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第3章 第24話 【魔力の適性】

 学校に行くと、昨日のスタンピードで大盛り上がりだった。


「ウィル君聞いた?昨日スタンピードがあってビービー外がやかましかったじゃん?あの後誰も知らないぽっとでの冒険者が解決したんだって。しかも20くらいの多重魔法陣を何個も同時発現させた異次元ぶりらしいよ。やばくない?」


 う、それ僕です。


「げ、現実味が無さすぎてあれなんだけど、アディ、それってどんくらいやばいの•••?」


「めえええええええちゃくちゃやばい!って感じだよ本当に。ウィル君がいう様に現実味がないくらいやばい。今安定して発現できる魔法陣は公にはまだ20に行かないくらいでしょ?なのにその冒険者はそれ以上を叩き出した。噂では()()なんじゃないかって言われてるよ」


 おとととととととと。ハンゾウの言う通りになってきてるじゃないの。ま、まあ僕の冒険者の姿は素顔を隠してるし大丈夫かな?このままミステリアスで正体不明だけどマドワキアの味方、を貫こう。


「どうやら2人組らしいんだけど、なんかもう1人もやばくて、そっちは剣の使い手らしいんだ。けどもう技もあるわ、切れ味も抜群だわでキングゴブリン級でもバターの様にずんどこずんどこ溶かされて行ったらしい。やばくない?いやー、世の中にはとんでもないやばい人がまだまだたくさんいるんだねえ。勉強になったよ」

 

 アディが興奮気味に怒涛の話題ラッシュだ。アディってこう言うことに興味があったことにまず驚きだ。いや、待てよ。アディは無駄が大好き変態人間だった。おそらくこの手の噂話は逆に大好物なのだろう。


「うん、やっぱりスケールが大き過ぎてわからないよ。とりあえずやばいってことだけはわかったよ」


 とりあえずやばいらしい。まあでもこれで、スタンピード(これ)くらいのことなら僕とオリビアでなんとかできそうというのがわかったかも。ただ、他の人がいたり、街でこの規模が起きた時は対応することは全然難しく思う•••うむ、自分の魔法レベルの段階はおそらくこの辺なのだろう。範囲も威力も申し分ないけど、後はやっぱり細かな魔法制御が足りないっと言ったところだ。魔力操作をしっかりと鍛錬していこう。


 さて、今日はいよいよ魔法分野の授業で魔力の適性の検査がある。魔法分野でも実技があるのでそれに向けての検査だ。魔法分野の実技も特撰クラスの恩恵で、それぞれに合った指導が入るためにわかりやすくまずは適性を見ましょうと言った感じである。家でやった簡潔的なやつは全属性の適正だったけど、授業のは本格的なやつだ。結構昔だったし今どうなってるんだろ?楽しみで仕方ないね。


 ▼


「では、適性検査を行う」


 楽しみな時間というのは来るのが遅く感じて、来てしまえば今まで待った時間というのは記憶の彼方に飛んでしまうものだ。前の授業はすっ飛んでしまった。記憶なし。申し訳ない。カモン魔法分野の授業、待ってたぜ。


 僕たち特撰クラスは今、適性を調べるための教室に来ている。特撰クラスの担任のノーマン先生が指揮をとっている。そのノーマン先生の横には胴体くらいの大きさの板が画架のような三脚に立てかけられている。


「これが適性を測る魔道具、”魔力見える化君”だ。この原理がわかるやついるか?」


 みんながすっと手を上げる。これだけでも特撰クラスが優秀であり、見聞の広さが窺える。自分の家でもこの魔道具を普通に扱っていると言うことだろう。僕も引き篭もりのときにやったけどすごい簡素な奴だった。こんな立派なのは初めて見たぞ。ちなみに名前は本当にこの名前だ。売り出した企業のネーミングセンスには脱帽せざるを得ない。


「よーし、さすがは特撰クラスだ。じゃあオリビア、答えてみようか」


「はい!この魔道具にはいくつかの不完全な魔法陣が組み立てられています。その不完全な魔法陣が魔力を通すことで、その術者の親和性に引っ張られてどれかの魔法陣が発現する仕組みになってます。そしてその発現された魔法を見てどの魔法が適正の判断材料となります」


 魔力には無意識下の再現性がある、と言われている。魔法を勉強したり、使っていたりすると無意識下に魔法陣を理解して魔力がその魔法陣につられて発現することがあるのだ。細かく言うと無詠唱魔法はこれを利用している。魔法陣のイメージとそれを魔力による具現化だ。この見える化君もこの再現性を利用しており、不完全な魔法陣が無意識下でどれかを補填し、魔法が発現する仕組みになっている。見える化君の魔法陣はそれぞれの4大元素に基づいた魔法陣が描かれていて、初級魔法を元にした魔法陣であるが、それほどしっかりとした現象が発現されるわけではない。火がぽっと出たり、水がちょろっと出たり、風が1風靡いたりとかそんな感じだ。ただ、脳が無意識に認識するほどの明らかな属性魔法とわかる簡単な魔法陣でしか得られない現象というのが制約にはなってくるが。


 いやー、オリビアの声ってはきはきしてて聞き取りやすいんだよね。シャーリー姉様も声が大きいってわけじゃないのに声がよく通っていたけど、美人の特徴なのかな?


「良いな。文句ない答えだ」


 なるほど。僕が昔使ったなんちゃって見える化君は魔法発現はごく微少だったけど、これはこれだけの大きさだからその分ちゃんと適性魔法が見えるのか。おっと、より楽しみになってきたぞ。もしかしたら僕も何か特性魔法が出るかもしれない。


「まあそんな感じでこの見える化君に魔力を通すだけだ。説明が長いのも嫌だし、さっそく始めようか。順番に読んでいくからよく聞いとけよー。よし、じゃあアーサーから」


 僕が言うのもなんだけど、この先生アーサー殿下のことを呼び捨てにするんだ。平民でも特撰クラスになれる実力主義の平等を謳ってる王立学校の先生の鏡だね。しかも、多分アーサー殿下にはその対応で正解だ。


 アーサー殿下はいつも通り何にも動じないようなクールな表情で見える化君まで歩いていく。なんかみんなの前に歩いていくアーサー殿下は絵になるなあ。これが王の素質ってやつ?


「いつでもいいぞー」


 アーサー殿下が見える化君に対して手をかかげ、魔力を込める。殿下の魔力は赤色の魔力•••見える化君の魔法陣に殿下の魔力が満たされ、発現した魔法は火の魔法だった。真っ赤に燃える、力強い適性の結果だ。


 アーサー殿下らしい、と言ったらおかしいだろうか?アーサー殿下は心がぶれない熱い意志を持ったお方だ。赤く、燃え上がるその適性は殿下らしいと僕は思った。また、見える化君は適性がある元素は複数発現することがある。火単体っていうのも筋が通っている殿下らしい。


「お、アーサーの適性は火単体だな。トップバッターを務めてくれてどうもありがとう。まあこんな感じで適性がなんとなくわかる。よーしじゃんじゃん進めていくぞー」


 どんどんと他の生徒が呼ばれて行き、それぞれの適性検査が進んでいく。まあ10人しかいないから早いんだけどね。お、サムエルなんとか君は土系統の魔法が適性なのか。偏見の塊である魔法適性性格診断みたいのがあるんだけど、土系統の人ってお堅いイメージがあるって言われている。サムエルなんとか君はシャーリー公爵令嬢に不届をした僕を粛清しようとしたくらいの人だからね、やっぱり土系統の適性の人はお堅いのかもしれない。


 残るは僕とオリビアとアディの一般枠3人となった。


「じゃあ次はウィルだな」


 ついに僕の番!


 僕は見える化君の前まで歩いていく。さあどんな結果になるんだい?


「いつでもいいぞー」


 僕は見える化君に手をかかげ、魔力を流していく。魔法陣が僕の魔力で満たされていく。


 あ、多分これ、家でやった時と同じな奴だ。


 魔法陣に魔力が満たされた時、全ての魔法陣が輝く。しかし、そこに魔法は発現されなかった。


 やっぱり同じ結果になっちゃうかー。


「魔法発現しそうだったのにしなかったぞ」「どうなっての?」「壊れた?」「白い魔力って何気に初めてかも」「これ適性なに?」


 周りのみんながざわざわ騒つく。


「ウィル君、君は•••」

 

 アーサー殿下は何か含みのありそうなことを言う。な、なにかありました?その言葉は僕の心がざわざわしちゃうぞ。


「これは、珍しいな。ウィル、君の適性は全てだ。こんなこと滅多にないのだがな」


 適性が全属性の結果の場合は全ての魔法陣が反応して何も起きない、という結果になる。魔法陣が全て反応すると、やはり干渉点が大きすぎてそれぞれ反発しあって発散してしまうのだ。


 僕の適性は変わらず全属性、よしよし。それだけ魔法の理解はまだ深いままってことだな。よかったよかった。


 その後のオリビアも全属性の適性となり、あのノーマン先生がは、はあ?みたいな感じで多少驚いてて面白かった。クラスのみんなは金色の魔力を見てちょっと興奮してたね。オリビアの魔力、すごい綺麗だよね。わかるぜ、その反応。


 でも、この適性検査で1番摩訶不思議なことが起きたのはアディだった。


「では最後アケディア。やってくれ」


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