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詩イ殺ス。  作者: 八田硝子
4/28

***

【用法・用量を守って正しくご服用ください】



君は不思議だね

僕が落ち込んでいる時でも

君がいると明るくなれる

まるで僕の調子を良くしてくれる

薬みたいだね



どこ行ってたの?

僕の傍を離れないで

君がいないと

僕はダメなんだ

体が薬に慣れて

効き目が弱くなってる

もっともっと

君が欲しい



もうダメだ

欲しても

欲しても

君が足りない

縛り付けて

閉じ込めて

僕の中に取り込んでいるのに

足りない

足りない

足りないんだよ!

もっと君を

もっと君を

もっと君を



薬は

処方通りに飲まないと

命に関わることがある


OVER DOSE


GAME OVER







【上手な部屋の片付け方】



お部屋が片付けられないとお嘆きのあなた

ちょっとしたコツでお部屋は綺麗になるのです

そう、それはとても簡単なこと


「いらないものから捨てていく」


この心がけが大事なのです



そんな

私を一番最初に捨てたら

後は誰が片付けるんです?






【なりたいなぁ なれるかなぁ】



ヒトは死んだら

何になる?


お星さま


天使




幽霊


千の風


死体




死んだら何にもならないと言うが


死んだら何かにはなるもんだ








【一匹狼】



オレは一匹狼なんだ


群れて生きるなんてごめんだね


一人きりで生きるんだ


他人に頼ったりしないぜ



狼は本来

群れで生きるもの

もし一匹でいる狼がいたら

そいつは群れを追い出された

負け犬ならぬ負け狼

その末路は

他の狼たちに殺されるか

餌が獲れなくて飢え死にだって


二つ名は

「一匹狼」

まったく君には

似合っているよね







【サッちゃん】



自分の名前が嫌いだった


サチコ


高確率で「サッちゃん」と呼ばれた


高確率で童謡「サッちゃん」を歌われた


私はあの歌が大嫌いだ


「ぼくのことわすれてしまうだろ」って


薄情者って言われてる気がする



私は



私はみんなのこと

忘れてないのに


みんなが私を

忘れていくんだ


みんなが薄情者なんだ


もう私を

サッちゃんて呼ぶ人はいない



サッちゃんはね

忘れてないんだ

ほんとはね

だけどみんなが

私を忘れてしまうんだよ


悲しいな

サッちゃん







【バッドコミュニケーション】



文句がある時だけ


話すのをやめて





そうしたら


もう二度と


口をきかなくなるのか







【狂った世界】



親が子を殺し


子が親を殺し


先生は生徒に淫行


政治家はひっそり金儲け


あの国はまったく反省なし



おかしいね


世界は


狂ってる


変な事


ばっかりだ



うん


だからだよ


この僕が


君なんか


好きになったの


おかしいよね


世界は


狂ってるよね







【マエムキ】



多くの人は

「人は前向きでなくてはいけない」と

前だけを見ようとして

生きている


ねぇ

「前向き」なんて

辛い信仰は

およしなさい


後ろを向いた者にしか

見えぬ景色もあるのだ


後ろを向いた者にしか

見つけられぬ物もあるのだ


同じく後ろを向いていた人が

笑いかけてくれた


後ろを向いた者にしか

できない絆もあるのだ


「前向き」信者に

理解できないだろうが

君たちに

否定される気もないのだ







【がんばれ】



「がんばりなさい」



それが


「死になさい」


に聞こえるとは


思いもしないのだろうな







【呪い】



あなた私に

不快なことを

しましたね


呪いますよ

絶対効くまで

呪いますよ


死ねなんて

いいません


ハゲろ!

ハゲろ!

ハゲろ!

ハゲろ!

ハゲろ!

ハゲろ!

ハゲろ!

ちょっとかっこいい感じでなく

みっともなくハゲろ!

無駄な努力して

バーコードみたいな

変な頭になれ!


私怒らすと

怖いですよ

呪いますよ


ちなみに女なら

「太れ!」です







【w】



笑うなよ


私に向けられる笑顔は

喜びの笑みじゃない

「おもしろい」という

賛辞の笑みじゃない


侮蔑や

偏見をこめた

嘲り


「w」


笑うなよ


おまえに人を笑える程の

器があると思うのか

そんな考えこそ

笑えるね


w







【安易な約束ならいらない】



ずっと離さないよって


いったじゃない


どうして一人で


いこうとするの



約束は

守られなければいけない



あなたの手首を

切り離して

この手にしっかり

握りしめた


日を追うごとに

ぐずぐずと

握った手は

崩れていくけど     


約束は

守られなければいけないのよ







【流浪の旅人砂漠を行く】



熱い砂に

ぬかる足

必死で動かすけれど

進んでいるのか

足踏みをしているのか

見えるのは

地平線ばかり


戻った方が

いいものかと

振り返れば

やっぱり地平線


僕は何をしているのだろう

こんな何もない場所で

一人きり

藻掻いてる


なんだか馬鹿らしくなってきた

全部

全部

止めちまおうぜ


荷物投げ出して

座り込んで

ちょっと水飲んで

一息ついて



見上げたら

空が綺麗なのに

気付いたりして







【生きる価値を】



「生きる価値のない生き物」

は、いないらしい


ということは

私は世界初の

「生きる価値の無い生き物」

ということになる


皆、崇めたまえ







【どうぶつってかわいそう】



何も悪いことなんて

していないのに

日々命の危機

ぼんやりしてたら

あっという間に

肉食動物の餌食


草食動物ってかわいそう



テレビに映る

狩りの画像

「キャー!逃げて逃げて!」

応援されるのは

草食動物ばかり

肉食動物だって

生きるために必死なのに

今日その狩りが失敗したら

餓死してしまうかもしれないのに


肉食動物ってかわいそう



テレビを眺めながら

「野性の世界は厳しいね」

なんて

のんきに語ってる

今もどこかで

人間同士

殺しあってるのにね

明日は我が身なんて

気付きもしない


ああ人間って

本当かわいそう







【同情してほしいわけじゃない、理解してほしい】



説明しても

説明しても

理解してもらえない


言葉が通じていないんですか

私は私の知らぬ間に

異界の言葉を語っているんですか


あなたにもわかるように

説明するには


頭を割って

脳を引きずりだして


「ほら、ここがおかしいんです」


そういって指し示さなければ

いけませんか?







【人間シチュウ】



湯槽に浸かり

考える


ふむ

生きるのが面倒だ


目の端に映った

カビ取り剤の

「まぜるな危険」


ふむ

硫化水素か

しかしあれは

流行にのっているようで

気にくわん

大体発生法がわからん


練炭も

今となっては

古くさい気がする


どうせなら

目新しいのがいい


湯の温度が

少し熱いな


ふむ

「人間シチュー」という

都市伝説があるな

あれを実行したら

おもしろいのではないか


人間シチュー

にんじん


人間シチュー

たまねぎ


人間シチュー

じゃがいも


人間シチュー


いいフレーズができた

俺が死んだ暁には

誰か歌ってくれ

幼稚園で

楽しく踊りながら

歌ってくれ

子供たち


ふむ

風呂が熱い


あがるか







【震度5】



地面が揺らいだ


俺を殺す気か


腹が立ったから


地球にナイフを刺した


平気な顔してた


強がるなよ


痛いくせに







【遺書ではありません 他殺の証明書です】



私は死にます


でも自殺ではありません


学校のみんなは私が生きることを遮りました


先生に相談しました


いじめがあるなんて学校の名前に傷が付くと

無かったことにされました


親に相談しました


興味を持ってもらえませんでした


もしかしたら他にも相談する場があるのかもしれません


でもまた私の叫びを切り捨てられるのが怖い


だから死にます


自殺ではありません


みんなに殺されるのです


これは他殺です


さようなら、殺されます







【流れ星に願いを込めて】



「あ、流れ星!」


彼女は僕の隣で

真剣な顔で祈ってる


…流れ星は

本当は宇宙の塵やなんかが

燃えているだけだから

願い事なんて

叶えてくれるわけないと思うけど


もし本当に

願いが叶うなら

隣で真剣に祈ってる彼女の

願いを叶えてあげて

なんて祈ってみる


「…なんて願ったの?」


「決まってるでしょ?

『地球に落ちて人類滅亡させてください』よ」


うん、まあ

そんなところだろうとは思った


塵だってことは

言わないほうがいいな






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