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〈ヒューズ〉
負荷が
大きすぎる
僕の頭のヒューズが
弾け飛びそうだ
負荷が
負荷が
重すぎる
助けて
誰か
弾け飛んだら
真っ暗闇に
落ちてしまう
負荷を与えないで
ヒューズが
ヒューズが
キ レ そ う だ
〈嘆〉
ああ世界
愛し
憎し
すべてを愛することもできず
すべてを憎むこともできず
ああ世界
愛し
憎し
その刃
振り下ろせ
真二つに
切り分けろ
そなたを愛する私と
そなたを憎む私と
〈君の嵐〉
訳もなく
唐突に
まきおこる
君の中の嵐
ずぶ濡れで
大変だねって
傘差し出したら
そんなのじゃ
この嵐が
防げるわけないって
怒られた
じゃあ隣で
一緒に濡れてるって言ったら
余計なお世話って
また怒られる
まあそう言わないで
わりと気に入っているんだ
君の嵐は
壮絶で美しい
うん
ごめんね
所詮
他人事だからさ
〈風葬の墓標〉
死ぬなら
草木茂る
地面の上で
息絶えた肉体は
獣や鳥や虫たちに
ついばまれ
残った部分は
腐敗し
微生物に
分解される
有機物から無機物へ
食物連鎖に巻き込まれる
地球に取り込まれる
世界になる
墓石は
いらない
骸骨が
私がいたことを
示す
〈走れ〉
走っても
走っても
この手は
あなたに
届かない
それでも
走ることを
止められない
泳ぎを止めたら
息ができない
回遊魚みたいに
この足を止めたら
きっと
この息も止まる
走るしかないんだ
走り続けるしかないんだ
〈不公平だよ〉
どうして
あの子は
あの子なの
どうして
私は
私なの
〈諸悪の根元〉
誰も悪くない
きっと
誰も悪くない
そういうことに
過剰に反応する
私が悪い
私がおかしいのが悪い
〈心配ないさ〉
明日を心配しなくていいよ
きっと
明日も
明後日も
その先ずっとも
「悪い日」しか
こないからさ
今までだって
そうだったろう?
「いい日」だと思ったら
すぐ足元は崩れる
もう決まっているんだよ
明日を心配することないよ
どうせ「悪い日」しかこない
はなから諦めてりゃ
楽なものさ
そうだろう?
〈そう思う〉
「死ねばいい」
って
思ってない
「殺されたらいい」
って
思ってる
「殺せたらいい」
って
思ってる
〈トマトのうた〉
トマト
トマト
真っ赤な
トマト
トマト
不恰好な
トマト
弾けろ
トマト
真っ赤な汁飛ばして
トマト
その首についている
トマト
ぶち割っていいか
トマト
トマト
トマト
トマト
〈御不浄〉
をんなは
不浄の
ものなのよ
アンタは汚した
つもりでも
穢れたのは
アンタの方
をんなは
不浄の
ものなんだよ
穢れた血が
まとわり着いただろ?
〈贈るコトバ〉
先生
おひさしぶりです
私が誰かなんて
どうでもいいじゃないですか
あなたの長い教師人生の中で
出会った生徒の一人です
噂を聞いたので
連絡してみました
あなた
まだ教師をしているんですね
私
あなたに教わったこと
忘れていません
理不尽な暴言
「連帯責任」の名のもとに
行われた体罰
卒業して何年たっても
忘れることができません
先生
まだ先生なんかやってるんですか
いい加減にしたらどうですか
〈黒い鳥〉
君が秘密を
持った時
足元から
黒い鳥が飛び立つ
黒い鳥はふれ回る
影で
暗い所で
その身を隠して
そして
君の秘密は
いつの間に
皆が共有する
データと化す
君が秘密を
持った時
黒い鳥が飛ぶ
君が知らぬ間に
〈伝言歌〉
あなたのいなくなった部屋で
あなたが好きだった歌
聴いています
ヘッドフォンが
壊れるほどの
シャウト
「死んでしまえ」
あたしへの伝言だって
ようやく気づきました
頭の悪い子で
ごめんなさい
〈そして僕は進化する。〉
このまま
何もせず
ベッドに横たわり続けたら
爪も
髪も
伸び続けて
昔
神話で見た
怪物になれそうな
気がするんだ
なろうと想うんだ
〈雨に嘆けば〉
雨です
濡れるのは
慣れています
運が悪いと
嘆く姿も
さまになるでしょう?
どしゃ降りです
濡れるのは
慣れています
嘆く姿
さまになるでしょう?
どうか
どうか
強がりだと
見抜かないで
鈍感な奴だと
笑わせて
ずぶ濡れでも
勝った気でいさせて
〈刺と刃〉
あなたの
刺のある言葉で
傷つけようとしたって
無駄
ただ
ひどく
煩わしい
私には
もっと鋭い言葉の刃で
斬り殺すことも
できるのだから
できるのだから
〈ありがとう〉
幸せなんて
教えられなかったら
不幸なんて
知ることはなかった
愛されてるって
想わされなければ
愛されない辛さ
感じることもなかった
恨んでいるよ
みんなあなたのせい
幸せも愛も
要らなかったよ
とても苦しかった
だけど
おかげでこの世界に
見切りをつけることができた
やっと
やっと
消える気になれた
それじゃあ
さようなら
幸せだった
愛していた
恨んでいた
感謝していた
ありがとう