第3章 第12話
「はあはあ、ウィル、急かしすぎだよ•••稽古場はここ?」
朝よりもちょっと早く走って、朝見つけた秘密の稽古場にきた。僕もちょっと早くしすぎたかな、結構息切れする•••。やっぱり、身体強化なしでも1時間走りっぱで息が切れないくらいにしたいなあ。当分の目標は全力疾走でここまでこれること、尚且つそれほど息切れしない事かな。
乱れた呼吸を戻すために、雑に取り入れられた肺の空気を全て吐き出す。いつも以上にゆっくりと時間をかけて空気を出す。
——————ふぅ、よし。これあれだな、不規則になった呼吸をいかに早く取り戻すと言った特訓にもなるなこれ。
「ここが秘密の稽古場だよ。今朝見つけたんだ。見つけたてほやほやの場所さ。いそいだのはね、急ぐと呼吸を整える特訓にもなるんだ」
「後のは絶対今思いついたでしょ」
オリビアも息を整えると共に、お互い稽古のために柔軟をする。
「オリビア今日どうだった?」
「総論ばっかりだけど、真新しいことばっかだった!魔法の授業だって、確かに勉強してきたことばかりだったけど、今まで交わったことのない人に教えられると違う見方のようで考え方が広がるって言うか、なんだか新鮮だったよ。これからにもっとわくわくしてる!」
うんうん。わかるよオリビア。新しい物事が始まっていくっていう感覚は全てが新鮮な刺激だよね。
「武道も師匠とウィル以外の人が見れて良かったし、指導もちゃんとしてて良かったけど、なんだか物足りなかったかな。やっぱり師匠とウィルとする稽古がまだまだ刺激的だね」
うーーーん、と伸びをするオリビア。
確かになあ。父様の強さが尋常でない事がさらに浮き彫りになる。父様から返事があったら色々聞きたいこともあるし、会ってみよ。その時に稽古できたら稽古をつけてもらおうかな。
「ウィルはどうだったの?アディだけと同じグループだよね」
「そうそう。アディはたぶんすごい強いよ。でもなあ、なんだか掴めないやつであの組み手の時も全然本気を出さなかったんだよね。まあでも戦い方が独特だから、オリビア的に言うと刺激にはなるかな」
そうなんだよなあ。アディは絶対強いはずなのにのらりくらりと適当なんだよなあ。まあでも、他の人との稽古はそれだけて学びがある。騎士団の教えも聞けるしこれはこれで超楽しい。
「さて、体も温まったね」
僕たちは立ち上がる。いつものようにお互いに合図はなく、なんとなしに距離を保ち、構えに入る。
オリビアは自分の細剣を模した木剣を持っている。この学校は訓練用に自分の武器を模した訓練用の木の武器をくれる。とても太っ腹な学校だ。
とりあえず、僕は魔力の明確なオンオフ、魔力の繊細な管理を意識。
僕はいつもの魔力場に干渉させる猫騙し、ではなく、現在の魔力を1とすれば一瞬で100にするような明確な差のある魔力操作を意識する。
もちろん、そんな魔力操作をすれば強制的に魔力場にも干渉するわけで、オリビアも魔力酔いでぐらつく。オリビアはそんなことを振り切るように反射的に後ろに下がり安全マージンをとる。さすがの反応だと言わざるを得ないが、うーん。やっぱりまだ急に1から100の瞬間的な魔力操作は難しいな。まあ特訓あるのみだ。
「フッ」
オリビアが転じて攻撃を仕掛けてくる。ただ、なんだこれ!?オリビアの斬撃が何本にも見える。というか、見せられている!!
恐ろしく無駄のないオリビアの太刀筋で構えるだけと予備動作だけでその剣撃が見えると錯覚させている、っていう仕組みなんだろうか。やるなオリビア。どんどん手数を増やしていくじゃあないか。でもまだ、出来立ての技なのか粗い部分が目立つ。たぶん————ここら辺を止めればいい。
「くっ、そー!」
「オリビア、まだ鍔迫り合い中だよ。集中してないと」
僕はオリビアの細剣を模した木剣の柄を、オリビアの握った手をすり抜け掴み、後ろに押し込む。そのままオリビアの足と足の間に僕の足を起き、後ろに押し込んだ重心のズレを利用して足を引っ掛け転倒させる。
「こうだ」
倒れたオリビアに手刀を向けて締めだ。
「オリビア、気を散らすなんて珍しいね。それだけ自信があったの?」
「ぐぅ•••自身はあった、やり切れるとは思ってない、けどこんな1発で巻き返されると思わなかったから•••悔しさがつい出ちゃった•••」
オリビアは意気消沈って感じだ。
「いや、すごかったよオリビア。後はその剣撃に本気の圧を乗せることだよ。全部が本気なら相手は絶対に一瞬の隙を生むし、その全てのフェイントがアドリブで全ての一撃になる。初見殺しの必殺の剣だ」
父様のブッ放しとは違った連撃。父様のは父様の脳筋がある故になせる全範囲の目的の無い連撃だ。その間に父様は攻めれるなら目的を持って攻める言わば”後の先”の考え方。まあそれは、そもそも父様は攻める時はそんな駆け引きがいらないからね。それに対してオリビアのは攻める目的でのフェイントの連撃。言わば”先の先”の考え方だ。オリビアの無駄のないその剣の型の行き着く先が楽しみだ。
「ふぅ、そうだね。うん、ありがとうウィル。やっぱりウィルとすると自分がまだまだってことがわかるよ。全然修行不足だーーー!がんばれわたしーーー!!」
オリビアは息を吸い込み、叫ぶ。自分の不甲斐なさに叱咤激励。オリビアは感情型だけど、実際はそれを押し殺して最短の道をいつも探し実行することができる理論派だ。僕は理論派だけど、いざ実戦になると感情で動きがちだ。圧倒的にオリビアの方が成長がそのまま伴うタイプだ。僕にはないものをオリビアはたくさん持ってる。
僕もオリビアからたくさん学ぶことがある。オリビアと稽古できて僕こそありがとうだ。ただそれを口にするのは野暮ってやつだろう。決して、恥ずかしいわけではない。
「ウィルもなんか試そうとしてるよね?なんか魔力の立ち上がりがいつもと違ったよ?」
お、そこに気づくとは。
「そう!実は魔力効率をもっと良くしようと考えててさ」
オリビアと僕は稽古後のフィードバックをお互いに行う。こうやって偏見なく、お互いについてアドバイスし合うって言うのもオリビアと稽古してて、とてもためになる点の1つだ。
そうやって色々話をしていくとだんだんと日も落ちてきた。
「おっと、じゃあ帰ろっか」
「ほんとだね。じゃあ放課後何もなかったら稽古しよ!」
「うん。そうしよう。そうだ、父様がしばらく都市マドワキアの近くにいるからって言って父様に手紙を出したんだ。会えたら会おうかなって思ってるんだけど、オリビアもこない?」
「え!?師匠が!?行く行く!」
「よし、じゃあまた連絡あったら言うね」
「久しぶりの師匠だー。よーし、前よりも成長した姿見せちゃうぞー」
オリビアも上機嫌だ。ふむふむ、父様の返事が待ち遠しいなあ。




