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【かみなり】
晴天にわかにかき曇り
暗雲空を覆い尽くす
奴の唸り声が聞こえる
遥かから雷鳴
奴は光り放ち言い放つ
神なり、と
痛いほど撃ちつける雨
辺り構わず落とされるイカヅチ
奴の笑い声が響く
我は神なり
神なりぞ
力でしか人を従えない
かわいそうな横暴な
神
【向かい風】
「強い向かい風が好きなんだ」
「飛べそうな気がするから」
そんなことを
言っていたっけ
あなたは今
どの空を飛んでいるの
もう地上には
降りてこないの
【クーキヨメナイ】
ああごめんねぇ
あたしさ
ほら
空気読めないからさ
みんながあたしを
友達だと思ってるって
勘違いしてた
そんなはずないよねぇ
私にそんな価値
無いもんねぇ
ほんと迷惑だったよね
ごめんねぇ
間違いでも友達だって
思ってたときは
すごく楽しかったよ
ありがとねぇ
じゃあね
ばいばい
笑いながら
泣きながら帰る
帰り道
【二人でお茶を】
あなたは私がいれたお茶を
黙って飲む
おいしいも
おいしくないも
言わない
新聞に目を落としたまま
当然のことみたいに
ねぇ覚えてる?
私たちが最後に「会話」した日
「ああ」とか「うん」は
会話じゃないのよ
いてもいなくてもいいなら
私はいなくなるわよ
あなたのお茶に
何かを入れるのも
簡単なのだけれど
やっぱりあなたは
黙って飲むのでしょうから
死ぬときも
黙って死ぬの?
ああそれは
楽しい想像
あなたは最後に
会話をしてくれるの?
ロマンチックね
私が望んだもの
さあ今日も
二人でお茶を
【ゲーム】
うまいことやれたら
君の勝ち
変なルール
変なゲーム
いつの間に誰が決めたの
なんて質問も許されずに
僕らは戦場に
駆り出される
リセットできないなんていって
ゲームに放り込んだのは誰?
データ継承のためだけに
無理なキャラクター
押しつけたのは誰?
ああ今日のプレイも
カミサマのいうとおり
【毒と嘘】
調子にのってんだろ?
大概にしろよ
お前にそこまでの才能ねえよ
そういうところが
嫌われてんだぜ
本当は友達
いないんだろ?
見ててわかるぜ
そういう顔だ
俺は嘘は吐かねえ
毒は吐くけど
なにそれひどいね
全然そんなことないよー
君はすごくいい人だよ
うん、もちろん君は友達だし
みんなも君のこと
大好きだよ
嫌われてないって
大丈夫
僕は毒は吐かない
嘘は吐くけど
【昼間の花火】
光溢れる場では
君の輝きは目立たない
まるで
昼間の花火みたいに
君は
暗黒にあって
初めて美しい
僕の暗黒に堕ちておいで
ここでなら
君はどこより
美しい光
【真昼の花火】
あいつなんかがいるから
あたしは輝けない
あたしは美しいのよ
本当は
美しいのよ
憎たらしい太陽
あたしには邪魔者
撃ち落とせ
二度と昇れぬよう
あの暗黒でなら
皆はあたしを崇めるの
撃ち落とせ
あたし
真昼の花火
【スマイル!】
笑って!
笑って!
笑顔が一番
笑えばハッピー
スマイル最高!
大嫌いなあいつも
むかつくあいつも
見下して
鼻で笑えば
ほらね!
胸がすーっとするよ!
笑って!
笑って!
笑顔が一番
笑えばハッピー
スマイル最高!
スマイル0円!
【最深部】
うわ
すごいね
その泣き顔
ひどいよ
見れたもんじゃないよ
ふってくれてありがとう
これから君を
愛する人も
あらわれるんだろうね
その度に
思い出してね
俺を
そうなるように
一番深い所に
傷つけておくから
思い出せよ
本当ひどいよその顔
笑えるよ
【ちょっとした疑問】
ねえ
何で皆さ
生きてるって思えるの?
生まれた記憶も
無いくせに
【真性】
ああこれはダメだね
「いい子」の皮
完全に被っちゃって
頭も見えやしない
中、カスまみれでしょ?
病気にもなるよ
アレと違って
余ったとこ切って
縫うわけにもいかないしね
治らないよ
君は真性クレイジーだよ
笑ってんなよ
仮性ども
【逃っ】
飛び立てぬよう
羽を落としたのに
困った人ね
足も落とさなくては
まあ腕もいらないの
どうして
どうして
あなたは首一つになったって
私を愛しているとは
言わないの
ココロは
どこに逃げるの
【信じるってなぁに】
誰も信じられない
何も信じられない
そんな考えすら
信じられない
【壁を作ったのは誰】
国境を
作ったのは誰
善悪の線を
ひいたのは誰
私と他の人を
区別したのは誰
私じゃない
はず
なのに
【幸せになれない王子】
私のかわいい
異形の王子さま
なぜ誰も
あの異形を
美しいと想わないのだろう
キスをしたら
元に戻るのかしら?
そう想うからキスはしないの
醜さを嘆くあなたは
とてもかわいいわ
【独り言】
結局私が話す言葉は
すべて独り言なのだろう
誰の心にも届かない
聞こえていても
返事をするものじゃない
そういうものなのだろう
コミュニケーションは常に
上滑りをして
いつだって
会話にはならない
伝えよう
伝えようと
言葉を投げ掛けても
それらは何もかも通り過ぎて
独り言に
なる
なんでもないよ
言ってみたかっただけ
そうさただの
独り言
【ハートの人事部長】
まったく皆
役たたず共
君は不要だよ
今日でさよなら
明日からどうすればなんて
知ったことじゃないね
君より優秀なのが
今度はここにくるのさ
さあこの者の首を
はねてしまいなさい!
首を切ろう
首を
首を
要らぬ首を切って
新たな首を
私はハートの人事部長
首を切るのは
私次第
【細い糸】
私に手渡される
「繋がり」は
いつもか細く
はかない糸
いつでも簡単に
断ち切れるようにと
私が欲しいのは
こんなのじゃないって
癇癪を起こして
引きちぎって
どうして泣くのは
私なの
誰も悲しみは
しないのに
【バスに乗せて】
バスはいつものバス停に向かい
順調に走り続けている
「お降りの方はボタンを押してください」
機械の音声に手をのばしかけ
そのまま動けなくなった
このバスが
どこか遠くへ連れていってくれる
そんな想いが
私を凍らせた
いつものバス停通り過ぎて
くだらなくて笑えてくる
一体どこに辿り着くというのか
財布に金も
一人で生活する力も無い
この道を戻るしかないんだよ
今度こそボタンを押して
私はバスから降りる
歩こうか
帰りたくなんか無い道を
想いだけ
バスに乗せて