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〈矛盾の日〉
とてもとても
寂しいので
独りっきりに
してください
「誰か!」と
叫びたくなる程
独りっきりに
してください
寂しさで死ねる
それくらい
独りっきりに
してください
そこまでいかなきゃ
たぶん
治らないの
この病は
とてもとても
矛盾しているけれど
独りっきりに
してください
〈メルヒェン〉
童話みたいにね
針と糸を使えたらいい
眠っている間に
あの人の
口を縫い付けちゃうのよ
ほらもう
あのうるさいお小言や
けたたましい喚き声
聞かなくてすむのよ
メルヒェンチック
メルヒェンチック
女の子はメルヒェンが好きなの
〈内側に〉
外側に
傷つけるのは
同情してほしいみたいで
嫌なんだ
傷つけるなら
内側に
ざくざくと
胸の中
抉る
刃物
飛び散る血
痛み
「痛い」
「生きてる」
繰り返しながら
〈狂気の在りか〉
まあね
大人ですから
常識くらい
ありますから
自分がおかしいってこと
隠すくらいはできます
狂気はいつもこの腹の底
だけどね
そんな理不尽な
物言いをされたら
爆発しても
仕方ないですよね
狂気は今
この舌の上
〈玩具箱の悪魔〉
取り憑かれてる
玩具箱の悪魔
玩具箱の中にしか
興味がなくなってきた
不親切設定な現実より
玩具箱の中は快適
ごらん
玩具箱の中は
見知らぬ冒険や
胸ときめく恋が
現実に嫌気がさすほど
玩具箱の悪魔は
力を増して
いつか
知らぬ間に
玩具箱に
閉じ込められる
居心地いいからでたくはないよ
玩具箱の悪魔は
最高の友達さ
〈難問〉
何もかも
難しいね
僕には無理だ
死ぬということ
生きるということ
〈人魚のように〉
ねえ
この海に
身を投げたら
泡になれる?
海洋汚染!
海洋汚染!
私は世界破滅の
ベクトルに加担する
〈正戦〉
戦争は悪だ
人間のする
最も愚かな行為だ
なくそう
戦争
やめよう
戦争
さあみんな
戦争をなくすために
戦争をしよう
各国にスパイを送れ
言論を統制せよ
戦争をなくすためだ
戦争反対!
足並み揃え行進せよ
できぬ者は厳罰だ
戦争をなくすためだ
戦争反対!
人の
1人や
10人や
100人や
1000人や
10000人や
100000人の
犠牲など仕方ないではないか
戦争をなくすためだ
戦争反対!
聖戦なんて
うさんくさい神に
とらわれた
戦争じゃない
そんなのをなくすための
これは正しい戦争だ
言わば
正戦なのだ!
〈躊躇うな〉
何を躊躇っているんだ?
その手は
人を殺める為にある
何を躊躇っているんだ?
その首は
自ら掻き切るためにある
何を
躊躇って
いるんだ
〈装備〉
それは容易く折れるから
崩れやすいものだから
心はナイーブでデリケート
守るための武器だから
だって小さな要塞だから
心にナイフとバリケード
〈世界が終わったら〉
世界が終わったら
迎えに来てね
ここにはもう
いられないから
あなたが創った世界に
連れていってね
あなたがその筆先で
描いた世界へ
あなたが描いた
あの空
あの空に憧れて
あなたに
恋した
ねえ
世界を終わらせて
迎えに来てね
あの空の下
連れていってね
約束
ね
〈うし〉
食べられるために
産まれ
食べられるために
育てられ
食べられるために
殺される
牛は別にいいんだって
じゃあ
鯨はだめですか
犬はだめですか
猫はだめですか
人はだめですか
なんで?
どう違うっていうの?
所詮
みんな
生き物じゃないか
〈腐乱生体〉
知っているか
人は
生きたまま
腐ってしまう
桃や
みかんのように
寝具などに
固定されると
圧迫が強い部分から
腐るのだ
そうだ
それと
同じだ
心が
動けぬまま
腐っていく
生きたまま
ゆっくりと
痛みをともなって
〈腫れ物〉
心臓が
腫れ上がってるみたいだ
熱く
熱をもって
ドキドキ
ズキズキ
痛む
破裂するんだ
きっと
わかるんだ
わかるんだ
〈ぼくのゆめ〉
ぼくは
しょうらい
せんすいかんに
なりたいです
しんで
このからだが
なくなったら
うまれかわって
せんすいかんに
なりたいです
ふかいふかい
うみのそこに
しずんでみたいです
だから
しぬときは
うみにとびこんで
しにます
せんすいかんに
なりたいです
それが
ぼくの
しょうらいの
ゆめです
〈もしも〉
もしも僕が
神様だったら
出来損ないの
人間を
たくさん作って
笑うだろうな
そのうち飽きて
全部
壊すだろうな
悪魔面した神の
笑い声が
聞こえなかったか
〈劣化コピー〉
コピーは劣化する
コピーは劣化する
コピーは劣化する
君なんて
所詮
誰かの真似で
日々の生活
生きている
コピーの寄せ集め
オリジナル
見せてみろよ
君自身なんて
存在してるのかい
コピーは劣化する
コピーは劣化する
コピーは劣化する
誰かのコピーしか
作れない君
コピーはオリジナルの
美しさを越えられない
劣化コピーは
見飽きたよ
〈ルナティック〉
ダメだ
月明かりが
美しすぎて
おかしくなる
誰か
痛みを
正気に
かえして
でないと
連れてかれる
意識
が
〈マザー・グースのレシピ〉
ハンプティ・ダンプティで
半熟玉子を作りましょう
おや
だあれ
中身はとっくに
エンプティ
誰が中身を
盗んだの
きっとコマドリ
殺した奴だ
あいつはママの
肝臓も
テリーヌにして
食べたんだ
かわいそうな
マザー・グース
〈無価値なあたしにさよならを〉
ねえ陳腐な
小説やドラマみたいに
頭うったくらいで
記憶が消せるなら
あたしの頭
ぶん殴ってから
さよならを言って
脳が砕けても
どうでもいいわ
あなたが必要としないなら
あたしはあたしの
価値なんて見いだせない