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詩イ殺ス。  作者: 八田硝子
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#

【廃墟情歌】



あなたはまだ待ち続けているの?

昔ここに居たヒトを

もうこんなにボロボロなのに


屋根は崩れ

柱は折れ

壁は剥がれているというのに


まだそのヒトを待つの?


壊れた窓硝子や椅子や食器

大事そうに抱えても

もうそれは使えないんだよ


まだそのヒトを待つの?


もしそのヒトが帰ってきたら

その時はきっと




……あなたが崩される時よ


それでもそのヒトを待つの?



がたん

と音をたてて

天井板が一枚落ちた



……そう


私は尊敬するわ

あなたのその待ち続ける想いを






【信じられるもの】


「あなたは神を信じますか?」




そうだねぇ

少なくとも


「神は存在するのです」


「神はあなたを救うのです」


「だから寄付をください」


なんて言う

あなたがたよりは

よっぽど信じられると思うよ






【グッド・モーニング】



目覚まし時計が

悲鳴をあげたので

朝がやってきた



騒がしく喚く時計を

私は殺した



うるさい

お前のせいで

また一日が始まってしまったじゃないか






【天国までダッシュして】



私は天国に行きたい


だから生きているうちは

いいことをするの


それでね

天国に行ったら


「人間なんて中途半端なもん創りやがって!」


って

神様に

ドロップキックかますの


待っててね

神様





【明日の風】



明日は

 明日の

  風が吹く



それって実は


「明日は明日で苦難はくる」


ってことじゃないのか?



此処は

立っているのも

苦しいほど

いつも強風ばかり

吹き付ける場所






【偽薬】



「この薬は効くんだ」

そう思い込めば

たとえなんの効果もない薬でも

病が改善することがあるらしい



なるほど

だからか



私がいくら薬を飲んでも

一向に良くならないのは


薬を信じて

いないからだ


信仰心が

無いからだ





【花火】



どぉん


どぉん


花火


綺麗だね



この体に

ダイナマイト括り付けて

空に投げ上げたら

私の肉片は

あんな風に

綺麗に飛び散るかしら



どぉん


綺麗だね






【リビング・デッド】



横たわったまま

身動きできない


今日も世間様は

忙しく働いてらっしゃるのに


私はベッドから

動けない


体が悪い

わけじゃない


だけど体は

動かない


これは

永遠の

長期休暇


私は

生きている

死体





【雨】



傘は

ささないでいよう


雨に

撃たれて死にたい


蜂の巣にされた体が

下水に流されていく


頬を伝うのは



雨?



血?



涙?






【イニシャルG】



ゴの字がつく虫です

ヒトからは

害虫っていわれます


私だって

一生懸命生きているのに

「害」だなんて

ひどいです

いるだけで

邪魔なんです

存在すら

許されないんです


思い上がらないでください

私たちの歴史は

あなた達ヒトより

ずっと長いんですよ


ああ!

ごめんなさい!

ぶたないで!

ごめんなさい!




ああ

白い内臓が

はみだしてしまいました


でも平気です

動けます

私たちの生命力

なめないでください


這いずったら

体液で

床が濡れました


ヒトが

ぎゃあぎゃあ

騒いでいます


自分が招いた結果でしょうに

ヒトとは不可解なものです


こんなことを言いましたが

私たち本当は

ヒトに感謝してるんです


おいしい残飯

残してくれたり

一年中暖かい場所を

用意してくれたり


私たちが生きているのは

あなた達ヒトのおかげです


ありがとう

本当に

ありがとう





【うん、じゃあそうする。】



そんなに私に

言うことを聞かせたいのなら

私の言うことを

聞かないのなら


私そっくりのロボットでも作って

私の代わりに置いとけば?


私には私の


意見がある


意志がある


文句も言うし


逆らいもする


私は


人間だから



それが気に喰わないのなら

どうぞ鉄屑の寄せ集めとでも

仲良くしてくださいな

けしてあなたに逆らわない

鉄屑人形と






【無意味愛】



私は

意味の無い存在だ

否定しないで頂戴



蝶の翅の脆さに


深海魚の奇怪な造形に


勿忘草の青に


あなたへの想いに



どれだけの意味があろう






私は無意味だ


そして


無意味を愛す





【スウィート・ジョーク】



スウィート


スウィート


ブラック


ジョーク



君が死んだのは僕のせいなんて


君を殺したのは僕だなんて



なんて


甘やかな


甘やかな


冗談






本当にしたくて

しかたない






【イシ】



トパーズ

黄玉の月が昇った

ラピスラズリ

瑠璃の夜空の下

クリスタル

水晶の眼鏡の向こう側


君の目は紅く



ジェイド

翡翠の森に落ちた

ブラックパール

黒真珠の影に染まり

ムーンストーン

月長石の涙流した


君の悲しみは



きっと誰も気付かない

まだ光らない

君のイシ


きっと僕しかわからない

闇の色した

君のイシ



ルビー

紅玉の日が昇った

サファイア

青玉の青空の下

ダイアモンド

金剛石の光よりも


君の輝くイシ





【来るものは拒まぬし去るものは追わぬが】



どうせ

糞みたいな言葉しか

吐かない奴だと

そう思ってるんだろ


居なくなるなら

早くしろ

嫌々居られても

不愉快だ




行くのか

なら最後に

一つ聞きたい



居なくなるなら

なぜ来たりした

端から来なければ




期待なんか

しなかった

ずっと傍に

居てくれると






【夜行性の目】



夜の暗闇に

生きる僕たち


光り差す地に住むものには

蔑まれる運命


だけど

見ていろ


いつかその太陽が

破壊されたその時

暗黒世界で動けるのは

僕ら夜行性のもの 


暗闇に目を慣らせ

その日が来るのを

じっと待つ


憧れてやまない

すべてのものが

暗黒にそまる日






【破裂】



やりきれぬ想いは

いつだって

頭の中を暴走し

やがて膨らみ

破裂する




どなたか

飛び散った脳髄を

拾っては

いただけませんか






【病ミ人知ラズ】



闇に病んで


夢は地獄を


駆け巡る





【慰めなど】



最初からうまくできる人はいない



誰でも失敗はするものだ



わかっているさ

確かにそう






だけど僕は

自分の存在が嫌になる!






【欲しい言葉】



わかったような

優しい易しいヤサシイ言葉



心を救うとか語る

安い易いヤスイキレイゴト



そんなのはいらないんだ






この心を突き殺す

鋭い言葉が欲しい

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