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詩イ殺ス。  作者: 八田硝子
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【死に急ぐ君へ】



死なないで

どうか

死なないで


私が殺してあげるから

必ず殺しにいくから


死なないで

どうか死なずに

待っていて







【世界のシステム】



ねえあなた

生まれ変わったら

また会いましょう

 

あらでもそうしたら

あの人やあの人たちなんかとも

生まれ変わって

また出会う可能性があるわけで

 

あなたごめんなさい

さようなら

さようなら

二度と会いません

 

世界のシステムが

死んだ後に

再会できるもので

ありませんように







【否定の快楽】



他者の想いを

まったく否定するのは

快楽


他者の信ずる神に

汚物をぶちまけるのは

快楽



この想いを否定したあなただって

快楽に浸っているのでしょう?


薄汚い

快楽







【型】



おまえの型に

はめ込むなよ


型にはまらない奴は

気に喰わないみたいだけど


おまえの型は

見識は

了見は

狭すぎるんだよ


おまえの型にはまるほど

俺は小さくはないし

単純にできていないんだ


おまえの思い通りには

ならないんだよ







【清潔な暴力】



清潔な暴力を振るおう

制服が血で汚れないように


清潔な暴力を振るおう

僕らの未来が汚れないように



そいつの耳の穴に

小さな爆弾を投げ込め

それは中で大きくなり

中で爆発するのだ


僕らは少しも汚れない


何年か経って

昔自殺したやついたよなって

笑い話にできるくらい



清潔な暴力を振るおう

誰にも暴力と気付かれぬよう


清潔な暴力を振るおう

ゴキブリみたいに清潔な







【逃亡の果て】



逃げよう

手に手をとって


遠くへ


遠くへ


もう追い付かないと

振り替えって

絶望しよう



まだ手のひらの

上だったと







【魔法少女】



小さなころのあたしは

妖精が見えた

魔法だって使えた


空はまだ飛べなかったけど

いつかは飛べるつもりでいた




食事に混ぜられた

少しずつの

『現実』


それはあたしを

ゆっくり侵していって




気付いたら妖精は

見えなくなっていた


魔法も

使えなくなっていた


これじゃ

空なんて飛べない



飲まされたものを吐き出せば

なんとかなるかと

咽喉に手をつっこんで

吐いている



体が軽くなった



飛べそうな気がした







【YES/NO】



選択を迫られる


YES OR NO?


二つの答えがあるはずなのに

私は選べた試しがない



この仕事やってくれる?


どう、おいしい?


手伝ってほしいんだけど?


貸してくれないかなぁ?


私のこと愛してる?



YESで答えることが

前提の質問

いつだって

NOを言う権利は

剥奪されてしまう



YES OR NO?



NO!

NO!

NO!



大きな声で

NOと言わせて!







【「別れよう」の言葉】



君も僕も


傷つけるはずの


諸刃の剣


振るったのは僕


死んだのも僕







【行こうか】



歩いていきたいな



どこまでも



どこまでも



どこでもない場所に



行きたいな







【失敗の天才】



自殺したいっていうなら

してみろよ



おまえは絶対

死に損なう



いままでの人生

失敗しかしてこなかったんだから







【迷うなぁ】



ねえ

どっちが好み?


教えて!


教えて!


あなた好みになりたいの



愛してくれないのなら

あなたの最愛の人を

殺す女



愛してくれないのなら

あなたを殺して

自分も死ぬ女



ねえ

どっちが好み?


教えて!


教えて!


あなた好みの

女になりたい!







【指先はおしゃべりなんだ】



指先はおしゃべりなんだよ

ノドなんて役たたずさ


指先はしゃべりたがるよ

ノドなんて詰まってばかり


指先がしゃべりたがってるよ

ノドなんてくれちまいな



指先だけ

しゃべってりゃいいよ







【社会人認定おめでとう】



仕事中ふと

目に入った鏡には

笑顔の私が映っていた


おかしくもないのに

うれしくもないのに

笑っていた



「どんな時でも笑顔でいられたら

一人前だよ」



ああそんなこと

言われたなぁ


社会人一ヶ月目


おめでとう

おめでとう


一人前に

頭がおかしくなりました







【秋】



ああ

秋の日の

夕暮れよ


金木犀が

悲しいくらいに薫る

こんな日は


また夜が長くなったのを

嘆くのです


想い悩む時間が増えたのを

嘆くのです



そして

やがて

訪れる








【届け電波】



僕は今日も

空に向かって

電波を放つ



僕は

ここで

独りです



携帯の電波に

乗せたこともあったけど

余計な電波が多くて

傷つけられてばかりだったから



やっぱり僕は

この空に

電波を放つ


この電波を受信できる

たった一人めがけて



きこえますか

君も独りですか


話をしませんか







【銃弾】



君のため


最後の銃弾


一つ残し


死にいく僕を


どうか称えて







【観察記】



君に嫌いと言われてから

僕が見ていたのは

君の幻影と気付いた


よく笑うのは

付和雷同な

相づちをうっているだけ

おもしろくもないくせに

嫌われたくないだけの計算

自分の意見がないんだ


誰にでも優しいのは

その方がウケがいいのを

知っているから

偽善者

心なんてこもってないんだ


観察してるよ

君のこと

嫌いになる理由

見つけるため

観察してるよ


今嫌な顔をしたね

嫌いになる理由

また一つ増えた







【脳】



脳がいけない


脳がささいなことで

腫れあがるのがいけない


淀むのがいけない


ねじれるのが




必要なのは

一発の銃弾

さあ銃口を

こめかみに


この脳を弾け飛ばせたら

さぞ気持ちいいと想うんだ


どんなにさわやかと想うんだ




引き金は意外に軽かった







【変わらない世界】



私が死んだら皆は


悲しんだり


悔やんだり


自責の念にかられると


思っていたのに




世界は何も変わらない

笑った人がいただけで

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