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詩イ殺ス。  作者: 八田硝子
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23/28

そして、それから

「やあ。あの子の詩を本にしたんだって?」

 青年がもう一人の青年に語りかける。

「言っちゃなんだが、そんな行為に意味はあるのかい」

「……わかっています。これはただの僕の自己満足。ただあの子がいたことを、どうしても形にして残して置きたかったのです」

「まあ好きにすればいいさ……ただ君が探しているというから僕もあの子の詩を集めていたのだよ。本が出来上がってしまったなら無意味だったかな」

「いえ、まだあるのでしたら是非教えてください。僕の頭の中に入れておくので」

 片一方の青年は鞄を探ると書類の束を差し出した。

「そら。これで満足かい」

「ありがとうございます。あの……一つ尋ねてもいいですか」

「なんだい」




「あなたもあの子を愛していたのではないですか」




 問われた青年は薄く笑いを浮かべ、

「さあね」

とだけ答えた。






【奇妙な病】




雑音を越えて

耳を澄ます



君の声が聞きたいよ



この世の終わり

詩イ続ける

奇病のような



君の声が聞きたいよ



優しく殺してくれる

あの声が聞きたいよ






【晴天の願い】




ああこんなにも

気持ちよく

晴れ上がった

空の日は



あの人が死んでいるといい


あの人が死んでいるといい






【煩雑マイルーム】




荒れ果てた部屋

片付ける気力なんかなくて

目眩に悩まされながら

埋もれて見当たらない

無くした心探してる


ようやく見つけたと思ったら

それは優しくない心ばかり


優しさは

日々の雑多な感情に隠れてきっと二度と

見つからない






【反芻】




うるさい

愛してくれなくていい


苛立ちはいつまでたっても

飲み込めやしなくって


吐き出しては

咀嚼を繰り返す


反芻しても消化できない

このいらだち


でも

飲み込まなきゃ

飲み込まなきゃ

飲み込まなきゃ






【爆破娘】




はっぱだよ

葉っぱじゃないよ

発破だよ

あたし危ない

ダイナマイト






【内に秘めたる情熱の色】




青白い皮膚

切り裂けば

意外にも

私の中は

鮮やかな紅で

満たされていた


君にも見せたいな

燃え立つようなこの紅






【お料理万歳】




今日は

サイコロステーキよ

あなた


肉料理を作るときは

あなたのことを想います



切り刻む感覚を



あなたは肉料理が好きね

よかった

毎日肉料理でも

飽きないものね



肉料理を作るときは

あなたを想って作ります

心を込めて作ります

心を込めて切り刻みます






【今日時計が死にました】




目が覚めた


10時半


カーテン閉め切った部屋じゃ

朝か夜かわからない


どうせそんなことは

どうでもいい

また眠るだけ

世間と私は

関係ないもの


時計が

自分の存在価値の無さを嘆いて

自殺をはかった


私は止めなかった


私はやさしいから






【ナビゲーション、ユゥ】




カーナビの音が響く


ルートを外れました


うるさいわね

わかってるわよ


ルートを外れました


うるさい

そうよいつだってそう

あの時あの選択をしなければ


ルートを外れました


問5でアを選んでいれば


ルートを外れました


私なら平気なんて言わなければ


ルートを外れました


嘘をつき通せていたら


ルートを

うるさいっていってるでしょ!

このまま

あんたなんか無視して

あんたごと

海に飛び込んでやる


ルートをはずれました


必死ね

でも

もう

遅いわ






【美しい言葉】




痛み

悲しみ

安らぎ


すべてが

このたった一文字に

込められている



死



世界一短くて

世界一詩的な言葉



死



美しい言葉



死






【せいぎのみかた】




窮地に立たされた時

そこには


「正義の味方」


があらわれる


子供のころから

アニメやなんかで

散々吹き込まれた事


ねえ

今私は

こんなにピンチだってのに

「正義の味方」が現れないのは

やはり私が

「正義」では

ないからなんでしょうね


だっていつも

「皆死んじゃえ」

って想ってる


自業自得

誰も助けてくれやしない

「正義の味方」は

正義にしか味方しない


自業自得

仕方ない事なんだろう


「正義の味方」はとても狭量






【興味ない】




テレビに夢中になれなくなった


ゲーム機も

今はほこりをかぶってる


ネットの世界にも

嫌気がさしてきた


世界がどんどん

どうでもよくなっている


お願い

手を離して

もういいんだ

こんなところ

どうだって


こんな世界興味ないんだ




いなくならせて






【私はとてもよく驚きます】




新しいことをさせられるたび

無能な私に気づかされ

自分の不必要さに

改めて驚いてしまうのです






【穴穴穴穴】




君の体には

無数の穴が開いている

そこから汗やなんかを

流したりする


僕の体も

穴が開いている

ことあるごとに

刺し抉った穴


僕の体には穴が開いている

見えない血が

いつも吹き出している


君の体は穴だらけ

僕の体も穴だらけ






【お別れの挨拶 】




この場から

去り行くあなた

お別れに

「死ね」と一言

言いたかった






【ママがサンタに×××】





サンタクロースが

殺害された


赤い衣装を

赤黒く染めて


サンタクロースが

殺害された


七面鳥みたいに

切り裂かれた


だけどその

サンタクロースを殺したのは


ママ






【産まれてからずっと後悔している 】





あの時

死ねばよかったのに

死んでいればよかったのに


生き長らえてしまった


浅ましい

浅ましい




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