第二章 第三話
どうも、父様との修行で人格崩壊しかけた元引きこもりです。その後も父様との修行を続けておりますが一向に敵いません。
その度に「甘いっ」とか「予想が足りんっ」とか「動きが単調すぎるっ」とか言われます。ただ、最近は鍔迫り合いも多くなりました。でも僕はいまだに身体強化をふんだんに使っている状況で、父様はそれに加えて訓練用の身体強化と片手のみ。変態でしょうか?
それでも日々前進しているのか父様は僕に身体強化の魔法を解いての練習も混ぜてするようになりました。曰く、身体強化の魔法を解くことによって無茶できないので動きの無駄が減ること、そして基本的な体力のみで身体強化を使ったような動きになること、そして身体強化を使ったときにより理想的に動けることなどを目標としているとのことらしい。
これは成長ということでしょうか?その答えはこだまが帰ってくるだけでした。
そして副作用として、僕は父様との修行で次はどういう風に動くかどう言う風に対処するか、また他に手立てはないかなどを目から血が出るほど考えていると日課の仕事や鍛錬以外は家に引きこもることとなってしまいました。
そうです。改めまして、元引き篭もり現引き篭もりのウィルです。
でもこの引き篭もりは”あのときの”引き篭もりとは全然違う。前進している証の引き篭もりだ。誰かを蹂躙する力ではなくもう誰も傷つけさせない、そんな力のために。
今日もしっかり修行してしっかり身体を休めるぞい。
ホグン村に来て狩に畑仕事に稽古にと色々目まぐるしいことがあり、いつのまにか月日も一年が経っていた。ホグン村の生活にも慣れ僕もいつの間にか7歳になっていた。小等学校に通う年ではあるが生活に慣れつつある中でそんな余裕はまだない。しかも父様に稽古をつけてもらっているので小等教育を受けるくらいに意味のあることをしてる、と思いたい。でも魔法に関しては世間でどうなっているのか学びたい気持ちもある。まぁ、でも今の生活がとても順調なのでとりあえずは今のことを頑張るのみだ。
そしてなんと、稽古で父様と打ち合えるようになってきたのである!これは成長といえるでしょう。そしてそんなある時、稽古中に父様が改まって言ってきた。
「ウィルよ、お前は身体強化なしでの身のこなしも、剣の筋もなかなかいいところまで成長した。私の今の状態ではウィルにとって満足いかない日が来るだろう。そこで、だ。今度からは身体強化全開で、そしていつもの状態の私に一本入れたら次のステップへ進もうではないか」
「次のステップ、ですか?」
「ああ。でもなにがどうなるかは、とりあえずは私に一本入れてからだ。まあ、期待してるぞ」
ニカッと、悪戯そうな悪巧みを考えている子供のような屈託のない笑顔を父様はする。できるならな、と案外に言われてるようで闘争心がわくではないか。
了解了解。よーーーーし、父様よ。目に物を見せてやろうぞ。その次のステップとやらに今日、僕は進む!
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森の中で木剣と木剣のぶつかり合う音が鳴り響く。その数はもう何度目かになるかはわからなく、鳴り響く音はなかなか勝負が決しないことを示していた。
「ハァ、ハァッ、、、!」
「ウィルよ!なかなか諦めが悪いな!!今日中に一本入れる気満々なやる気が滲み出ているぞ!!!だが、私はそういうのは嫌いじゃあない!」
くそっ!後一手、後一手がなかなか届かない!
父様に隙を見せないように手数を多く繰り出しているが故に父様は防御に回り、こちらも攻め手を決めかねている。足元への攻撃、武器を構えていない左側の死角からの攻撃、身体強化任せの正面突破、なにからなにまでぎりぎりで捌かれる。
そしていく度かの鍔迫り合いの中、身体強化をしてるにも関わらず僕の体力はこのままでは父様より先に底を尽きそうだった。
このままでは僕に一本は決めれない。攻めていても確実な一本は無理だ。だから、この方法は使いたなかったけど、これが僕の今の父様を超える方法だ。
僕はさっきまでと同じく攻め続ける。そして敢えて、袈裟斬りをした後に今まで見せていなかった左脇腹の隙を見せる。もちろん疲れもあるし父様からみたその隙はどう思ったかはわからない。僕の拙い演技力で誘いの手だとバレバレだったかもしれないし、普通にただの隙に見えたかもしれない。ただ、父様は強い。だからこそそれが罠であっても、ただの隙であっても突けてしまうのだ。故に父様はその隙を逃さず左一文字の一手を加えてきた。
そして僕はその一手に、迷わず踏み込んだ。
父様は絶対に罠であろうと隙に飛び込んでくると思った。その一手は予想できた一手だ。僕が勝つためにはその一手を捌かなければならない。しかし僕が防げば父様もまた防御に意識を振り分け振り出しにもどる、そしてそのまま父様の一手を防げなければ僕の負け。良くて振り出し、悪くて負け。だからこその隙をつく父様の一手。
僕は負けてもいいと思った。そして、負けてもいいから勝ちに貪欲になろうと思った。
僕は袈裟斬りの力を利用して身体を1回転。そして父様の左一文字の剣が振り抜かれる前に逆袈裟斬りを父様の喉元に、突き出した。
もちろん父様の木剣は僕の脇腹の直前で止まっている。しかし、僕の木剣も父様の首元で止まっている。
「ほう?」
父様は興味深い顔をする。
「父様、これはどういう判定になるのでしょうか?」
そう言うと、父様は目を見開き次にとてつもなく笑った。
「はっはっはっはっは!なるほど!相打ちか!!
確かにこれが戦だとして、そして私が大将であった場合、この相打ちは両軍の勝敗に多く関わるだろう。そうなった場合、これは見事な一本だ。戦況を踏まえ、自らの実力を踏まえた一本、やるじゃないかウィル」
父様はそう言い脇腹に寸止めしていた木剣をすっと引き帯剣の構えになる。その瞬間、僕はどさっと地面に膝をつく。息も絶え絶え、ようやくとれた一本、そしてなにより稽古だと言うのに鬼気迫る父様のプレッシャーがとんでもない圧力だった。それが終わったことによる安堵、肺の空気が全部吐き出されるほどのため息を僕はついた。
「はああああああ、めっちゃ疲れたーーーー」
そして僕は大の字に寝転んだ。
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涼しい風が涼しい風とわかるくらいに一息ついたとき、空が快晴でこんなにも青かったのだと大の字に寝転んで実感したとき、父様が口を開いた。
「ウィルよ、よくやった。まさか今日中に一本とられるとは思わなかった。ウィルの日々の勤勉さがよくわかる一撃だった。だがな、ウィル。それは最後の手段にとっておけ。ウィルの覚悟はわかった。だが捨て身だけは最後にとっておけ。なぜだかわかるか?」
父様は諭すように僕に語りかけてくる。父様の言葉に僕も頷く。そう、僕だってこんなことは最後にしたい。
「父様の言うことに当てはまるかどうかわかりませんが、僕もこんなことは嫌です。やってみてわかったんです。死ぬのはまだ嫌だな、と。そして僕には家族がいるから、それで死んでみんながもし悲しんだりしたら、僕は嫌だなって、思ったんです」
「わかってるならよろしい。私は家族がいなくなるのは嫌なんだ。戦いは重要だ。決断をしなければならないことがある。だからこれは私のエゴだ。ウィルよ、長く生きてくれ」
ありがとう父様。その気持ちだけでとても嬉しいよ。だから僕は元気よく「はい!」と応えた。
「よし!ウィルよ!少し厳粛な話になったな。私の気持ちは受け取っておいてくれ。そしてウィルが一本をいれたのも事実!今日はこれで終わりにして明日からステップアップだ!」
いつもの笑顔な父様に戻る。そう!そういえばそんなこと言ってたじゃん!
「父様!次のステップってなんなんですか!」
「気になるか?教えてやろう、、、それはヴァルヴィデア剣術の先、真ヴァルヴィデア流剣術の稽古だ!!」
真ヴァルヴィデア流!?




