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【プリズム・プリズナー】
硝子片に
閉じ込められた気分なんだ
昔読んだ大文豪の本にも
似たような言葉があった気がする
あれは硝子片では
なかった気もするけど
うん
まさにそんな感じだ
他人に手が
届かないんだ
あの文豪も俺と
同じだったのかな
ちょっと愉快だ
【因果応報】
何 当然のことなのだ
僕は君たちを否定しなかった
だが君たちは僕を否定した
報いを受けるべきなのだ
因果応報
僕も君たちを否定する
その存在すら
居てはならないのだ
君たちは滅するべきなのだ
否定された僕には
否定する権利があるのだ
因果応報
そういうことなのだ
【平等のルール】
例えば人種
例えば性別
その他色々
いつだって「平等」は叫ばれて
それが本当に叶ったことはない
ただ一つ
死
を除いて
才能に溢れ
誰からも必要とされる者にも
皆に疎まれ憎まれる者にも
死は平等に訪れる
生きる時間の長さに
差はあるが
死が訪れるということは
誰しもが決められている
死に際が幸せに満ちた者もあれば
孤独で悲惨な者もあるが
それでも死ぬということは
皆同じなのだ
誰もが望んで
誰もが成しえなかった
平等
死だけが
そのルールを
成しえる
美しきルール
平等
死
平等に死んだ後に
天国や地獄なんて
不平等を持ち込むのは
実に不粋だと思わないかね
【あなたは冷たい土の下に】
待て
とあなたは言いました
私はあなたの
忠実な犬
待ち続けます
いつまでも
いつまでも
あなたが
よし
と言うまで
待っていてくれ
そう言ったままあなたは
物言わぬ姿で
帰ってきました
今私は
あなたが
土の下に行くのを
見ながら
待っています
なきもせず
私はあなたの
優秀な犬でありたいから
よし
が聞こえるまで
待っています
耳を澄ませて
【1から】
悲惨なもんだよ
また1からスタートだ
人生はやり直しがきく
いい言葉だね
でも1からスタート
正直やってらんないぜ
うんと年下のガキに
えらそうな顔されてよ
腹立ってぶん殴ったら
またどっかで
1からスタート
おまえも俺を
1だと思うか
残念
今俺はマイナスだ
見下してんだろ
マイナスの奥
覗いたことはあるか
果てない深遠
見たことがあるか
何まともに聞いてんだよ
冗談だよ
馬鹿だね
いや俺のこと
【そんなものだ】
国境を越えると
そこは
天国だった
なんてこと
あるはずもなく
違う地獄が
広がっているだけ
【あの頃・ANSWER】
お前が隠してる傷なんて
とっくにお見通し
いつまでそれに捕われるの
その傷なんかより
大きな痛み与えたら
それを忘れられるの
爪をたて
牙をたて
もっともっと
痛くしてやるよ
俺だけの痛みに
支配されてよ
あの頃のお前も
今のお前も
俺の知らないお前も
全部俺のもの
【癒せぬ渇き】
目が霞むほど
手が震えるほど
渇くよ
この渇きは何
渇いているのは
喉なんかではなくて
君の血で
潤せたら
なんて
イカれた妄想も
正当化したくなる
ただ
ただ
生きているだけで
渇くよ
【MOON】
暮れ泥む空に
銀色三日月
月は人を狂わせると
何かで聞いたけれど
これ以上
狂わせられるものなら
やってみろよ
そう言って睨んだら
月は怯えて
震えていた
【肥料】
腐敗していく
心の奥まで
ゆっくり痛みながら
腐敗していく
そんな私を糧に
あなたは花ひらくのでしょう
美しく
ただ
美しく
【デルクイ】
杭がでてるぜ
打とうぜ
打とうぜ
みんなと同じに
なるまで打とうぜ
一人だけでてるなんて
ずるいぜ
何故その杭が
抜きんでているか
わからぬ愚かな者達は
たたくよたたく
でる杭たたくよ
でる杭にかなわないからって
たたき続けるよ
でる杭の天辺から
笑われているのも知らず
【暗い道】
君が行こうとするのは
果てなく暗い道なのですね
恐れ泣きながらも
行くしかないのですね
手を繋ぎましょうか
私の行く道も
同じ方向なので
一人で泣いていたら
寂しいけれど
二人だったら
ちょっと滑稽でしょう?
行きましょう
暗い道を
【嘘世界】
この世に生まれ出た君よ
君に嘘を教えよう
まだ疑うことを知らない君に
きれいな嘘を教えよう
人間はみな本当は善良だ
話し合えば誰しも
争わずに済む
情けは人のためならず
夢は信じれば
必ず叶う
世界は美しい
いつか君は言うだろう
「嘘ばかりを教えたな」と
その時私は言おう
「この世は嘘ばかりだと
教えるためだよ」
君はきっと
それが本当か嘘か
わからぬ顔をして
【言わずの恋】
誰にも言いません
私があなたを好きだなんて
私は自分を知っているから
あなたに迷惑を
かけることはしません
遠くから見たりしません
あなたの行きそうな場所に
行ったりしません
あなたの名前を
言いません
あなたの視界に
入りません
こんなに自分を抑えても
まだあなたを好きだなんて
実に私は馬鹿なんだと
そう思います
馬鹿に好かれるのは
迷惑でしょう?
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
【奪還の日】
奪い返したい
大切だったもの
それは
春の日
穏やかな日差し
暖かな空気
小学二年生
土曜日の放課後
当時はまだ午前授業で
午後は友達と遊ぶ約束
お昼ごはんはなにかな
平和な
平和な
もう帰らない日々
憧れて
憧れて
二度と届かないとしても
私から
奪い返したい
【衝動的に】
誰でもよかったんです
知り合いでも
見知らぬ人でも
無差別です
老人でも
小学生でも
赤子づれの母親でも
ただ衝動なんです
一人でも
大量でもよかった
誰でもよかったんだ
ただ
笑いかけて欲しかった
そんな衝動がわいて
さまよっていただけなんです
【靄】
もやがかかって
見通しがききません
フォグランプは
むなしく光り
まあこの先が崖っぷちでも
これは幸い
思い切り
アクセルを踏み込む
【返信】
いまさら何だよ
散々ほったらかしで
育ててきたくせにさ
体の調子が悪いとか
もう歳だからつらいとか
都合のいいことばかり
面倒みなきゃ
極悪人みたいな
脅迫しやがって
ずいぶん昔に
あなたからいただいた言葉
綺麗に包んで
送りかえしますね
甘えるな
【体は知っている】
この体は
何故か知っている
皮膚を肉を切り裂く感じ
骨を砕き折る感じ
心臓を貫く感じ
人を
殺す感覚を
何故かリアルに
想像できる
それは
自制の本能?
本当に
してしまわない為の
【死ねと言うのは】
私はあなたに死ねと言う
なんの遠慮もなしに言う
それはあなたが
生気に満ち溢れているから
か細い弱い命に
人は死ねとは言わない
あなたは生きている
強く
強く
疎ましいほどに
本当
死ねばいいのに
あなたは生きている