第3章 第8話 【秘密の特訓場】
おはよう諸君。今日は記念すべき王立中等学校の初めの授業の日だ。空は快晴、心もこの空のように広く踊っているってやつだ。
さて、そんなわくわくで普段よりも早起きしてしまった僕。食堂がちょうど開く時間でもあるしご飯を食べて朝のトレーニングをして学校に行こうかな。
早朝の食堂。誰もいない閑散とした食堂だ。でも食堂の職員たちはいて確かな人の気配はしている。こういう、普段は人が多くて活気に満ち溢れているところなのに、人はいるけど雰囲気として誰もいないというちぐはぐさが僕は嫌いじゃない。なんか情緒だよね。
僕は今日のご飯が乗ったトレーを受け取り、誰もいない食堂の席へぽつんと座る。食材からは出来立てを表す湯気が出ている。こう、湯気が出てると今作りましたみたいな感じでご飯の温かみを感じれるというか、食欲がよりそそるんだよね。今日の朝の献立はパン、ベーコン、目玉焼き、そしてスープだ。そうそう、これでいいんだよね。淡白と思いきや、これだけのメニューで幸福度はマックスになれるんだ。食材に対して、いただきますのお祈りをする。パンをまずプレーンで食べる。ふわっふわで慣れ親しんだ味に落ち着きと安定を感じる。次にベーコンを乗せて食べたり、卵焼きを乗せて食べたり、いろんな食べ方をしてパンを楽しみ、最後にスープを口直しに飲む。はあ、朝から幸せ。ではご馳走様でした。
さて、朝のトレーニングと洒落込もうか。
朝の食事の消化をしばらく待ち、ある程度時間が経ってからまず部屋でしっかり柔軟し、外に走り込みに出た。身体強化の魔法はしない。結局素の体力がないと体を強化してもその強化に体自体がもたないのだ。だから地力をひたすら鍛えるのが朝のトレーニングの目的だ。後は魔力のコントロールとかのトレーニングもしたいんだけど、なんか人に迷惑かけなさそうな場所ないかな。僕は走り込みをしながら人が来なさそうで、尚且つ人目につきなさそうな場所を探す。よし、街の方じゃなくて反対方面に行ってみようか。
1時間ほど走ってようやくちょうど良さそうな場所を見つけた。
ふう、よし。だいぶ走りこめたしいい場所も見つけたな。
めいいっぱい息を吸い込み、肺の全ての空気をゆっくり出す。深呼吸をして調子を整え、周りを見渡す。ここは街から離れたちょっとした山となっている場所の頂上付近。周りは木だらけだし、街からも離れており、登るだけでも大変だから相当用事がなければ誰もこなさそうな場所だ。しかも走り込みで1時間かかるのでここに来るまでも充分特訓になる。よーし、ここを秘密の特訓場としよう。では、だいぶ息も整ったし、はじめましょうか。
僕はもっと魔力のオンオフをくっきりはっきりさせたい。正直、僕の今の魔力量は僕もわからない。重積数20の魔法陣で垂れ流しをしても全く減る気配はない。ただそんな魔力でも底をつくことがいつか起きる。色々稽古とか戦ってみて分かったけど、僕はまだ1人対1人の場面しか経験していない。それなら適当に魔力を使っていてもいいけど、もちろんそんな場面だけじゃない。そしてその魔力が底をつくことを大事な場面で起こしたくない。だから魔力は極力節約しながらの方が有事の際に有利なはずだし、だからこそ生活ですら極限まで抑えて、尚且つ有事の際に魔力を使う時はバッと大きく、そしてシュッと元通りなわずかな時で大きな成果が出るような立ち回りをしたい。今は常時適当に魔力をかけ巡らしてるから1回ここいらでそのことを意識して魔力をコントロールするような練習をしてみたかったんだよね。しかも、この考えはヴァルヴィデア流剣術の理念にも当てはまっているし。
まあまずは軽くいつもの魔力場に干渉する猫騙しの要領で魔力を練ってみよう。
僕は魔力を爆発的に練り上げる。ぐらっと周りの木々たちが動揺した様な感覚を得る。ぱっと見は何にも起きてない様に見えるけど、全ての生き物、物質には魔力が通っている。木々は特にこの大いなる大地からも魔力を供給されているために並大抵の魔力場の干渉じゃへこたれない。ただ、やはり干渉は受けるのだ。うん、今までのくらいなら自然にも一瞬干渉できるくらいなのか。ただ、なんかちょっと練り上げる時のぬるっと感がまだ拭えないな。このぬるっとタイムは魔力の消費もあるし、このタイムラグである程度の力量がある人は魔力酔いに慣れるだろう。だからこう、もっと切れ味の良い様にタイムラグなく干渉させたいな。
それからああやったりこうやったり1時間くらい魔力を練るに練りまくったがそんなに進歩は見られなかった。そしてあんまり魔力の減りも感じられない。よし、練習あるのみ。あとは今度どれだけ自分に魔力があるのか学校がない日にまたここにきて魔力を全部吐き出してみよう。
てか今時刻はいかほどだ?むむむ!?この影の伸び具合、結構時間やばいかも!!
僕は身体強化の魔法をかけ、急いで帰る。間に合え、僕!!
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寮の近くまで身体強化の魔法で爆速で走り抜け、人が見えはじめてから強化の魔法を解いた。急な猛スピードで走ったら人もびっくりするだろう。僕はそのまま地力で全力疾走し息絶え絶え、汗だらだらで寮まで辿り着いた。
アディに何でそんな朝から疲れてるの?って聞かれたから、走り込みしすぎて登校時間ぎりぎりになったよって言ったらぞくぞくしてた。ぎりぎり加減に彼なりの無駄を見つけたのだろう。いや、僕も反省だ。今日初めての学校の授業なのにこの体たらく、次からはしっかりと時間調整をしよう。
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授業、といってもオリエンテーションがほとんどだった。昨日は学校全体の概要の説明。そして今日はそれぞれの使う教科書の配布や今後の授業の時間割などの説明。担任のノーマン先生がざっと説明して休憩をとりつつ1限と2限を消費した。3限もそのままノーマン先生が軽く教科書を使って魔法分野のはじめを授業してくれた。王立は小等学校からしっかり魔法分野を教えているのでみんな退屈そうにしてたな。まあでも本当に4大元素は何かとかの初歩的オブ初歩だったからわからないこともない。まあでもここからそれぞれの元素の授業に分かれて授業が進んでいくし、無属性魔法や固有魔法についてとかの授業、実技もあるから学校側もまだまだこれからって感じだ。うむ、楽しみ楽しみ。
4限目は一般教養の授業があり、これもざっくばらんに数学や言語学、理科、社会といったものの説明として終わった。これもノーマン先生が授業してくれた。朝はノーマン先生尽くしだ。
4限が終わり、学校は昼休憩である。




