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【リサイクル反対!】
Q.
生まれ変わったら何になりたい?
A.
また生きる苦しみを味わえというのか
冗談はよしてくれ
魂は使い捨てにすべきだ
【神々の手】
暗闇に
怯えるあたし
だけどもっと恐ろしいのは
上から差し伸べられる
無数の神々の手
あなたを救ってあげましょう
にこやかにその手を
差し伸べてくるけど
あたしは必死で
振り払う
その手を握れば
暗闇から救い出してくれるかもしれない
しかしその代償に
あたしは神々の思想に侵される
神の言いなりになるあたしは
もはやあたしではないだろう
暗闇は恐ろしい
でも
あたしがあたしでなくなるのは
もっと恐ろしい
【本当に理解し合えるなんて日はこない】
中国と日本が理解し合える日がくるかって?
無い無い無い無い
日本人同士だって理解し合えないんだから
同じ人間同士なんだから理解し合えるって?
無い無い無い無い
だって僕は僕自身とすら
理解し合えないんだぜ?
君は君自身を
理解できてるかい?
【己が不必要であると痛感した時人体のあらゆる活動は停止する。】
泣くのも億劫。
【成功と努力】
成功者は高らかに語る
努力をしなさい
努力すれば必ず夢は叶う
ほら、この私がそうなように
たしかに彼の成功は
努力の末に得たもの
しかし彼は知らない
彼の成功はたくさんの
「努力したが叶わなかった」者の
死体の上に立っていることを
いるのです
その足元に
踏み躙られても
何も言えないのです
努力が報われなかったなんて
悲しくて言えないのです
だから人は信じてしまう
努力すれば必ず夢は叶うと
その意見しか聞こえてこないから
叶わなかった人の沈黙には
気付かないものだから
【先にいくあなたへ 後からいきます】
大好きな人が死にました
ありがとう
死ぬ楽しみが増えました
【老いらくの「オイ!」】
政治家の若造
街の真ん中で
「明るい未来を作ります!」
やかましいわ
老い先短いワシ等には
明るい未来より
明るい今じゃ
明るい今を謳歌するため
これから彼女と
楽しい逢引き
「年金から天引きされて…」
なんて
色気の無い話はしとうない
まあせいぜいがんばって
「明るい未来」作るんじゃな
子供が減る一方なのに
そんな未来はくるのかのぅ
どうせ関係ない話じゃがな
老い先短いワシ等にはな
【腐敗臭】
あなたが笑いながら
刺したこの傷
痛まないふりでいるけど
中の方から
膿んでいく
細胞が
腐り始める
悪臭がする
腐る時はいつも
こんな臭いがする
だけど私も
笑っている
傷付けられたことにも気付かない
愚者を演じてる
さあ愚かだと
見下しなさい
気を抜いたその瞬間
私はあなたを刺し返す
内側から
ぐちゃぐちゃに
腐っていく痛み
あなたも味わえばいい
悪臭が、ひどくなる
【欲シガリマセン】
何かを欲するのをやめました
手に入らないものが多すぎるから
欲しいと願えば願うほど
手に入らないことが辛いから
手に入れるために努力しても
報われないのが悲しいから
欲しがらなくなってから
私の手のひらに
悲しみは残らなくなりました
けれど
美しいものも何一つ
残らなくなりました
【選択死】
自殺は
死を「選んだ」わけではないのです
死に「追い込まれた」結果なのです
【酷い人】
こんな苦しみばかりの世界に
まだ居ろというのですか
酷い人だ
あなたが必要だなんていうから
ここに居なくてはいけないじゃないですか
酷い人だ
本当に
酷い人だ
【帰りたい場所】
帰りたい
いつもそう想っていた
家にいても
部屋にいても
想いはやまなかった
結局
私が帰りたかったのは
産まれる前の
母の胎内
羊水という名の
母の体液に包まれ
あの頃はとても
穏やかだった
今
私は
母の血液に塗れて
とても穏やかな気持ちです
あの頃に
帰った想いです
【原初の言葉】
ヒトが初めて作った「言葉」は
なんだったのだろう
こんにちは?
愛しています?
いやきっともっと
伝えなければ命に関わる
そんな言葉から
作られたはず
ああ
ヒトが初めて作った言葉は
「助けて」
だったのではないか
原初の言葉を今も
叫び続ける私
【嗚呼美しき世界】
「あなたの目には
こんなふうに
世界が醜くみえるの?」
違うよ
世界があんまり美しいから
嫉ましくて
粗捜しして
汚い所指摘して
笑ってるんだ
醜いのは私なんだ
【フラッシュ・バック】
それは突然
理由もなく起きる
脳の回線が
勝手に繋がる
思い出したくない
あの場面
あの音声
リプレイ
リプレイ
リプレイ
リプレイ
エンドレス
やめて
誰か
脳のどこを削ったら
この回線を切れるのか
教えて
【天才イクス氏の非情なる計画】
天才イクス氏
頭ひねらせた
どうしたら人間を
滅亡させられる?
天才イクス氏
華麗なる指さばき
天才イクス氏
すばらしいコンピュータ
天才イクス氏
計算をした
計画が遂行できるまで
何年かかるか
天才イクス氏
計画は完璧
天才イクス氏
さあ滅びろ人間ども
天才イクス氏
愕然とした
コンピュータの答え
イクス氏がしなくても
まもなく勝手に人間は滅びる
天才イクス氏
気力を無くした
天才イクス氏
崖から飛び降りた
天才イクス氏
かわいそうな人
天才イクス氏
自殺しなくてもすぐに死んだのに
【呼吸】
息が
うまく
できない
地上の
呼吸法が
合わない
帰して
海に
帰して
【籠の中の鳥は】
ぴぃ ぴぃ ぴぃ
籠の鳥
籠から出せと
鳴いている
空に帰せと
泣いている
憐れな
憐れな
小鳥ちゃん
ないても無駄だよ
籠からでても
翼はとうに
折っている
【闇の向こうに 君】
くだらない授業
くだらない同級生
くだらない学生生活の中で
ただ君だけが
美しかった
ただ君だけが
眩しかった
落書きだらけのノートの片隅に
君
くだらない生活
くだらない人生
くだらない世界に飽きて
この世界を
見限った
この世界を
出ていくのを決めた
耳元で騒いでいるのは
母親……か?
うるさい
俺が最期の別れをするのは
彼女だけなんだ
薄れゆく意識の彼方に
君
最期に呟いた名前は
君