のおかげである。


僕がエリート校に受かった時も泣いて喜んでくれる優しい父である。


母親は物凄く美人で優しい。スタイルもモデル並に良くて僕の自慢の母親である。なんで母親が僕の父みたいな平凡な男と結婚したのか本当に不思議である。どうして結婚したのか何度聞いても教えてくれない。

どんなに貧乏でも母が愚痴を言っている所は見た事が無い。父も絶対に母の事を悪く言わない。

どんな時でも互いに寄り添い、笑顔を振りまく


子供から見ても仲の良い素晴らしい両親である。


母は40歳だと言っているが、とても40歳には見えない。30歳代?

いや20歳代だといっても過言では無い。


食事を摂りながら、僕が生まれてから今日までの出来事を思い返す様に父が話始める。これは我が「羽鳥家」の恒例行事みたいなものだ。

しかし今年の父は、僕が生まれた時の事を話しながら声を震わせた。


珍しい


それも僕が立派になった事を喜んで、感極まったのだろうと、その時は思っていた


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