表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つばめきたる  作者: 月島金魚
【夏】
36/93

34、芒種(その5)――精霊のお仕事



私も精霊さんが欲しいなあ。





 時刻は三時になったばかりでまだ早かったが、皆疲れを感じていたため、春の宮に戻ることにした。


「梅子さん、医務室に行ったんですよね。お城の中にあるんですか?」


 (すずめ)の視線の先、天守閣が蜃気楼に揺らいで見える。彩り豊かな夏の宮に似合わぬ漆黒の城だ。太陽に焼かれたのだと言われればきっと誰もが納得する。


「ああ。食堂や大浴場もあの中に入っている」

「……あの、前から気になっていたんですけど、誰が宮を掃除したり、ご飯を出してくれたりするんですか? どこもかしこも常に綺麗だけど、誰かが働いているのを見たことがないんです。食堂の厨房も無人だし……」


 (おおとり)が呆れ顔で玄鳥至(つばめきたる)を見る。


「失念していた」


 玄鳥至は悪びれもせずにうなずいた。


 鴻はやれやれと頭を振った。


「あのな、ここにはな、暦を助ける精霊さんがいるんだよ。暦もどきというか。そいつらはオレたち目には見えないし、個々の意思があるわけでもないが、オレたちの生活のいっさいを見てくれている。自炊する暦もいるから、主に生活力のない奴が世話になってんだ。このオレとかな!」

「じゃあ梅子さんは、お医者さんの精霊に診てもらえるんですか?」

「そんなのはいねえよ。そもそもオレたちは怪我も病もねえからな。ちょっと寝かせてもらっておしまいなんじゃねえの」

「それならどうして、キリショウさんは彼女を……」


 そこで前方から、「おおい、おおい」と手を振る影が見えた。


「噂をすればなんとやらだ」


 鴻が手を振り返すと手品のように前方の人影が消え、三人の目の前に緑色のカマキリが飛んできた。


 カマキリはヒュッと上に上がると、奇抜な男の姿になってスマートに地に降り立った。


「帰りッスか?」

「おうよ。芒種(ぼうしゅ)さまとほたるは仕事に戻ったぜ」

「そっかそっか。すいませんッス、お恥ずかしいところをお見せしちゃって」

「いんや。梅子の様子はどうなんだ?」

「夏さまにお願いしてきました。医務室でよく寝てるッスよ。――雀くん」


 キリショウは不意に雀に向いた。


「これまでいろいろ見てきたと思うけど、どうッスか。暦の仕事はやれそうッスか?」


 雀は曖昧に首を傾けた。


「なんか、大変だなあって。皆さん自由にやっているのかと思いきや、重い責任が伴っていると感じる時もあって……。そりゃそうですよね、地上の命を預かっているんですもんね。おれもうまくやれたらいいんですけど……」

「大丈夫ッスよ」


 キリショウは熱のこもったまなざしで雀の肩をぐっと掴んだ。


「期待してるッスから」

「暑苦しいわ」


 鴻がキリショウの首根っこを掴んで引き剥がすと、キリショウは大人しく引きずられながらへらへらしていた。


 ――やはり夏さまは、雀を何かに利用しようとお考えのようだ。


 夏は特に無茶を言うから気をつけなければ。上司が春でよかったと思いながら春の宮に戻って定時を迎え、玄鳥至と雀がそろって廊下に出ると、まさにその上司と出くわした。


「早く戻っていてくれてよかったわ。出奔した虫啓(むしひら)と桃の捜索をお願いしたいの。必ず今日中に、わたくしの所に連れてくること。もちろん全員参加ですよ。春の宮の団結力を見せてちょうだい」


 前言撤回。大差ない。





次回は6月21日(水)、夏至の日です。

雀くんが可哀想な目に……。

お楽しみに!(?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ