国内が片付いたから、国外にも広めていく
「徴兵だ」
あらゆる人間を徴兵していった。
村の、町の、あぶれてる冷や飯食い。
それを軒並み集めた。
集めて兵隊にしていった。
とはいえ、指揮官の貴族もいない。
訓練すらまともに行えない状態だった。
「かまわない」
その惨状に、国王はそれだけこたえた。
同時に、国内の刑務所に布令を出す。
全ての受刑者を解放すると。
「条件はあるがな」
それを受け入れるなら自由だと告げた。
あらゆる受刑者がそれを受け入れた。
受刑者達は即座に運ばれていった。
近隣諸国に。
わずかばかりの食料と、刃渡りの短いナイフを持たされて。
「好きなようにしろ。
我が国の中で無ければ、どれだけ暴れてもかまわん」
そう告げた国王は、犯罪者達に最大限の自由を与えた。
好き勝手やってもよいというお墨付きを得た犯罪者達は、早速好き勝手を始めていった。
各国に放たれた犯罪者達。
それらは手当たり次第に襲い、奪っていった。
それが混乱を呼び、鎮圧のために各国は力を注ぐ羽目になる。
そうして時間を作り出した国王は、その間に兵士を増やしていった。
生産性だけを考えて作られた、粗雑な武具。
単純な訓練しか受けてない、未熟な兵士。
その大群が短期間で揃えられた。
それを国王は周辺国に向けていった。
指揮官は少なく、まともな作戦指揮は出来ない。
とても軍事行動など期待できない烏合の衆。
それに国王は単純な指示を出した。
「ただひたすら突進しろ。
全てを蹂躙しろ。
奪え。
占領と支配は考えるな」
数少ない指揮官は、それを兵士に徹底させた。
命令通りに軍勢は戦った。
手当たり次第に破壊した。
そこにある物を奪っていった。
占領も支配もない。
ひたすらに、ひたむきな蹂躙が実行された。
国王にとって隣国の支配などどうでも良かった。
制圧して占領して、国土を増やすつもりはなかった。
ただ、攻め込んでこられるのも面倒なので、それが出来ないようにする。
それだけで良かった。
その為に相手の国力を落としていく。
下がってしまった自国の国力にふさわしい程度に。
その為に村や町を蹂躙していく。
復旧に時間がかかる程に。
略奪もさせていく。
好きなだけ奪わせていく。
国から食料などを届ける必要をなくすために。
補給の手間を省くために。
全ては現地調達させていく。
無理な戦いはしなくて良かった。
守りの堅い都市や城は相手にしなくてよい。
精鋭の騎士団は相手にしなくて良い。
勝てる相手だけを潰せば良かった。
その為に国内の人間を根こそぎ動員した。
家を継げない子供達をひたすら吸い上げた。
足りなければ労働者も引っ張っていった。
各産業が空洞化する懸念が出てくる程に。
かまう必要はなかった。
農業・鉱業・工業・商業、その他諸々のあらゆる産業。
これらに変わって、戦争が産業になるだけだ。
生産する必要は無い。
他国から奪えばいい。
そもそも、国内の人口も減っている。
生産力の低下した産業でもぎりぎりまかなっていける。
問題は何もなかった。
全てが上手くいけば。
おそろしい事に、全てが上手くいった。
近隣各国に送り込んだ、軍隊とも呼べない軍勢。
それらは国王の望み通りに各国を荒らし回った。
殺して壊して奪っていった。
もちろん敵軍も出て来た。
まともに戦えば負けるので、戦闘は避けた。
だが、勝てると踏んだら戦った。
勝てば敵の武装を奪った。
実戦経験も増えて、兵士も戦い方を身につけていった。
もちろん、負ければ一巻の終わり。
ほぼ壊滅的な損害を出してしまう。
だが、それでも生き残る者達はいる。
そういった者達は、適度に他国を荒らしたところで帰還した。
ほどよい数に調整された、実戦経験を持つ兵士となって。
「まずまずだな」
常備軍としては調度よい数になっていた軍勢。
そんな帰還兵を、国王は歓迎した。
それらを王家の直属とする。
貴族の抱える軍勢にはしない。
国軍として王家が管理していく事にする。
その兵力で国を守り、国内の整備を進める。
完璧な状態は目指さない。
そんな事、現状では不可能。
統治機構を再建するには何十年という時間が必要になる。
それを短縮する事は出来ない。
当面必要な事だけ出来れば良いと割り切る。
「こんなもんか」
何とか小康状態を保つ国。
荒らされた場所の復旧に時間をとられる他国。
それを見て、国王はため息を吐く。
我ながら馬鹿な事をやってると自嘲する。
出来ればこんな事をせずに、穏便に統治をしていたかった。
無駄な騒動はあるにせよ、それなりに平穏な日々が続けば良かったと。
前国王であった親と、それにつらなる王族と。
正室と側室だった妻と子供達と。
あらゆる貴族も。
多くの者を殺さずに済めば良かった。
だが、それは出来なかった。
「なんでかなあ……」
思い出すのは学生だった頃。
そのときに出会った娘の事。
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