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第3章 第10話

「あとは2人の力量の差が全くわからないんで、そう言う意味でも2人にやりあって貰うのが手っ取り早いんすよね。まあただの組み手すけど。ただ、俺は君たちがどっちが強いとか、どっちがすごいとか見たいわけじゃないんすよ。あくまでここは学校、教育の場っす。君たちが何ができなくて何に困っているのかを指導するのが俺たちの役目っす。だからどうしようすかね、とりあえず身体強化の魔法なしで打ち合いをしてもらいましょうか」


 なるほど。それなら身体能力のみだからより何ができて何ができないかがわかりやすい。

 でも、ん?僕は武器を何も持たないんだけど、どうすればいいんだろう。


「セイウェン教官、僕は無手なんですけどどうすればいいですか?」


「そうすね、ウィルっちなら武器を持って戦うこともできそうすけど、それだとなんか変な癖が着いたら嫌なんすよね。アケディアっちには木剣を使ってもらうことにして、ウィルっちは手だけ木剣くらいの強化でいきましょうか。できるす?」


「大丈夫です!」


「へー、ウィル君自分の身体の一部を強化できるの?器用だね。しかも無手で戦うなんて、どんな戦い方か俄然興味が湧くね」


 身体強化じゃなくて付与魔法による『補強』なんだけどね。


「僕だってアディの戦い方がすごい気になってうずうずするよ」


 アディは一般枠で入ってきた特撰クラス級の実力の持ち主だ。その強さはどんなものなのだろうか。なんかホグン村での稽古を思い出してそわそわしてきたな。強い人との稽古は心躍るんだよなー。ああ、僕の中の代々受け継がれる戦闘狂の血が騒いでる気がするぞ。


「それじゃ手っ取り早く始めましょうか。両者構えて」


 僕たちは互いに距離を保ち、構えに入る。

 左手の手掌は前に右手は腰の位置に。僕は手刀の構え。

 アディは木剣を肩に担いで腰に手を置き、突っ立って不的な笑みを浮かべている。

 どんな構え?全く圧も感じられない。


「じゃぁ、始めっす!!」


 まあいいか。僕は手部に父様と稽古をするように無詠唱で『補強』の付与を施す。


 瞬間、


「ッ」


 本当に一瞬だけ、アディから()()が放たれる。圧とかではなく、殺気。紛うことなく殺気、本当に殺す気の圧。しかもその圧は父様にも匹敵していた。僕は本気で死ぬ気がして構えた•••一瞬だったのにも関わらず僕は冷や汗が額を転げ落ちている。なんなんだ、今の?

 でも、今のアディは肩に木剣を担いで突っ立っているいつものただのアディだ。


「ウィル君それ、付与魔法だよね。本当に器用なんだね。その年で色々できる人はなかなかいないだろうねえ。いやあ、将来が楽しみだねえ」


 アディは不的な笑みを浮かべている。


「アディこそ本当にやる気あるの?」


 アディの一瞬の圧で本気構えしたけどなんとか言葉と今の雰囲気でいつも通りを装う。アディ、君は一体•••。


「2人とも呑気に話してないで実力を出して欲しいすね」


 これは、向かい合わないとわからないくらいの殺気だった。セイウェン教官も気づかないほどの一瞬の殺気だ。それくらい本当に一瞬だった。なんだったんだ?いや、今は教官の言う通りアディの所作を気にしよう。


 アディは変わらず不的な笑みを浮かべている。

 僕とアディは迎え撃つ。


 アディは右に重心を僅かにずらす。右からの襲撃か。しかし、それから左に重心をずらして木剣も肩からずらす。左から攻めに転ずるのか、わずかに構えもずらす。それからアディは左右に焦らし徐々に間合いを詰めてくる。

 アディ•••こいつじりじり間合いを詰めてくるな。しかも左右に焦らしてどちらかの攻めに転ずるかわからないくらいの重心のずらし方で攻めの軸がめちゃくちゃわかりずらい。こっちも無闇矢鱈に構えを開きずらいが•••。

 アディは時に構えを元に戻してどこから初手を加えるか全くわからない。僕もそれに合わせて全く攻め手を決めれない。

  

 いや、待て。


 待て待て待て。


 このアディの意味あるように見える動き、と見えてわけわからんような動き。僕はこの()を攻め手と守り手として最大限に使う。アディはどこからか攻め手を幾重に張り巡らしている。


が、


明らかにこれはやり過ぎだ。この意図は攻め手を巡らせてるように見せかけて、それを読んでる僕の動きを封じるための()()な動きにしか他ならない。アディの意図、これは僕の動きを止めるのみの動きだ。


 アディ、舐めたものだな。


 僕は緩急を要して一瞬でアディの懐に入る。


「!?」


「アディ、舐め過ぎだよ。アディの意図、明らかに()()()()()()()()()()の動きだよね?」


 僕はアディの首元に手刀を沿えている。

 身体強化の魔法を使わなくてもこれくらいの距離なら一瞬で懐に入れる。


「へえええ。ウィル君はいい()も持ってるんだねえ。それ、ちょっと遥かに特選レベル自体を過ぎると思うけど、やっば。ちょっとこれは予想以外だわ。ウィル君ちょっと()()()()でしょ•••!」


 アディは僕の不意の()()に対しても引き際を逃さずに一瞬で駆け引きをして、後ろに後退する。が、僕はそれくらいの駆け引きなら()()()()()。その後退を視てからの、さらに詰めて手刀を逃さずにアディの喉元に沿える。


()()()()だって言ったよね?」


 アディ、君は攻めるように見せて一回足りたとも本物の攻めを見せてなかったよね?最初の殺気はなんだったんだ。あの圧は明らかに只者じゃなかったぞ。なのに、何だよ。その実力が見たかったのに、元からやる気がないなんて。


 アディは喉元に僕の手刀を掲げられて、両手を挙げた。


「いや、参った。ここまでとは思わなかったよウィル君。魔力なしなら今なら余裕で御せると思ったんだ。ちょっと力量を遥かに上回ってた。これは僕の身あまりだ。参った、降参だ」


 アディは何か他に意図があったのか?


「そこまですね。いや、いい戦いが見れたっす。他の生徒たちも釘付けになってたすよ」


 ほら、と言って周りを見渡す。

 この最初の武道の授業はこの闘技場で各々の教官の指導を受ける。そしてある程度実力を見たら、次からそれぞれの指導方針に移り、時には場所を移したりと言った感じだ。だから最初は生徒がこの場所にいるんだけど、どうやら実践形式でいきなりはじめたのは僕たちだけだったようで特選クラスの目を引いてしまったようだ。


 そんなことよりも。


「アディ、君は今さっきの組み手は何が狙いだったの?」


 とりあえずフィードバックがしたいね。

 アディは木剣を地面に置いて伸びをして、組み手で疲れた身を開放されている。


「んっんー、そうだね。何が狙いって、ウィル君の実力を見てただけだよ。セイウェン教官だって言ってたじゃないか。これはどっちが強いとか凄いとかじゃないって。僕は別に攻めなくていいって思ってただけ。ウィル君ならあれくらいで大丈夫かなって本気で思ってたし、手を抜いたわけでもないよ。ただちょっと、想定外に君が強過ぎたってだけさ。そして僕に、ちょっと無駄が足りなかっただけの話さ」


「まあそうだけどさあ」

 

 うーん。何だか拍子抜けだ。あんな殺気を放っていたやつの本気にぶつかれると思っていたのに。うむ、なかなか掴めないやつだ。


「2人ともの大体はわかったす。とりあえず、基礎体力の効率化すね!」

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