第3章 第32話
さて、今日も武芸の授業で体がぱんぱんだ。
この体の疲労感が1日の授業を終わったことを感じさせてくれる。でもだいぶ、やっぱりそんなにしんどくはなくなってきたな。最近は1人の朝練に行く時もあまり息が切れなくなってきた。でも全力疾走で完遂はまだ出来ないので、30分行かないくらいで着けるようになったくらいだ。目指せ全力疾走15分未満。
なんせ授業は終わり、オリビアを待とうかな。そういえば、オリビアの武芸の授業は実戦をそろそろ、とか言ってたな。聞くに実戦派な授業な気がする。ここにいるときはどういう授業をしているんだろう。ちょっとだけ気になる。
「ウィルお待たせー!」
「オリビア!今きたところだから大丈夫だよ」
「じゃあ行こっか!」
とりあえず寮に戻って着替えて、秘密の稽古場で冒険者の用意だ。
僕たちは寮に一旦戻るために、学校の淡くピンクがかった石畳を歩いて校門まで歩く。
「ねえオリビア。オリビアの武芸の授業って今どんなことしてるの?」
寮まではのほほんと歩くので、どんな授業しているのか聞いてみる。
「毎回別々のペアを作ってお互いに打ち合いをしてるかなー?ときどきその時の教官と打ち合ったりもしてるよ」
おー、やはり取り敢えずは対人形式にして経験値を積もうということか。まあそっちの方が自分の出来ないこととか明るみに出て手っ取り早いのは手っ取り早いか。
「なーるほど。オリビアはどんな感じなの?満足してる?」
「うーん。まあ楽しいけど、前も言ったけど物足りない感はあるかなー。周りの人たちも強いんだけど、なんか隠し合ってるというか、奥の手を見せないんだよね。だからなんか本気で打ち合ってる気がしないっていうか。でもね、わたしもその中で成長しようと思って!今は身体強化の魔法なしでうちあってるよ!」
「ほお!それはすごいね!教官ともそうしてるの?」
「もちろん!お陰で最初は防戦一方だったよ•••。でも今は、なんだか色々ステージアップした気がするよ。この前のスタンピードの時にいろいろ掴んだ気がしてさ、今はいい感じなんだよね」
オリビアから闘志、のような気配が漂う。早く実力を試したいといった様な身体の動かし方を一瞬した。僕はその動きに身震いをする。これは••••強者の圧だ。ふっふっふ、これはオリビアの実力、見てみたくなったね。
この1ヶ月もオリビアと定期的に稽古をしてたけど、何か探り探りだったからね。もしかしたら、辿り着いたのかもしれない。父様に言って、もし近くに来る様なことがあれば一緒に稽古したいな。それかこっちから行くのもありか?
僕も、前の稽古の時に出来なかったやりたいことがあるし。
「オリビアの力、みてみたいね。父様に言って近くに来る様なら一緒に稽古しようか。それか父様の近くに行ってみるか」
「え、やったー!師匠と打ち合いたかったんだよね!確かに、そろそろこっちから師匠のとこに行ってもいいね。同じ場所っていうのも味気ないし」
「よーし、じゃあまた連絡とってみるね」
うんうん、アーサー殿下が言ったみたいに僕はどうやら次の学期末トーナメントで1番にならないといけないらしいから、ここいらで父様みたいな死を実感させてくれる猛者と稽古しときたかったんだよね。ちょうどよい。
他には学校のこととか、オリビアの友達のこととか、試験のことについて話しているとすぐに寮に着いた。楽しい時間というのは一瞬だ。こんな楽しいオリビアとの時間は大切にしよう、と何気なくいうとオリビアが言葉にならない声で一瞬バグって
「バカア!」
って叫ばれた。なんで?そのままのことを口にしたのに。年頃の女の子とは難しいものだ。
それからは一瞬で動きやすいいつもの格好に着替えて、秘密の稽古場に一緒に走っていき、冒険者の格好に着替えて町にくりだした。
オリビアの態度も普通に戻っててよかった。オリビアは時々なんか感謝の念とオリビアと一緒にいることが楽しいことを伝えたりするとおかしくなることがあるけど、なんなのだろうか?僕って伝え方がキモイのかな?なんだか考えるとメンタルのヘルスがやられそうなのでこれ以上考えるのはやめておこう•••。
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冒険者ギルドの扉を開けると、かけ付けてある鐘が一緒に揺れて屋内に鳴り響く。その音で誰かが来たとわかり、皆が扉の方にいったん顔を向ける。
あのどんちゃん騒ぎはなかったかのように、ギルド内はいつもの光景となっている。冒険者の血と汗と酒、そしてその熱気が渦巻いている。
みんな、なんだあいつらかと、確認できたら興味をなくしたのか、扉に入ってきた者には目もくれなくなく。うん、ギルドはいつも通りだね。
僕とオリビアは受付へ歩いていく。受付には見慣れない女性が対応していた。どうやら今日の受付はシンリアさんではないらしい。
「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ギルド長に1ヶ月前に色々頼んだのだが、それができているか確認しにきた。ギルド長は今日いるか?」
「ギルド長ですね。申し訳ありませんが、どちら様でしょうか?」
ほう。いつもシンリアさんなら顔馴染みなのでとんとん拍子で物事が進むのだが、今日の人はヘルプなのだろうか?よし、ここはカッコよく自己紹介でもしよう。
僕はアンオブタナイト級バッヂをカウンターの上に置く。そして魔力を悪寒が少しするくらいに干渉する様に立ち上げ、バッヂに魔力を込める。
「俺はこういう者だ」
悪寒と合間ってか、受付嬢はヒッと身を引き、少々お待ちください、とかけ早で裏に消えていった。
「ウィ、じゃなかった、ムメイ。ちょっとそれは性格悪いよ」
「•••かっこいいと思ってやったんだがな」
怖がらせてしまった。申し訳ないことしたな•••。ちょっと悲しんでいるとオリビアが肩にぽんぽんと手をやってきた。慰めてくれているのだろうか。ありがとう。ちょっと、泣く。
「ギルド長がお呼びですっ。応接室までご案内しますッ」
受付嬢が戻ってきて、顔を強張らせながら応接室まで案内してくれた。
「おいおいムメイさんよ、受付の人を怖がらせちゃダメでしょ」
応接室に堂々と座っているのはモルガンギルド長。全くもってやれやれ、という顔をしている。
「すまない。脅すようなつもりはなかったんだがな。申し訳ないことをした。気分は大丈夫か?」
「は、はひい!大丈夫です!お気遣いありがとうございます!」
彼女は気が動転してしまっている。本当に申し訳ないことしたな•••。
では失礼します、と最後は落ち着きを取り戻して受付嬢は仕事に戻った。
反省ノートに書いておこう。変な演出は場をわきまえる、と。
「はあ。変なことで問題を起こすなよ」
「ほんとだよ」
うう、言い訳のしようがない•••。
「まあ、この1ヶ月も、お前たちには何度かまた助けられたからな。そういう面では本当に感謝はしている。んで、本題だな。1ヶ月前のお前らの装備の注文、出来てるぞ。結構いい仕上がりになったんじゃねえかなー。こっちに来てみろ」
この1ヶ月もなんやかんや受注こなしてたからなあ。みんなのためになれてるんなら、よかったよかった。
1ヶ月に起こったことを小話しながら、僕たちは応接室の奥に案内される。通された場所は、物置部屋には広く、倉庫にしてはやや小さいと言った、いろいろな物が置いてある部屋だった。




