第3章 第29話
「•••」
オリビアも何か言おうとしてるけど、固まっちまっている。
「ほ、ほう?いいのか?」
平静を保って僕も喋ろうと思ったけど噛んじゃった!
「俺は貰えるものはなんでももらう派だ」
「ああ、構わない。むしろそんな称号でいいのなら安いものだ。あの規模のスタンピードを止めれるのはアンオブタナイト意外ありえんしな。誰もが認めるよ。そして、お前たちが本当にこちらの味方なのなら、それを示す所属先が必要ってのもある」
なるほどね。僕たちを味方だと、それを証明するために最高位ランクとして縛り付けておくと言うことか。なるほど、お互いにとって落とし所としていいバランスな気がする。
「なるほどな。ハンゾウにはいったが、俺は誰の味方でもない。ただ、目の前で失いそうなものがあれば、それを失わない様にもがいてるだけだ。だが、貰えるものは貰う。しかし、ランクなんぞで縛らなくとも手を貸して欲しければ手を貸す」
まあ時間があえばだがな、と一応保険をかけておく。なんせ僕は学生だからね。学業は立派な僕の1番の仕事なのだ。
「はっ、まあよろしくな。アンオブタナイトランクは本当に貴重な人材だ。ある程度の金の融通はきかしてやる。アンオブタナイトバッヂを見せてこのマドワキア冒険者ギルドに請求書を送れば金は払う。お前たちには確認するがな。まあアホみたいに遊女と遊びまくってそれを請求してくる奴もいるが、そういうのは勘弁してくれ。そいつは気ままに働くから働かない時は金は払ってない。まあ普通にして、普通に使うものならいいんだ」
「え!すっごい便利だね!」
オリビアが仮面の奥で目をキラキラさせている。でもこれあれだな。この格好でないと、素の格好でバッヂを見せて買ったら僕たちが名無しのアンオブタナイト級冒険者ってわかっちゃうね。うーん、制限付きかー。
「質問がある」
「いいぞ」
「それは不正されないのか?本当にアンオブタナイト級のバッヂだとわかるのか?誰か偽って使ったりしないのか?」
「最初の職員から説明があったと思うが、このバッヂは特殊な魔法石で作られている。お前たちの魔力を通さないと反応しない。そしてその魔法石はギルドの管轄にある。だからバッヂは複製されないようにできているし、わからないような工夫もされている。後はギルドで一旦は払う。ただ、もし不正がバレればこちらだって舐められちゃあ不愉快だ。全力で探しにいって地獄を見せるだけだ」
思想怖すぎだった。でもまあそこまでしたら不正なんてしないか。シンリア嬢が後ろで昔はありましたけど、今はギルドの報復が怖すぎて誰もやっていませんよ、と補足が入る。人材はたくさんいるギルドだ。その気になればパーティを何組も作って探し出すのだろう。後はギルドに連れてきて好き放題、か。うん。絶対やったらダメだ。不正、ダメ、絶対。
「まあ金銭的な余裕があるのはありがたい。俺たちも紙みたいな装備だからな。また考えさせて貰うよ」
「それならお前らが討伐した魔物たちの素材で良いものを作ってやる。中々の上位種たちもいたからいい装備が作れるはずだ」
「ほう、それは助かるな」
「やったー!」
「そんなもんこの国を救ってくれたことに関したら安いってもんよ」
「じゃあわがままを言わせてもらおうか。俺は防具だけで良い。顔を覆えるフードが着いたローブと手から腕を覆える手蓋が欲しい。手蓋は魔力親和性が高い布だけのようなものがありがたい。オリビエは何がある?」
「わたしも防具だけかな。胸当てと籠手と足につけても邪魔にならない防具が欲しいかな。強度は欲しいけど、どちらかというと動きやすさを重視してもらいたいかも」
「細かい注文だな。まあ、了解した。良いのを頼んでおくよ」
やったー!とオリビアと喜び合う。もちろん僕はミステリアスにクールに喜び合う。あれ、そう言えば頼むってどこに頼むんだろ?
「モルガンギルド長、ちなみに装備はどこに依頼するのだ?」
「それは•••いや、よしておこう。お前たちのことは頼りにしている。だが、まだ完全に信頼しているわけではない。また頃合いを見てそう言うのは伝えてやろう」
まあ、確かにそうか。モルガンさんが懇意にしている武具屋、あるいは職人に違いないはずだから、もし僕らが裏切ってここのギルドを叩くならその供給先も潰すと考えられてもおかしくない。昨日今日の国を救ったくらいで全信頼をおくのはまだ早いってわけだ。
モルガンさんは物事をはっきり言うが、それに全て理由がちゃんとある。だからこそこちらも信頼されるには何をすれば良いかが明確にわかるし、嫌な気はしない。さすが荒くれ者の長だな。無法者たちをまとめるために、理にかなっている。
「ふっ。モルガンギルド長の言いたいことはよくわかる。それなのに感謝は忘れない。あなたは良い男だな」
「やめろや気色悪い。後は招集がかかればアンオブタナイト級は絶対に集合だ。もちろん任務やクエストや用事で外に出ている時は仕方ない。だが今回みたいに招集が町でかかれば即座にギルドへこい」
「もちろんだ。だが、時間があえば、な」
これだからアンオブタナイト級になるやつは扱いにくいんだよ、素直にはいわかりましたでいいんだよ、とモルガンさんは愚痴をこぼす。たぶん冒険者でそんな人いないんじゃないかなあ?そう言う忠誠心みたいなものがある人は騎士団に行く気がするぞ、モルガンさん。
それからいくつか説明を受け、僕たちはアンオブタナイト級のバッヂをもらい、初めの魔力をそれぞれ通した。これでこの魔法石は僕たちそれぞれの魔力にしか反応しなくなったらしい。その魔法石の色は黒。うーん、渋くてかっこいいね。
そうこうして、僕たちはアンオブタナイト級冒険者となったのだった。




