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自転車に乗るのは初めてですか?

 水泳連盟主催の大会が近づいていた。

 大会まで残り二日と迫っている。参加資格があるのは市内在学の水泳部のみ。合計で八校。

 二日前から準備が始まり、内容は会場設営と現地練習が主となる。

 つまり、今日から二日間は会場練習になるということだ。


 俺は出発前、顧問から職員室に呼び出されていた。

 内容は、「今後水泳部を続けるなら、部長になることを考えてほしい」というもので、あっという間に話は終わった。

 去り際に副部長は部長が決めることになるから、とサラっと言われたが、今考えてもよくわからないから、とりあえず軽い返事をして退室した。


 五分程度しか経っていないな。けど、遅れるわけにはいかない。

 このまま急ぎ足で自転車置き場に向かった。


 会場に着くには十分ぐらいか。

 さっきの話、先輩達からの推薦らしいから、そこら辺は大丈夫だな。

 他は、まあ適当にはぐらかすか、お叱りを甘んじて受けるしかないな。

 いっそげええー。


 自転車置き場から自転車を出し、会場へ向かおうとした時、美雪が立ち尽くしているのを見つけた。


「あれ。美雪どうしたの?」

「あっ、直輝、私どうしたら……」

「ん? 何かあった?」

「私としたことが、今日が会場練習だと忘れていて、爺やに送迎をお願いするのを忘れてしまいまして……今から連絡しても、到着に数十分は要してしまい、歩いて行こうにも経路がわからなく、頭を抱えていましたの……」

「じゃあ、後ろ、乗ってく?」

「えっ……いいんですの?」


 美雪は両足を左側に揃え、お淑やかな座り方で荷台に腰掛けた。

 俺も自転車に跨り、ペダルを踏み込んだ。

 だが、ほんの少し進んだだけで、美雪が「きゃぁっ」と言い出し、一度停止。


「怖い? 大丈夫?」

「ええ、少し驚いてしまいましたわ」

「じゃあ、俺の服を掴んでみたらいけるかな?」

「やってみますわ」


 そして、再び漕ぎ出した。

 美雪は言葉には出さなかったが、口を閉じて悲鳴擬きを上げている。

 スピードが出てくると、より一層引っ張られているのがわかった。


「こんな感じで行くからー!」


 美雪からの返答はなかったが、気にせず進むことにした。

 道中、転ばないように必死で段差に気づかず、スピードを落とさず通過。当然ながらゴンッという衝撃に美雪は「ひぃ」と声を上げ驚いていた。

 その悲鳴の後、美雪は俺の体に抱き着き始めた。

 それには俺も驚き、つい足を止めてしまった。


「ごめん、大丈夫?」

「はい大丈夫です。ですので、このまま行きましょう」

「え、でもこの状況は――」

「さあ行きますわよ」


 時間にも余裕はなく、美雪からの圧に反論できず再び足を動かした。

 それからの道中は、違和感しかなかった。

 怖いからだろうが、抱きしめる腕はがっちりと、押し付けられる顔は終始動いていた感じがした。




 会場に着いた俺達は自転車置き場で帰りについて話していた。


「できれば帰りも学校までお願い致しますわ」

「え、でも今から連絡す――」

「お願いしますわ」

「あ、はい……」


 来る時は良かったけど、帰りって他人の目があるよな……。

 こんなの誰かに見られたら、やばい奴ら認定されるよな。

 帰る時間をずらすしかないのか、でも学校で美雪の送迎車が……。

 はぁ、どうしたらいいのやら……。

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