第3章 第28話
午後は武芸の実習だ。いつも通りありえないほどの鍛錬をこなして今日も体がバキバキになって終了だ。でも一体なにをもって体を鍛えているのか、漠然としていたけど魔王国、帝国の脅威を考えるともっともっと鍛えなくてはと思う。
まあ、とりあえずは冒険者ギルドだ!
どんな報酬がもらえるのだろうか。どんなものか、想像できない、わからないものを貰えるということは何が入ってるかわからないプレゼントを開けるようでわくわくだ。初めての給料をもらうというのはこういうことなのだろうか。さて、オリビアと秘密の稽古場に行って冒険者ギルドへ行こう。
「オリビア!」
「あ、ウィル!そろそろ行く?」
「行こ行こ!」
「あれー?君たちまだ稽古するの?」
武芸の実習が終わり、オリビアに会って稽古場に行こうとしているとちょうどアディも帰り道だったらしい。
「えーと、まあそんな感じかな!でもアディも午後なんだかんだ忙しいんでしょ?」
「そうなんだよねえ。君たちと放課後のスクールライフを楽しみたいところではあるんだけど、いかんせんなんやかんや用事が入ってね。無駄なようで無駄じゃないからちょっとお疲れさ」
両方の手のひらを上に向けて、やれやれといった仕草をする。
お互いに、やるべきことがあるのだろう。アディも一般枠で特撰クラスに入ってきた。そこには何かしらの身内のしがらみがあるのかもしれない。
「また今度、みんで遊ぼうよ」
僕は提案する。でもこれってなんだか行けたら行くみたいなやつになりそうだな。
「いい考えだね」
アディもそれを思ったのか、少しおかしな表情をして答える。おっと、いかんいかん。早く準備していかなきゃ。昨日の今日だから今日は早く帰りたいんだよね。
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一瞬、僕とオリビアはそれぞれの寮に寄ってさっと着替えて秘密の稽古場に集合する。
冒険者用の服を着て、仮面をつける。
「ふっ、どんな報酬があるか楽しみだな」
オリビアからのちょっとした冷たい視線を受けるも、オリビアももう諦めたのかそういうものとして接してくれる。
「まあいいんだけど、でも気になるね!お金なのかな?お菓子いっぱい買えるかなあ」
なんて可愛い欲なんだ!!
でも確かに、うーん。お金があったら何を求めようか?お金は必要だなあと思ったけど、色々代替できたら今必要なものといったものがぱっと思い浮かばない。まあ備えあれば憂いなしだ。お金は持ってても困りはしない。
とりあえず、向かうか!
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僕らは検問を出てから、冒険者ギルドは向かう。冒険者ギルドへ近づくにつれ、騒々しさが増す。ギルドの目の前までくると、その騒々しさの出どころがギルドの中そのものだとわかる。ギルドで何かやってるのかな?
ギルドのドアを開けると、人がパンパンに詰まっており、みんな片手にお酒を持ち、笑い合い、ときに泣き笑い、ときに怒りあいしている。どんちゃん騒ぎとはこのことだろう。
「おい!主役の登場だぞ!」「遅れて登場するね〜」「ほらお前も飲め飲め!」「馬鹿騒ぎじゃーーーい!!」
祭り騒ぎにドアのところで立ち尽くしていると、たくさんの冒険者に囲まれる。ちょちょちょちょ、なになに。僕まだ成人じゃないから飲めないよ。
「ちょっと、待て。なんの騒ぎだ?それと、俺は酒が飲めん」
ほら、オリビアなんて怯えて僕のそばにぴとっとくっついてるじゃないか。うん、可愛い。ずっとそのままでいて欲しい。
「すみません、お騒がせしてます。でもこれは、あなたのせいでもあるんですよ?」
人をかき分けて昨日の受付のお姉さん、シンリアさんが出てくる。僕なんかしましたっけ?
「あなたがスタンピードを防いでくれたって聞きましたよ!それでみんなスタンピードの打ち上げです!もうどんちゃん騒ぎで困ってますよー」
僕のせいっていうのがわからなくて黙っていたら、シンリアさんが冗談の様に教えてくれる。困ってるという割に、そこはかとなく嬉しそうだ。
ってことはスタンピードの帰りからそうだったってこと?1日中この人たちは騒ぎまくってるのか。冒険者、体力お化けだ•••。まあでも、シンリアさんも喜んでいるのは、それはやっぱりみんなの命が無事だからだ。僕も、なんだかホッとする。冒険者にはなりたてだけど、ああいうことが小さい規模であれ、今回みたいに大きな規模であれ、命の危険にさらされる職業であることは間違いない。無事に帰ってきて打ち上げをするのは、命がある喜びなんだろうと、僕も思う。そう思うと、少しはみんなのために頑張れているのかな。
と、それもいいんだけど、僕たちの報酬を受け取りたいんだよね。
「俺も、みんなが無事でよかったと思うよ。それよりシンリア嬢、俺たちは報酬を受け取りに来た」
「ふふ、報酬ですね。それではこちらにご案内になりますので来てください」
シンリアさんに僕とオリビアは案内される。それは前に案内された受付の横にある応接室だ。昨日今日で懐かしい。
ドアを開けると、先に人がいたのか、誰かが座っている。あれ、この人見たことあるぞ?
「昨日はご苦労だった。本当に助かった。おっと、紹介が遅れたな。ここのギルド長をしているモルガンだ」
あ!スタンピードから帰ってきたときに、職員代表みたいな感じで喋ってた人じゃん!
やっぱりギルド長だったのかー。
改めて見ると、職員のズボンは履いているが上着はTシャツ1枚と言った格好をしている。筋骨隆々であり、恐らく既存の職員の制服が着れないのだということが予想できる。歳は中年くらいだろうか?ただ、顔つきは厳つく、鋭い眼光をしている。何よりも右額から鼻を通って左下眼瞼にかけての裂傷痕みたいなのが、より一層物騒な印象を与える。風格がいかにもボスって感じだ。
「ふ、やることをやったまでだ」
「確かにな。だが、そのおかげであいつらはここでどんちゃん騒ぎができている。全滅してお通夜になると比べれば大違いだ」
僕とモルガンギルド長は軽口を叩き合う。モルガンギルド長は顔が厳つい、けどちゃんと冒険者のことを思っている気がする。優しいお方、な気がする。
「そういえば報酬だったな。金に関しては今魔物の素材を還元してるところだからすぐにはやれん。なんせあの量だからな」
そうかあ•••。お金がすぐに必要ではなくなったから別に急にいるというわけではないけど、貰えるものが貰えないと言うのは普通にショックだな•••。僕は貰えるものは貰いたい派なのだ。
「まあ、だから今やれるのはランクについてだな。本当はあれやこれあったんだが、今回のは明らかに異常な手柄だ。例外的に、お前らを称えるということも含めて、お前らのランクにはアンオブタナイトランクを授ける」
ふぁ!?ガティ!?




