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バックヤードツアーへレッツゴー!!〈中編〉

みんな!こんにちは!!マノンです!!

今回は、ある日を境に消えてしまった私の友達、つばさの居場所が分かったの!やっと会えるかもしれないんだ。絶対にこの機会は逃さない。必ずつばさをこの手で助ける!

ってまぁ、色々あったけど・・・あの作戦も成功したっぽいしね。おっと、ここからはネタバレね。じゃあ、みんな!今回は新キャラ盛りだくさんだから、是非私達の冒険をのぞいてね!

「え!?なんでルルさんを連れて来るって嘘をついたんですか!?それに姫って・・・。」私は、まだ怖い笑顔で鋭く逃さまいというように私を見つめている美月さんにそう叫ぶ。すると美月さんは、不思議そうに首を傾げた。「あら?あなた達、姫とは面識があるはずですよ?」美月さんがそう声を発した時、黒いベールが、書庫の一番奥のステンドグラスで飾られた角ばった所に突如現れた。「ムーン。マノンさん達と会ったのはずいぶんと前の事ですもの。覚えていないのは当然の事だわ。」「ですが、姫がわざわざ城を出現させてまで会われたというのに・・・。」美月さんはこちらをにらみながらそう黒いベールに話す。その時、私の頭の中に月の国で会ったベール様のことが浮かんできた。(あ!!!そうだったわ!!そういえば、遠足の行き道で竜巻に吸い込まれた時に黒いベールで登場してたもの!っていうことは、この声ベール様!!)私は、美月さんとベール様が話している間に、ラインの所に駆け寄る。「ライン!」私は小さい声でそう呼ぶと、この声はベール様だと話した。ラインは一瞬覚えていないような顔をした後、目を見開いて私を見た。どうやら思い出したらしい。そして「確かに。マノンのいうとおりかもな。そう考えると、あの美月さんはベール様の側近かなんかで、魔法界の人の可能性が高いな。」さすがラインだ。冷静に物事を考えて推測まで出来ている。私は心の中で拍手をしながらコクコクと頷いた。「ラインの考えてるとおりだと思うわ。ベール様が美月さんの事をムーンと呼んでいる所からも、魔法界での名前と人間界で使う名前を変えてるんだろうね。でも、なんでわざわざそんな事をするのかしら?」私がそう言って首を傾げた時だった。「まぁ。それはもちろん、時が来たからに決まっているでしょう?」美月さん・・・いや、ムーンとの話が終わったのか、黒いベールからベール様の声が降って来た。私は「時・・・ですか?」と問いかける。「あら。覚えていないかしら?マノンさん。あなたとそちらのラインさんなどと月の国でお話したでしょう?時が来れば、なぜわたくしがマノンさんとつーくんという方との昔の別れを知っているのか教えます、と。あの時はまだ春の終わりごろでしたからお忘れになりました?」私は頭の中の記憶を必死に探ってベール様の時が来れば、という話を見つけようとするが、バックヤードツアーに浮かれた記憶が邪魔をしてすぐには見つからない。だが、そんな私とは違って、ラインは見つかったようだ。ハッと顔を上げて、私の方を見た。「ほら、なんかつばさと一緒にいた女の子がマノンだってわかった理由とかを話した後に言ってた。」「あ!!!」私はラインの言っている言葉から記憶を探ってそう叫ぶと、黒いベールの方を見た。いつのまにかムーンは緑色の星に囲まれて消え、ベール様は月のオブジェに座って、姿を現していた。「あら。思い出したならよかったわ。全く話が進まず、つーくんという方を救い出せないもの。」ベール様はニコリと微笑んだが、反対に私は眉をひそめた。(どういう事?救い出すって?)私の知らないところでつばさが大変な事になっているように感じた。私は心を落ち着かせようと深呼吸をした後、「救い出すってどういう事ですか?時が来たのなら私とつばさの事をなんで知っているのか教えてくれますよね?それに、なぜムーンという人を司書としてバックヤードツアーに参加させたんですか?」一気に問いかけると、ベール様は困ったような笑顔で、「そのように立て続けに聞かれては答えれないわ。・・・ですが、時が来れば教えると約束いたしましたもの。しっかり説明いたします。まず、月の鏡とはご存じかしら?」「え?え〜と、あの竜巻を起こした月形の水晶の事ですか?」「それはまた違うわ」


そこから、ベール様による月の鏡についての説明が始まった。どうやらこれからのつばさの話と関係が深いらしく、私もラインも真剣に聞く。

まず、月形の水晶は、月の国の礎で月の国の魔力がなくなった場合に備えて城に使える魔女・魔法使いが貯めるもので、それと同時に生まれた時にこの水晶に一定の量の魔力を注ぎ、もし不測の事態が起こり、魔力が無くなりかけたりした場合、その魔力を吸収して魔力を増やす保険のようなものらしい。だが、月の鏡はまた違って、鏡の国から献上された鏡で、虹の国から任された仕事をこなしたりするために月の国をおさめる王が自分の杖や代々受け継がれている月の杖などどちらかを鏡の中に溶け込ませて使うらしい。そしてその鏡は、人間界にある[虹の岩]にもつながっていて、月の国の後継ぎのベール様が月の鏡から危険なことが魔法関係で起こっていないか見ているそうだ。「・・・そして、この書庫はその月の鏡の中なのです。」「へ?」思わず変な声が出てしまった。(だって、どう考えたって、鏡の中なんておかしいわよ!!も、もしかして、私達小さくなったとか?いやいやそんな事って・・・)私は自分の考えを否定するように頭を横にふっていると、ベール様は「おおまかな説明でしたからわからなかったかしら?」「・・・はい。」私がそう控えめに挙手をして言うと、ベール様は苦笑しながら詳しく説明してくれた。私も隣にいるラインも頭をフル回転させて聞く。(そうじゃないと全然理解できないもの。)「まず、月の鏡に溶けこませて使う月の杖には不思議な力があるのです。この力は虹の国の王族が使う力でもあるのですけれど、[過去、未来、現在、世界が出来る前、幻想]という6大魔法です。月の国や、もちろんほかの虹の国の親族達が魔力で受け継いでいます。そしてその力を月の国の初代王が見える形にしたものが月の杖なのです。」「ということは・・・月の鏡は月の杖を溶け込ませて虹の国に任された仕事だけをこなすものって事ですか?」私が自分の考えを口にすると、ベール様は目を見開いた後、「えぇ、その通りです。そしてはじめに話したけれど、ここは月の鏡の中で、本は6大魔法の力が見てきた知識を本の形に変えたものなのです。ちなみに[幻想]の力を使ったの。」そこまで聞いて私は「ん?」と眉を寄せた。もしかして前、月の国に行った時につばさの偽物を作るときもこの力を使ったのではないだろうか。私がガッと顔を上げてベール様をにらむと、彼女は不敵な笑みを浮かべた。(うわ!!絶対使ったわね!!)私はハァとため息をついた。すると、ふとさっきここで読んだ記事が頭をよぎった。(ってことは、あの記事に載ってた"男の子"って、間違いなくつばさってことよね。でも、そうなったら・・・)私はハッと顔を上げて、ベール様を見つめた。「あ、あの。私、ベール様が来る前、ある記事を読んだんです。そこに、[月の鏡で月の国の姫が人間界の虹の岩を割って、吸い込まれた男の子を見て、助けに行って虹の城に保管してる]って書いてた記事を読んだんですけど・・・あの、それってつばさ・・・ですか?」私は小刻みに震える手を胸の前で押さえながらそう問う。「そうです。貴方の考えている通りですわ。」ベール様は優雅に微笑みながら頷いた。私は震えが止まった手を下におろした。(私の考えている通り・・・か。)

私の中に、複雑な感情が湧き上がってくる。


つばさと早く会いたいと先走る気持ちもあって、本当だという事が嬉しくて、でも今まで会えなかったのが悲しくて、今まで知らなかったのが悔しくて・・・。だが、最終的に勝るのは嬉しいという感情だ。(よかった。つばさは生きてるんだ。また会えるかもしれないんだ。)私は飛び上がりたい衝動にかられながらも笑顔全開で「あの!それで、つばさは元気ですか?あの頃から5年くらいたってるから、大きくなってるでしょうか?私も会いたいんですが、無理ですか?」一気に言い終わると、ベール様は「・・・わたくしにもわからないのです。」「え?それは一体?」ベール様はうつむいてしまった。

(え?そんなに警備とか厳重なの?)「あの、マノンさん。」「はい。」ベール様はうつむいていた顔をあげた。真剣な目だった。それを見て、私も真剣にベール様を見つめた。ラインもだ。そして、ベール様の言葉を静かに待った。

「・・・つーくんという方は、今、虹の城に虹の岩の破片に吸い込まれたまま保管されているとお話しましたでしょう?」私はコクリと頷いた。

「実は、虹の岩は人間界と魔法界の事情によって、魔力を大量に含んでいるのです。なので、あのかけらの中に入ったままのつーくんという方は、5年間も魔力が満ち溢れた中にいることになるのです。魔法を使う世界と言っても微力の魔力しか漂っていない魔法界や、全くと言っていいほど魔力のない人間界の環境に慣れることが出来るか分かりません。」ベール様は一つ息を吐いた。そして、こちらに強い視線を向けてきた。

「それでも助けたいなら、ご協力します。少なくとも、もう一度会うことが出来ますし、奇跡が起これば、もう一度暮らせるかもしれません。保証はありませんが。」「・・・助けたいです。」何も考えずに、気づいた時にはそう答えていた。一緒に暮らせないかもしれない。環境に慣れることができないかもしれない。でも、助けないまま、会えないまま、また時間が過ぎていくのは絶対やだ。(きっと、つばさも私が来るのをまっているはず。)


「僕、もしマノちゃんが危ないめにあったら、絶対助けるよ。なんにもしないで終わって、また遊べなくなるのは嫌なんだ。」


まだつばさが虹の岩に吸い込まれる前、つばさが言ってくれた言葉がふいに脳裏に蘇った。

その言葉の通り、いつもつばさは私を守ってくれた。(今度は私が守る番。)私は力強くベール様を見上げた。ベール様は柔らかい眼差しになって、「分かりました。では、共に参りましょう。虹の国の、虹の城へ。」ベール様はニコリと微笑むと、両手を前に伸ばして目をつぶった。

すると、紫色と金色の光がベール様を包み込み、ベール様の手には1本の杖が現れた。

「それって・・・?」「わたくしの杖、『レースの杖』。今からお二人を月の国にお連れします。いきなり虹の国に行って、見つかりでもしたらおおごとですもの。」上品に微笑んだベール様は、レースの杖を高く突き上げて、「レースクロース!!」と唱えた。

すると、今日最初にベール様が現れた時のような黒いベールが私達の頭上にどんどん広がっていった。「うわ!なんだ!?」ラインがそう叫んだ声も、だんだんと遠のいていった。


そして月の国・・・

「マノンさん、ラインさん。着きましたよ。目を開けてください。」ベール様の声が聞こえてきた。

私は硬く閉じていた瞼をゆっくりと開いた。そこには、レースの杖を手にしたベール様と、心配そうに私の顔を覗き込んでいるラインがいた。

辺りをみわたすとそこは前にひだまり達と来た月の国の風景が広がっていた。相変わらず地面にはゴロッゴロの石が転がっていた。

(うわぁ。相変わらず転びそうな石だなぁ。)ぼーっと考えていると、ベール様が「では、今から虹の国に参りましょう。今、虹の城の様子を見に行ってもらっています。少々お待ちを。」そう言ったベール様の元に月の首飾りがついた青色の鳩が飛んできた。

ベール様は腕にその鳩を降り立たせると、首飾りについた小さな筒の中から手紙を取り出し、目を落とした。(うわ!!うそ!?伝書鳩じゃない?あれ!!えぇ!!すごい!飛ばしたい!あの鳩!!)

ちなみに伝書鳩とは、鳩を飼い慣らして、鳩の磁覚を使った帰巣本能を利用した遠くの場所から鳩に手紙を持たせて届けさせる通信手段の一種だ。

(本でしか読んだことなかったものが目の前に!というか、地上から宇宙っぽい月の国に飛ばせるなんて魔法界ってすごいわね。)「状況は大丈夫なようです。ですが、安心はできません。一度、様子見の者の所に行ってから、ほうきで城の中に向かいます。参りましょう。」いつの間にか読み終わったベール様はまた先程と同じようにレースの杖を掲げ

「レースクロース!」と唱えた。


そして・・・虹の国

一度見た魔法だったから慣れたのか、今回はすぐ目を開けることができた。

「うわぁ!すごい・・・!」私は感嘆のため息をついた。

周りには赤やピンク、青などの薔薇や、オレンジや黄色の小花が満開に咲きほこり、太陽に照らされて星のようにキラキラと光り輝いていた。地面には芝生が広がっていて、向こうにはメルヘンチックな街灯とベンチがあり、ここだけ時間の流れが違うように感じた。中央の方には噴水から飛沫をあげて水が流れている。「ライン!すごいわよ!これこそ本の中に出てくる魔法界よ!」「いや、綺麗だけど、魔法界=これってわけではないと思うけど・・・」「え?そう?私はこれだとおもうけど。」そこまでは幸せだった。

『ファサッ』

薔薇の茂みから何かが動くような音がした。(も、も、も、もしかして・・・ゆ、幽霊・・・?敵?だったりして・・・?)そう考えてしまった私がバカだった。「ひぃぃぃ!ぎゃーーーー〜!!!」「マノン!?」私はそのまま勢いあまって思いっきりラインに飛びついて後ろに隠れた。「きゃーーー!こっち来ないで!幽霊!!何もしませんから〜!」半べそをかきながらそう叫んだが、ラインという安心感を得てだんだん気持ちが落ち着いてきた。

「あのぅ。マノンさん、ラインさん・・・。お取り込み中悪いのですけれど・・・。説明してもよろしいかしら?」「はい、いいですよ・・・ってお取り込み中?・・・」私はラインを見上げた。

「キャ〜〜〜〜〜!!そういう訳じゃないです!その、違うのよ!そこに昼間から出てくる幽霊がいて・・・それで!」「うふふ。まぁ、そういう事にしておきましょう。・・・それより、ここは魔法界随一の庭園。虹の庭園ですわ。つまり、虹の城の城内です。静かにしましょう。」「はい・・・。」私はラインの方を振り返った。「急に飛びついてごめん。」「え?あ、いや別に・・・」なぜか分からないが、ラインの顔が耳まで真っ赤になった。その様子に首を傾げていると、

「お二人に紹介したい人がいるのですけど・・」とベールが話しかけて来た。振り返るとそこには少し癖のあるピンク色の髪を肩まで伸ばし、左側に花と白いリボンをつけている可愛らしい女の子が立っていた。「はじめましてです!!タッチミーです!」可愛らしくお辞儀をした女の子はにっこりと笑った。「初めまして」私はそうすまして言いながら、心の中で叫んだ。(可愛いすぎ!!何、この子〜!妖精?天使〜!?)心の中でキャーキャー騒いでいると、ラインが「何、にやけてんだ?」そう普通に話しかけられて、さっきの事を気にしていない感じで安心しながら同時に恥ずかしさで顔が赤くなっていくのを感じた。「これは別に意味はないわよ!そ、それより!!ベール様!この子は・・・?」「この子はわたくしの側近なのです。ここの様子を見に行ってくれたのもこの子なのです。」「な、なるほど。側近なんですね。なるほど。」(あのベール様の側近には見えない。ムーンなら分かるけど。)「それより、そろそろ虹の城に参りましょう。」「はい。そうですね。・・・早く助けに行かなくちゃ。つばさを。」そうだ。私はつばさを助けなくちゃいけない。早く行かないと。だって、今までつばさはずっと待っていてくれたはずだから。

「そういえば、ほうきで城に行くと言っていましたが、正面からは行けないですよね?何か裏道でもあるんですか?」ラインの問いに、「実は、城には裏口があるのです。」「裏口なんてあるんですか?というかあっていいんですか?王様が住んでいる城なのに。」「当然あってはいけませんし、そもそもありませんわよ。」『はい?』なんか話が色々くいちがってない?私とラインの声が重なった。「まぁ、心配しないでください。大丈夫ですから。」『全然安心できません!!』私達の声は完全無視されて、ベール様は軽く手を振ってほうきを出すと「乗ってください。」と言って微笑んだ。私達はしぶしぶ乗って空に飛び立った。後ろからタッチミーさんもついてくる。

「どこに降りるんですか?」「屋上です。監視の目が少ないのですよ。まぁ、色々な仕掛けがあるのですけれど。」「仕掛け!?何!?大丈夫なんですか!?」「大丈夫ですわ。全てタッチミーが防いでくれますから。あぁ、でもしっかりつかまっていて下さね。・・・タッチミー。仕掛けを解いて下さい。王に知られないようにちゃんと最後は元通りにしておいて下さい。触れたのも分からないようにしておいて下さいね。」「了解です!」「え!?タッチミーさんが解除するんですか!!」「タッチミーでいいですよ。」タッチミーは可愛く笑うと、ほうきの速度を上げて私達が乗っているベール様のほうきを追い越した。そして、右手をまっすぐに突き出し、「繊月」そう唱えると、タッチミーの体が光を帯び、突き出した右手から細い光がシュンッと音を立てて城の中に入って行った。すると、屋上の上空部分に虹色と透明が混じったような半円形のまくが現れ、シャボン玉が弾けるように消えた。

「ありがとう。それでは参りましょう。」「・・・はい。」(なんで出来るの!?)あっけに取られていると、加速したほうきはそのまま屋上に突進して行った。

私達が入ってきた後にタッチミーは軽く右手を振って、虹色と透明のまくを戻した。

「タッチミーはすごいですね。」「うふふ。でしょう?元々あの子は覚えが良くて、ムーンが熱血指導をしましたら難しい魔法もなんなく出来るようになったのです。」ベール様は自慢げに微笑むと、ほうきから降りて後ろにある真っ白い城壁に向かっていった。

(何をするんだろう?)ラインと顔を見合わせていると、ベール様はレースの杖を出して城壁に杖の先を向けると、丸く円をえがいて、「クレーター!!」と唱えた。すると、描いた円が緑色に光り輝いて、端の方から段々穴が開いていった。

「え!?も、もしかして裏口って・・・?」「うふふ。そうですよ。これが裏口。皆さん元々ある扉が裏口と思ってはいけませんわよ。・・・では、タッチミー。見張りを頼みます。」「了解です。・・・皆さんお気をつけてです。」

私達を心配そうに見つめるタッチミーに手を振って、私達は城に足を踏み入れた。


そして虹の城の中・・・

中は白いレンガのらせん階段で、永遠に続きそうなほど長く、少し下を見れば虹色に輝くカーペットが敷かれていた。(これ、バレたら終わりじゃない?)「それでは、虹の部屋に行きましょう。」ベール様は上を指差しながら声をひそめて言った。ちなみに虹の部屋とはベール様によると虹の国の魔法使い達の魔力と虹の国の保険の魔力、そして魔法界の魔法使い達全員の魔力が登録されている、つまり虹の国の礎がある部屋らしい。「つまり、月型の水晶がある部屋と同じという事ですわ。」「なるほど」そんな会話をしているうちに、レンガ四つ分ほど空いている窓から見えていた庭園はいよいよ見えなくなってきた。そして私は何を隠そう高所恐怖症なのである。「う・・・!た、高すぎるわよ〜!何で自分の国の礎、こんな高いところに作るのよ!!」耐えかねた私は大声で叫んだ。

「静かに!マノンさん!誰か来ます。」迅速な動きで壁に背中をピタリとつけ、口に人差し指を当てたベール様の言葉にラインと私は息をのんで、すぐに壁と同化するくらいに体をピタリとくっついた。耳をすませると、男の人の声が複数、そして女の子の声が聞こえてきた。

「お兄様。わたくしもお茶会に入れてください!いつもお一人なんだし、わたくしが入った方がきっと楽しいですよ!」「だめだよ、イリデ。これは仕事のいっかんでもあるんだ。側近との情報交換を怠ればより良い国務は出来ないんだよ。また今度にしよう・・・。セラリック、ウンベラータ、今日の報告資料はできているかな?」「はい。ピラミダル様。」「完璧に仕上げております。」「うむ。では虹の岩に今回の容疑に加担した者の魔力確認をした後に庭園へ参ろうか。」「はい。」冷静に男の人達が話しているのと裏腹に、男の人の内一人の爆弾発言に私たちは大パニックだ。「どうするんですか!!ベール様!」あの冷静なラインも今日は耐えきれずにベール様に詰め寄っている。「・・・虹の部屋で目的地が同じならわたくし達はどこかに隠れてあちらに先に用件を終わらせてもらえば良いのですが・・・。犯罪者特定の魔力確認は時間がかかるので、救出は明日になってしまうかも・・・。」「それは困ります!」素早く答えた私にベール様はいっときして「そうですよね。」と微笑み、「では、わたくしは正体を知られているので、バレてはややこしくなります。先に行っているので、ここで引き留めて怪我とかさせて、来ないようにしておいてください。」『はーーー!!??』私とラインの声が重なった。「おい!!それって、僕たちを囮にするってことですよね!?」「あら。人聞きの悪いこと。あ、ちなみにあの方は虹の国王子ピラミダル・ハロ・アルカバーノ。お隣の王女はイリデセント・クラウヅ・アルカバーノですわ。では、上で待っているので。」「ちょっと!!」ベール様は優美な微笑みを浮かべてこれまた迅速で、そして優雅な動きで階段を登って行ってしまった。

「ど、どうしよう。ライン。」「ぼ、僕に聞かれてもさ。・・・とりあえず、相手が僕たちに気づいているか確かめよう。今の会話が聞かれてなかったら素知らぬふりでかわせるかも。」さすがラインだ。「ラインがいて本当に良かったわ。一人じゃ今頃大変な事になってた。ありがとう。」「・・・え?い、いやそんな・・・それより!早く確認を!」何故か真っ赤になったラインの顔を見て首を傾げながら、私はつばさがいる上を見上げた。(つばさ・・・いえ、つーくん。いよいよ私たち、再会できる。後、もうちょっとで。だからこの機会、絶対逃さないわ。もうちょっとだけ待っていて。ラインとここを乗り越えて、助けにいくから。)

決意を新たにした私が拳をにぎっていると、「マノン。僕たち、気づかれてなさそうだよ。」声をひそめてラインが言った。

「良かったぁ。・・・じゃあ、もう一か八か、勝負に出ましょう。」「は?勝負って、どうするんだ?」「そのまま、何にもせずに下に降りるのよ。それで、虹の部屋にいる友達を助けにきましたっていうの。」「そんなのしたら、捕まるぞ!それで相手にどっから入ってきたんですか?って聞かれたらどうするんだ?」「まぁ、そこは後からにしましょう。それに、相手だって早く助けてもらった方が楽って思ってるわよ。」ここで悩んでいても仕方がない。まずは行動だ。(早く助けなくちゃ)早る気持ちが私を追いたて、ラインの腕をむんずと掴んだ私はそのまま下に降りて行った。「マノン!」ラインの声を聞きながら降りていくと、話を止めて、この国の王子と王女がこちらを目を丸くして見つめてきた。

一瞬遅れて王子と王女、私とラインの間に側近と思われる人達が剣を構えて怖い目で声で「誰だ!?お前たちは!?侵入者か!?」

ラインが私の前に出ようとしたのを右手で止めて、私は一歩前に出た。そして深呼吸をすると「初めまして。私はマノンと言います。今日は虹の部屋にいる私の友達を助けにきました。私がその男の子が虹の岩に吸い込まれた日に一緒にいた女の子です。」私の発言に側近達がざわざわとし始めた。「ピラミダル様。この者をどうしましょう?ピラミダル様?」王子はぽーっと私の方を見つめて動かなかったがハッとして、「茶会で話しましょう」と言った。「茶会!?ピラミダル様!呼ぶのですか?この者達は侵入者ですよ!?」「ウンベラータ。失礼な事をいっていると分かっているのかい?」王子の発言に全員があっけに取られた。

「・・・上手く・・行ったのかな?」「・・・多分。」それは私達の作戦が成功した事を示すのである。

みなさ〜ん!!こんにちは♪お久しぶりの月夜です!!!投稿、遅れてすみませんでした・・・。

今回のお話では、新キャラがたくさん!!

ベール様の側近の可愛いタッチミー、虹の国の王子ピラミダル・ハロ・アルカバーノ、王女イリデセント・クラウヅ・アルカバーノ、王子の側近セラリックとウンベラータ。いよいよ重要人物の皆さんが登場です!

そして、マノンちゃんの友達つばさくんを助けに行くお話でした。このお話はマノンちゃんが、過去から一歩を踏み出す大切なお話です。なので、前編、中編、後編に分けてじっくりと書く事にしました。そしてこのバックヤードツアーに来るまででもマノンちゃんの心情は少しずつですが変化しているな、と感じます。でも変わらない思いは「いくら離れていて、ずーっと会えていなくても、友達というのは変わらなくて、ずっと大好き」だということだと思う。いくら話してなくて、会えていなくても、一緒に過ごしていたというのに嘘はない。一緒に過ごした思い出は消えない。読者のみんなの中には今月、卒業式があってもう会えなくなる友達もいるかもしれない。もしかしたらお引越しをして会えないかもしれない。でもだからってきっとみんな楽しかった思い出は消えないと思います。大事なのはそれぞれが向かう道を一人一人がんばる事だと思うんだ。だから、みんなで頑張ろう!私もマノンちゃん達のドキドキワクワクの大冒険をみんなと一緒に見ようと思います!

それでは!次回のひだまりでお会いしましょう!バイバーイ!☆★♪

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