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第3章 第13話

「ん?はーい」 

 

 次の日の朝。ご飯を食べてから朝の自主練をして部屋に戻って学校が始まるまで待ってると、こんこん、とドアをノックされる。


「ウィル君、手紙だよ」


 扉を開けて出てみると寮監さんから1通の手紙を渡される。ありがとうございますと言って受け取ると、では、と寮監さんは帰っていく。


 誰からだろう?宛名を確認。


 父様からだ!


 どんな返事だろうか。どれどれ。


 よく見たところ、新しく始まった生活の労いの言葉と、まだもう少し都市マドワキアにいると言うことだった。そして父様から3日後に会おうと言う返事だった。これはなんて間が良いんだ。手紙の残りはその会う場所が書かれていて締めくくられていた。時間は書かれていなかった。こっちで決めていいってことかな?

 

 いやー、父様と稽古できたらいいなあ。魔力の効率化、あとはもう1つ()()()()()()があるんだよね。さっそくオリビアに話そう。



「て言うことでさ、3日後に父様と会うんだ。オリビアどう?」


「ほんと!?もちろん行くよ!うわあ、楽しみ」


 アディは先に校舎にいってもらい、僕とオリビアは校門のちょっと離れたところで2人きりで話し合う。悪いことを話してるわけじゃないんだけど、僕たちは平民だし、その師匠誰?とか言われたらなんか説明がめんどいのでこうやってちょっと秘密に話している。

 

 でも、本当に楽しみだ。父様と稽古できるかなあ。時間があるならあの秘密の稽古場にみんなで行きたいな。


「3日後は学校も休みだし、ちょっと融通も聞かせて昼くらいからでいいかな?」


「いつでもいいよー」


 よし、じゃあ昼からにしようかな。手紙を夕方に出して次の次の日の朝に返事が来たから、送れるのが半日くらいって考えたらまあ今日出して間に合うんじゃないかな?間に合うと信じよう。


 校門を通る生徒の数が減っている。そろそろ授業が始まる時間かな。父様とのおおよその予定も決まったし、そろそろ行きましょうかね。


 そして僕とオリビアは校舎に向かい始める。ちょうど授業開始の予鈴が鳴り響く。


 お、ちょうどだ。



「まずは現在までの人類の歴史と、国の歴史について学んでいきましょうか。そう言った成り立ちを知ることでより深く、物事を理解できるようになりすからね。そうすればただ記憶するだけよりも記憶に残りますからね」


 1限目は一般教養の社会の時間。人類の成り立ち、か。母様から色々種族の種類については聞いたけど本当に概要しかしらないからなあ。ここの受験でも勉強したけど正直記憶しただけというか、あんまり理解できてないところも多いんだよね。他の貴族からしたら当たり前のことかもしれないけど、僕としては改めて学びたい領域でもあったところだ。


「現在の人類についてはみなさんご存知の通り、私たち人間種、亜人種、魔族がいます。人間種は私たち。亜人種は獣人族、エルフ、ドワーフなどがいますね。今年の特撰クラスにおいては人間種だけですが、この学校にはたくさんの種族が通われています。種族関係なく通えるのもこの学校の良いところですね。亜人種については教科書にも他の亜人種についても書かれていますし、もっと細かく知りたければ図書館にもそれぞれの種族のことについて色々な事が書いた書物がありますからそちらもみてみるといいかもしれませんね。授業ではあくまで歴史について、ですからね」


 はえー、この学校には亜人種の人たちもいるのか。登校時にはあんまりすれ違わないし、一般枠の寮でもまだみたことないから数自体は少ないのかな?まあそもそも、学校の変化に目まぐるしかったり朝の稽古も見つけたりと、初動が自分のことで忙しかったから周りを見る余裕がなかったてのもあるけども。


「亜人種やエルフ、ドワーフには様々な長所があります。ではなぜ、その中で現在において人間種が世界を総ているのでしょうか?」


 あ、それ僕も気になってたんだよね。教科書的には賢さと繁栄力って言われてるけど。


「これもみんなが知ってる教科書的に言うと賢さと繁栄力ですね。但し、その根底にあるのは人間の弱さです」


 人の弱さ•••。みんなも男女問わずそんなに私たちは弱くない、という気迫が漂う。でも、みんなも特撰クラス。根本を理解し、だんだんと聞き入る。


「私たちは弱いです。獣人族のように飛び抜けた運動センスはありません。そしてエルフのように長寿でもなく、ドワーフのように器用なわけでもない。ただ、私たちは弱いからこそ、他を抜くために考え、知恵を絞り出し、継承していき、そして負けぬように手を取り合ってきました。そう言った先人の方々の知恵と技術が昇華され、脈々と受け継がれていってます。だから我々は偶然ではありましたが、魔法を見つけ、魔力を見つけることができたのです。そして今ではどこよりも魔力の使い方、魔法の使い方は他の種族よりも秀でており、そのおかげで他種に劣らず、この世界を統べる統率力を持つことができたのです」


 他種に負けぬように努力し、尚且つ手を取り合えたからこそ魔法という偶然に導かれたという事か•••。


「まあ、これは人類種寄りの解説になってしまいますけどね。世の中には亜人種を差別する方がいます。人間種が1番だという選民思想の持ち主がいます。そして中には人間種の中でも差別をする人がいます。しかし先ほども言ったようにみんなそれぞれに長所があります。誰がすごくて誰が偉いなどはないのです」


 当たり前のことだけど、当たり前じゃないこと。みんなそれは知っているのだ。だけど、意地とかプライドとか偏見とか、そう言ったものが成長するにできて忘れられてしまうんだ。それが、争いになるんだ。

 初心は絶対に忘れちゃいけない。僕だって最初は部屋から出ることすらできなかったんだ。あの惨めな気持ちを、僕は忘れない。だからみんなのために頑張れるんだ。


「先生、質問いいですか?」


「どうぞ、アケディア君」


 一旦区切りがついたところでアディが質問をする。


「魔力の使い方が、って先生はおっしゃってましたが、それについては魔族の立ち位置はどうなってるんですか?」


 ああ、確かに、それどうなんだろう。と思った時、クラスのみんなから威圧的な視線がアディに向けられる。なぜ?当のアディは涼しい顔だ。母様が言ってたけど魔族に対する考えってのは、ここまで特殊なのか。アーサー殿下は魔族についてどう思ってるんだろう?まあそれはいつか聞こうかな。


「その質問は難しいですが、何が難しいかというと、魔族の立ち位置自体が難しいのです」


「というと?」


「魔族は魔力暴走の成れの果て、()()を同じ人類と捉えていいのか、はたまた別の何かか」


「おや?でも先生は先ほど魔族は人類と仰ってませんでした?」


「もちろん、魔族だって言葉をしゃべり、社会を形成しています。だから人類に間違いはありません。そして別と捉えてももちろん、いけません。ただ、それには難しい壁が、私たちと彼らの間にはあるのです」


 だからその質問については、ちょっと断定する事はできません。と先生は答えた。


「他に質問ある方はいますか?」

 

 それから何人か質問がポツポツと出てくる。


「ウィル君はどう思う?」


「魔族の魔法について?うーーん、僕もずっと村にいたからよくわかんないんだよね。でも魔力は誰よりもすごい種族なんでしょ?いやー、そんな種族の魔法はすごいと思うけどね」


「そうだよね。僕は魔族の魔法を見た事があるんだ。だからね、さっきの人間種が1番魔法の使い方が上手い的なことにちょっと気になってね。ウィル君、君は偏見とか関係なく答えてくれるから助かるよ」


「そうかな?単純にそういう教育を受けていないからね。あれ、アディに言ってなかったっけ?僕って魔法について考えるのが大好きなんだ。だから割とそれに重きをおいて考えちゃうから、他のことがあまり気にならないのかも。だからアディ、その魔族の魔法の話詳しく」


「はは、ウィル君はやっぱり面白い」


 僕は魔族の魔法は見た事がないんだ。だから是非ともどんなものか知りたいじゃあないか。


 それから先生と生徒の質疑応答を横耳にアディから魔族の魔法について教えてもらった。色々聞いた結果、魔族の魔法を1言で表すなら、規模の大きな魔法といったところだった。ただ、規模の大きな魔法というのをただむちゃくちゃにド派手な規模の大きさの魔法と、綿密に作り上げた繊細な規模の大きい魔法とするなら、後者が魔族の魔法だ。父様の剣だって派手に見えるけど、その実は徹底的な基礎とそれで昇華された技でなせる剣だ。魔族の魔法の質も聞く限りではそれに似ている。大量の魔力を持つが故の高度な魔力制御と、それを織りなす魔力構築による大規模魔法。うん、全然人間種より凄そうだけど大丈夫?


 魔族の魔法について、魔力制御ができるからこそ多重魔法陣の干渉リスクも減らせるんだろうか。魔力の干渉点も重要だけど、そもそもの魔力の通しの制御も重要と言うことなのだろうか。まあどちらにせよ、やっぱり当分は魔力制御の修行かな。


「ありがとうアディ。すごい面白かったよ」


「こっちこそ。ついつい喋りすぎたよ、授業中なのにね」


 ちょうど先生も質疑応答を終えたところらしい。それからはエルフについてやドワーフについて亜人種の歴史にざっと広く軽く触れたところで授業終了の鐘の音が鳴った。

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