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【名付けられた者】
ヒステリックに
苛立ちをこめて
今日もその言葉は
あなたの口から吐き出される
私 の 名 前 を 呼 ば な い で
それはまるで
呪いの言葉
私の手足を動けなくする
私 の 名 前 を 呼 ば な い で
それはまるで
私を操る糸
私を屈伏させるための
枕詞
私 の 名 前 を 呼 ば な い で
それはまるで
死刑の宣告
これから始まる恐ろしいことを
知らせるための合図
この世で最も嫌いな言葉
だけど一生付きまとう言葉
お願いあなたの名簿から
私の名前を消してください
【黒】
汚れてしまったと
一度ついたシミはとれないと
嘆かれるくらいなら
何色にも染まらない
黒になりたい
皆が私を疎んで
私の色を塗り替えようと
否定され続けるのなら
すべての色を侵してしまう
黒でありたい
【知ってる 知らない】
「遊びにいこう」とか
親しげにいうけど
社交辞令
お疲れさま
あたしは知ってる
あなたが影で何いってるか
あたしは知ってる
あることないこと言いふらして
あたしは知ってる
あたしはあなたの愚痴聞き係
あたしは知ってる
あたしのことも他人に愚痴ってる
結局あたしとは
他人の愚痴吐くために
付き合ってんでしょ
他人に愚痴吐くための
ネタ作りなんでしょ
現実世界の友達なんて
携帯の文字で綴られた
「友達になりましょう」
快くうけたけど
友達ゴッコ
お疲れさま
あたしは知ってる
本当はあたしにたいして興味無い
あたしは知ってる
いっぱい「友達」つくれば人気者みたいだもんね
あたしは知ってる
「私なんてどうせ」って言った時に
「そんなことないよ」っていってほしいだけ
あたしは知ってる
かまってチャンがいいおもちゃ見つけただけ
結局あたしは大勢のなかに埋もれた一人
あなたを盛り上げてくれるための演出家団体の一人
仮想世界にも友達なんて
あたしは知らない
友達の温かさ
あたしは知らない
友達との強い繋がり
あたしは知らない
友達の作り方
【私を見て】
ただかまって欲しかった
愛されていると確認したくて
「やっちゃいけないコト」
やれるだけやった
「ねぇ、私を見て!」
だけど家の皆は
私から目を背けた
私が一番じゃなきゃ嫌だった
勉強でもなんでも
どんな手を使っても
憧れの的になりたかった
「ねぇ、私を見て!」
だけどクラスの皆は
私から目を背けた
誰でもいいから注目されたい
街にでて大勢の前で
奇妙な踊りを踊り続ける
「ねぇ、私を見て!」
最初のうちは好奇の目で見られた
だけどすぐに皆は飽きてきて
疲れて足を止めたら最後
街の皆は
私から目を背けた
疲れ果てて
街のはずれ
一人きりで
鏡を覗く
「ねぇ、私を見て!」
だけど鏡の中の私は
私から目を背けた
【螺旋怪談】
あのヒトの遺伝子と
あのヒトの遺伝子で
私が出来ている
恐ろしい話だ
【花盗人】
花は麗し
君は花
手折らば果つる
生命なれど
知りて手折りぬ
我は花盗人
罪にはならぬ
罪にはならぬと
言訳はただ
口に苦し
最期の足掻きに
君が刺しぬ
刺の痛み
治す術も無し
【二進法による弁証法】
0と1しか無い世界
二進法
全か無かの法則
0は常に否定を続け
1は常に肯定を続ける
011010
110001
101100
やりたいことがある。それはとても楽しい
何もしたくない。興味がわかない
人にかまってもらえるとうれしい
誰も私にかまわないで
大好きな人たちがいる
みんな大嫌い死んでしまえばいい
二律は常に背反する
しかし同時に存在する
_______________
_______________
平行線はけして交わらない
010010111010110100010101001011
【ニュース】
○○市で女子大生が通り魔に殴り殺されるという…
23歳の息子が52歳の父親を刺殺…
どうでもいい
興味がない
法案が強制的に可決され、野党が…
本日の株価は低迷を続ける…
どうでもいい
興味がない
××動物園にてかわいらしい赤ちゃん…
10回の表、ワイルドピッチによる…
どうでもいい
興味がない
僕が見たいニュースは
本日で地球は終わります
それだけ
まだかな?
もう少しだと思うんだけど
【同盟】
満天の星空の下
降るような星空の下
僕と彼女は二人きり
同じ事を願ってる
甘い甘い
甘い願いを
「ねえ」
「はやく世界が終わるといいね」
僕らは
恋人じゃない
友人でもない
同盟だ
【極刑】
テレビでは
ヒトを殺したヒトを
殺すかどうかを決める
裁判の結果を待ち受ける
ニュースが流れてる
怖い
あっさりとヒトを殺した殺人者が怖い
殺されたヒトの家族の
激しい怒りと悲しみの
感情をこめた言葉が怖い
ありえない理由を
さも真実のように語る
弁護士が怖い
ヒトがヒトを殺す制度が怖い
ヒトが殺されたこと
これから殺されることを
エンターテイメントにする
メディアが怖い
それを
楽しみに観てる人間が
たくさんいるんだろうと
いうことが
怖い
怖い
怖い
【光りさす出口は向こうですほら案内板が】
「大丈夫だよ」
「苦しみは長くは続かないから」
「いつか必ずこの暗闇から抜け出せるから」
本当か?
言ってる自分に疑問符を投げる
君が今欲しがっている言葉を
並べ立てただけ
どこかで聞いたような
ありふれた慰めを
言っただけ
知ってるはずないじゃないか
暗闇から抜け出せるかなんて
この僕が
僕自身
暗闇から
抜け出せてないんだぜ?
【レストラン「真実」】
お待たせしました
ご注文のステーキです
こちらのお肉
すばらしいものです
母牛から産まれ
ミルクをたくさん飲み
愛情深く育てられ
広い牧場でのんびりと
草をはんで生きていたのを
屠殺場で
二酸化炭素によって殺害され
切り刻まれ
肉屋に卸されたものを
熱い熱い鉄板で
血が滴る程度に焼き上げました
おや?
お召し上がりにならない?
もしやお客さまベジタリアンにおなりで?
それではせめて
付け合わせの人参のソテー
こちらだけでも
召し上がってください
こちらの人参
すばらしいものです
肥料たっぷりの畑に種を蒔かれ
餌にしようと群がる虫たちを
容赦なく抹殺し
花を咲かせその子孫を残す前に
無理矢理引き抜かれ
切り刻まれ
熱い熱い鉄板で
ソテーしたものです
ベジタリアン
素晴らしい思想ですね
植物にも命はあるのですけどね
野菜が育つまでにたくさんの虫が殺されているのですけどね
植物を殺すことは
動物を殺すことより
罪悪感がわきませんからね
ベジタリアン
誠に素晴らしい思想です
え?
そんなことを言ったら食べられなくなるじゃないか?
鈍感な奴め?
これは心外です
今までそんなことを気にもせずに
食事をなさってきた方に
鈍感と言われるなんてね
【禁断の色彩】
「正しき」白と
「悪しき」黒
明度だけが支配する
世界はそう定義されていた
けれど僕は
白の清廉さを嘘臭いと想った
黒の強さにはかなさを感じた
だから僕は
この身を切りつけ
色を創った
鮮明な紅
この味気ない
モノクロの
寂しい世界に
彩りを
白に薄められぬよう
黒に侵されてしまわぬよう
自分の色を保つのだ
紅は
闘う者だけが
その身から創りだせる
色だから
【消費期限に忠実に僕らは創られている】
朝です
おはようございます
今日もまた一日
死へと近付きます
その期限がいつまでなんて
誰にもわからないけれど
着実に一日一日
その日は近付いていきます
もう夜です
おやすみなさい
明日の朝
目は覚めるのでしょうか
【風になんかなんねーぞ、俺は!】
俺の墓の前で
泣くんじゃねェェェェェ!
お経とかやめろ!
俺は仏教なんか
信じちゃいねェ!
戒名代とか払うぐらいなら
生前の俺に金をくれ!
「お前のことは忘れない」
とか言うなァァァァァ!
忘れさられてェんだよ!
この世から消え去りてェんだよ!
せっかく死んだのに
思い出すとか
勘弁してくれ!
俺が死んだら
俺なんかいなかったと
そう思え!
以上
俺の遺言だ!
【大衆演劇「教室」平日毎日開演】
40人は
演者で観客
この狭い四角い舞台で
僕が演じる役は
「空気」
でしゃばってはならない
いるんだけどいない
そんな役
上手く演じないと
ほら
後ろの席のあいつみたいに
「虫」
「バイ菌」
「うんこ」
そんな役をやらなきゃいけなくなるから
「空気」
上手く演じなくちゃ
降板しても行く場所なんてないんだから
【見えない物が見え聞こえない物が聞こえる私はきっと神】
「幻覚が見える」
「幻聴が聞こえる」
というのが私の病だそうだ
自分じゃよくわからないけど
医者が言うなら
そうなんだろう
だから
今すれ違った男子高生が
私を見て
笑ったのは幻覚
「デーブ!」って言ったのは幻聴
そうなんだろう
だから
私がいつも
鞄に隠し持っている包丁が
彼に刺さっているのも幻覚
彼が悲鳴と呻き声をあげてるのも幻聴
そうなんだろう
ああまったく
病というのは
煩わしいものですね
【Old Machine〜老いぼれマシン〜】
それはもう古いのよ
まともに動きやしないの
壊れてるのよ
修理のしようもないの
昔はいらなくなったら
山に捨てたそうね
現代にもその制度が
あったらよかったのに
維持に手間がかかるから
本当疲れるわ
はやいとこ
処分したいんだけど
古ぼけたマシンは
聞こえているのか
いないのか
ただただそこに
存在する
マシンは知っているのかもしれない
いずれ彼女も
同じように
言われるのだと
いうことを
錆付いたマシンは
もう何も
言わないけれど
【ドーリーガール】
わたしね
ママの
お人形さんなの
お人形さんだから
毎日
毎日
綺麗な服を
着せてもらえるのよ
今日はパーティーだから
特にママがお気に入りの
一番高いドレスを着るの
皆が口を揃えて言うわ
「まあなんてかわいらしい」
わたしはお人形さんらしく
優雅に微笑むの
でもね
決められた言葉以外はしゃべっちゃダメなの
テープに吹き込まれたみたいに
同じ言葉だけ繰り返すの
だってわたしお人形さんだもの
はしたない言葉や
無知を曝け出すような言葉を
言ってはいけないのよ
お人形さんはいつでも
綺麗でおしとやかでいなければならないのよ
守らなければ
ママからひどい折檻をうける
しょうがないのよ
お人形さんは
そうでなくては
いけないの
お人形さんが
文句を言うことは
できないのよ
【此処にいる意味】
真夜中に
君を乗せて
駆け抜ける
死んだように
誰もいない街
「世界中をこんなふうにするの」
楽しげに
呟く君が
しがみつく
背中に伝わる
鼓動と温もり
これこそが僕が
此処にいる意味
コンビニも
眠らぬ家も
街灯も
明かりはみんな
消してしまおう
「この世界を破壊しよう」
真剣に
僕の目を見て
そう告げた
何より尊い
君との約束
それこそが僕が
此処にいる意味