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怪談

雪山と幽霊

真夏なのに真冬のお話を投稿するなんて…

 朝方まで吹雪いていたけれど今は快晴。

 星がよく見える。


 一昨日の夕方から今朝方までの吹雪は酷く、凍りつきそうな二人でひたすらに寄り添っていたのが嘘のようだ。


 これならいい写真が撮れそうだ。

 ユキノも早く来ればいいのに。


 振り返ってテントを見るけれど入り口が閉まってるから中の様子は見えない。


 もっとも、ユキノが起きるのが遅いのはいつもの事なんだけど。


 ユキノと付き合って4年、一緒に住むようになって3年。


 寝起きの悪さを知っている身としては、下手に起こそうとしない方がお互いに被害が少なくなる事はわかっている。


 とはいえ、一面の雪景色に独りポツンと立っていると少し寂しい。


 周囲を見渡す。足跡一つない雪景色。

 空を見上げる。目が痛くなる程の満天の星空。


 人気の無い雪山の頂でしか味わえない景色。

 感動と共に強い孤独を感じる。


 寂しい……


 何気なくテントを振り返り様子を伺う。

 ユキノはまだ起きてこない。


 顔を戻すと目の前に少女がいた。


 ビックリして思わずよろけてしまう。


 マズい!そう思い体勢を立て直そうとするけれど、そのまま後ろに転んでしまう。


 受け身を取れずに後頭部を叩き付けるように倒れ込んだけど、痛みは無い。


 深く降り積もった雪がクッションになったみたいだ。


 クスクスと笑う声が聴こえる。

 少女が楽しそうに笑っている。


『こんにちは。……あれ?……こんばんは、だね』

 少女が話しかけてくる。


「こんばんは」僕は返す。


 挨拶を返した事が嬉しかったのか、少女は満面の笑みを浮かべ僕に尋ねてくる。

『ここで何してるの?』


 チラッとテントを振り返る。まだユキノは起きてこないようだ。孤独も紛れるし、起きてくるまでこの娘に付き合おうか。そう思い、少女に答える。 

「仕事で星空の写真を撮りに来たんだ」


 そこからは少女が立て続けに質問してくる。

『カメラマンって普段どんな仕事してるの?』

『あのテントの中にいるの彼女?』

『好きな食べ物は?』

『好みのタイプは?』


 まさしく雑談、というようなやり取りをしながら、ふと疑問に思う。


 深夜とはいえないけれど、夜も遅くにこの少女は何をしに此処に来たのだろう?


 そう思うと同時に、色々と不審な点が浮かんでくる。


 なんでこの少女は半袖のワンピースを着ているんだろう?


 いつの間にこの少女は目の前に来たんだろう?


 ……なんで周囲には足跡一つ無いんだろう?


 そこに思い至ると同時に少女を見ると、少女は少し哀しそうな顔をしながら

『気が付いたんだね。じゃあ、私は先にいくね?』


 と独り言のように呟く。


 それと同時にその姿が消えていく。


 何も痕跡を遺さず消えた名も知らぬ少女。

 それを見送る僕。


 少女は僕を連れて行こうとしていたのだろうか。



 星空を見上げる。満天の星空が僕を照らしている。

 周りを見渡す。足跡一つ無い雪原が星々の光を反射している。

 振り返りテントを見る。ユキノはまだこない。


 僕は座り込み呟く。


「独りは寂しいよ」






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