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〈明順応〉
人は
眩しい光を見ると
暗闇を作って
その光に抗う
あなたのあの時の
目映さがいけなかった
あれから暗闇しか見えない
〈睡眠薬の必要量〉
希望:もう目が覚めないくらい
無理ですか?
〈眼帯少女〉
片目
病んでる
みたいなの
距離感が
わからない
あなたとの距離
測れない
片目
病んでる
みたいなの
半分は
いつも
真っ暗な
世界
片目
病んでる
みたい
あたし
まるで
眼帯
少女
〈三者三様〉
異常者について
他人の場合
異常者本人は蔑む対象であり
その身内は憐れむ対象である
身内の場合
他人は知られたくない者であり
本人は煩わしい荷物である
異常者本人は
他人は
「死んでしまえ」
であり
身内も
「死んでしまえ」
である
自分自身も
「死んでしまえ」
である
〈汚物〉
汚いもの
汚いもの
汚いもの
目をそらしたくなるもの
でもよく見てご覧
そこにはほら
「現実」
って書いてある
綺麗なところしか
見てこなかったの?
それじゃあ君の
汚い部分は
ほっとかれて
さぞ汚くなっているだろう
綺麗なものだけ
見てきたのにね
こんなに汚い
なんてね
〈パラパラまんがと再生から見る宇宙の証明〉
例えば
ノートの隅に
パラパラまんがを描く
丸と線で作られた彼は
ページがめくられるたび
頭が膨らみ
爆発して
死亡する
ところが
逆の方向にめくると
彼はたちまち
再生するのだ
ところで
宇宙というものは
膨らみ続けては
爆発するらしい
そして
また新たに
再生するそうだ
さて
僕は時々
いろいろなものが
鬱積し
突然
爆発する
ところが
しばらく時間がたつと
何事もなかったように
再生するのだ
わかるかつまり
パラパラまんがは
イコール宇宙なんだ
パラパラまんがは
イコール僕なんだ
ゆえに
宇宙
イコール
僕だ
これで証明を終わる
〈神様、愛していました〉
ごめんなさい神様
愛していました
あなたのためなら
なんでもできた
あなたがいるから
なんでもできた
なのにこうして
あなたの脳天に
銃口をむける日が
くるなんて
ごめんなさい神様
あなたより
大切な人ができました
その人のためには
あなたは邪魔なの
わかってくださいますよね
さようなら神様
愛していました
死んで
ください
〈お料理できません〉
私お料理
できません
刃物持つのが
怖いんです
自分の手を切るのは
怖くないの
慣れているから
ね
ただ
刃物を持つと
そこいらにいる人を
刺しまくりそうで
うん
やっぱり
私はお料理
しないほうがいい
〈言葉は道具〉
ねえ
言葉なんて
いくらでも変化できる
ただの道具で
ナイフだとさしだされたものを
これは飴細工なんですねって
溶かして
ふわふわの
わたあめにすることだって
できるんです
だけどこんなにも
誰も彼もに
ナイフを突き出されたら
傷つく以外の
どうしようもないのも
事実なんですよ
ねえ
〈虐待されて育った君へ〉
復讐したいと
願うなら
何
あと60年ほど
待ちなさい
あなたが彼らに
容易に仕返しできる日が
きっと来る
理不尽な暴力
冷たく痛い言葉
そういったものを
彼らが抵抗できなくなる日が
まあその時
本当に仕返ししたとして
なんらかの不利益を
被ったとしても
私はなんら
関知しないんだがね
〈私の世界〉
二人の世界は
それぞれで
やっていけると
信じていた
私たちは
対等だと
だけどいつの間に
私の世界は
あなたに奪われて
あなた無しに
存続できない
私の世界
隷従するしかない
私の世界は
あなたの手中
〈君の世界〉
君の世界から
すべて奪った
うれしいとか
楽しいとか
幸せとか
奪った
それでも君は
笑っていたから
今度は
苦しみとか
悲しみとか
不幸とか
奪った
君の世界からは
すべて奪ったんだ
君には何にもない
なのにどうして
まだ笑えるの
「何もなくしてないのよ」
「奪われても」
「これは」
「交換だから」
笑うしかないね
奪ったと思っていたら
僕も奪われていたなんて
笑うしかないね
君の幸せが僕ので
僕の幸せが君ので
不幸もまた
同じで
笑うしかないね
お互いに奪ったもの
ランタンの明かりにかざして
意外ときれいな世界だねって
笑うしかないね
〈目印〉
この先
どこか他の星で会ったら
この傷跡を
目印にしてね
いつ巡り会っても
私だってわかるよう
傷跡が消えないように
何度も
何度も
切りつけるから
目印見つけて
探しにきてね
〈破壊衝動〉
破壊衝動!
破壊衝動!
高層ビル
駆けのぼって
地球めがけて
スーパースペシャルパンチだ
喰らえ
ドーーーン!
〈愛なんて狂気で〉
愛なんて狂気だと思う
その感情の為に
正常な思考ができなくなる
愛なんて狂気だと思う
その感情の為に
何でもできそうな
幻想ばかり見える
ねえ愛なんて狂気でしょう?
こんな血に濡れた手になってでも
あなたを抱き締めたいなんて
ねえ逃げないで
この愛をくれたのはあなた
この狂気をくれたのはあなた
〈歪欲〉
逃げようとして
ひっ掴んだ
髪の匂いに
欲情
かわいい声で
叫んでみせて
暴れまわって
流した
汗の匂いに
欲情
無意味って言葉
嫌になるくらい
刷り込んであげる
絶望の末流した
涙の味に
欲情
きらきらきれいな
君が壊れてく
きれいなものを
汚すのが好き
きれいなものを
壊すのが好き
〈自殺者支援〉
自殺者支援制度を
作ってはいかがか?
自殺したい者は
申請によって
無料で安楽死させてもらえる
そのかわり
臓器はすべて
移植に使われるのだ
死にたいものが
安心して死に
生きたいものが
たくさん助かる
なぜこの制度が
できないのだろう
倫理?
君がその倫理を
振りかざしている間に
どれだけの人が
苦しんでいると想う
それは倫理に
ひっかからないのかい?
〈痛恥ずかしい青春のアレ〉
死ぬとか
殺すとか
簡単に
想ってしまうけれど
昔書いた
作文とか
文集を
日本中に晒されると思うと
うっかり
死ぬとか
殺すとか
できない
将来の夢
「アイドルになって○○くん(当時人気の男性アイドル)とけっこんする」
痛ええええ!
昔の自分死ねええええ!
〈私だけの〉
慰めの言葉なんていらないの
この痛みを
わかりもしないくせに
おざなりの慰めなんて
欲しくない
この痛みを
私の大切な
私だけの痛みを
わかった顔で
共有しようとしないで
〈おめでとう〉
「おめでとう」
その言葉の裏に
どれだけの嫉妬が
隠されているのか
そう考えると
余計嬉しくなるよ
「おめでとう」
「ありがとう!」