そうとしか思えないが、そこに何の意味があるのか
国内政治の主導権争い。
そんな事のために他の全てを放棄している。
王子の目にはそううつっている。
実際、国内外には様々な問題がある。
それらの解決に動いてるものはあまりにも少ない。
様々な問題は主導権争いで勝利してから、というのが大方の貴族の考えだ。
そんな輩に王子はうんざりしていた。
だいたい、王子との婚姻、王家との関係。
それで勢力争いというのもどうかと思ってしまう。
なんで婚姻による関係性を重視するのか。
国をよくしよう、その為に働こう、という事は出来ないのか?
何をするにも婚姻関係による閨閥が絡むのが非情に鬱陶しい。
命令や指示を出すにも、力関係を考慮しなくてはならない。
その為に、有用な人物をまとめて活用できないという事もある。
違う派閥・勢力に所属してるから、同席する事もはばかられる。
そんな場面が多いのだ。
派閥という形でまとまり、国に尽くすなどとほざいているが。
実際は、派閥が障害になって、まとまるべきところでまとまれない。
適切な人材をまとめて扱えない。
何をやるにしても、派閥同士が争って仕事が進まない。
摩擦や衝突による障害の方がはるかに大きい。
それを今、分かりやすい形で展開されている。
三人の女による醜い争い。
反吐が出るほど気色が悪いと思ってしまう。
(どうにかならないかな)
気持ちが表情に出ないよう気をつけながら、王子は三人を眺めていた。
その背後にいる各勢力も。
そもそも何で婚姻でなければまとまれないのか?
同じ国を支える者としてまとまれば良いだけだろうに。
そうおう考える王子は、異端と言って良いのだろう。
同じような考えの者は少数派だ。
国を担う一員として、派閥など関係なしに動く。
必要に応じてまとまる。
協力を惜しまない。
それが普通で当たり前だと考えてる。
…………本当にそういう者は少ない。
王子にとって婚姻とは、単に夫婦になるだけでしかない。
そこに勢力争いを持ち込む理由や意味が分からない。
利益も感じられない。
むしろ、余計な邪魔としか思えなかった。
有用な人材を適材適所に配置したいというのに、その邪魔にしかならない。
そのせいで失うものもあった。
王子にとって、それはとてつもなく大きなものだった。
その痛手からまだ王子は回復していない。
今後も立ち直れるとは思えないでいる。
だからこそ、と言うべきか。
その胸のうちに情熱が宿ってしまうのは。
情念といっても良いかもしれない。
嘆きと諦めと憤りと願望と懇願と、憎しみ。
そんなものが渦巻いて溶け合って、一つになって。
(まあ、やるだけやってみるか)
一つの意思に昇華していく。
あるいは。
粘つく汚泥に崩れ落ちていく。
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