第3章 第6話
その後、殿下と僕は普通にさよならをした。
カフェオレを入れていたカラフルなガラス細工を練り込んだ細長のコップは持って帰れるとのことで持って帰った。すごい綺麗だし僕が飲んだ後だけどオリビアにあげてみようかな。僕が飲んだものあげたらきもがられるかな?どうしよ。まああげてきもいって言われたら持って帰ればいいか。
僕は寮への帰路につく。アーサー殿下とのやりとりが頭をぐるぐる回る。アーサー殿下の芯はぶっとくしっかりしている。アーサー殿下の根底は面白いことが好きなことだ。たぶん。その面白好きな殿下が今後の国の未来を危惧している。兄に継がせれば面白く、楽しい今の国は無くなってしまうと。
まあ力が全てだとかいう人が上に立つのはなあ。生きづらい世の中にはなりそうだ。力が全てとか、そういう人は1番上に立った時に目標がなくなってしまう。世の中には力で解決できないことがたくさんあるからだ。そういう人間が行き着く先は力に溺れていって自滅しまうのが歴史の流れだ。武の国みたいに役割がそうであるならいいのだが、蓄えられているのは武力と国家防衛のみの力でありそれ以上に発展はしないだろう。
アーサー殿下には自分の王国像がある。そんなアーサー殿下の助けにはなりたい。けど、それが騎士か。ふむ、ちょっと僕では抱えきれない問題だな•••。父様に相談してみよう。確か、父様と母様はヴァルヴィデアに行くためにしばらく都市マドワキアの近くを通って行くって言ってたし。手紙でも出してみよう。
寮に帰ってから僕はカラフルなガラスのコップを念入りに洗ってオリビアを迎えに行った。
女子寮は男子寮の少し離れた場所にあり、学校により近い場所にある。
「おおー。これが女子寮か」
男子寮とは違い、寮の前に鉄格子の門がありそこを通じないと寮に入れない。門には横窓がありそこに使用人がいる。使用人に話を通してオリビアを呼ぶってわけだ。良い治安的な配慮だね。
「すみませーん。中学1年のオリビアって子と待ち合わせしてるんですけど」
僕は横窓の使用人に話を通す。
「はいはい、ちょっと待ってなさい。今から呼んでくるねえ」
横窓の使用人はふとっちょなおば様だった。さばさばとしているが融通がききそうな方だ、と思えるくらいに僕の顔をちゃんと見ていろんな行動をしてくれる方だ。
しばらくして鉄格子の門が開いていく。僕は横窓から門の方に歩いていく。
そこには、制服を着たいつもよりも大人びたオリビアがいた。
「すごい•••美人だ•••」
「そんなまじまじと見て言われると、なんか、恥ずかしいよ」
なんなんだろう。そうか、お化粧をちょっとしてるんだ。口紅と頬紅を少し塗ってるのか。それによって顔の濃淡がよりきっぱりと反映されて、オリビアの造形美がより濃く出て大人びて見えるのか。
「なんかおめかしってよくわかんなくて、クラスの女の子に聞いたの。そしたらクラスの子がこれ使いなって色々教えてくれた!」
グッっジョブ、クラスの女子。クラスの女子に感謝すると共にオリビアがいじめられてなくてよかったと安堵。平民だからって虐められるのかと思った。あとおめかしオリビアしたことないのは知ってたからアーサー殿下の言葉には虚勢を張ってたんだね。うーん、そのギャップがベリーグッド。
「服はよくわかんなかったから制服にしたけど」
ああ、その考えも非常にグッドだ。なんだか今までのオリビアじゃないような気がして特別感があって良い!
「すごい似合ってるよ、オリビア」
「え、なんか鼻血出てるよ?大丈夫ウィル?」
おっと、いかんいかん。
「あ、これあげる。アーサー殿下とお茶しに行ったんだけどそこのカフェが器ごと上げる的なやつでもらったんだ。僕が飲んだやつだからきもかったら持って帰るよ」
鼻血をふき、スムーズに話題をそらす。
「これめっちゃいいとこのやつだよ!クラスの子達も言ってた!ガラス細工が細かくて綺麗でお茶もできてその綺麗な食器もくれるっていうところがあるからおすすめだよって!でもすごい高いからお財布と相談してって•••ウィルこれどうしたの?」
「これ?殿下に奢ってもらった!」
あれ?これじゃあ人から貰ったものをさも自分の物のようにあげる人に見えるかな?あれ、もっときもくない?僕。
「へー、ラッキーだったね!」
オリビアはなんて純粋でいい子なんだ。是非とも都会の色に染まって欲しくない。
オリビアはいったんガラス細工のコップを寮に再度置きに戻った。なんかもう1回寮に戻らさして申し訳ない。
その間に横窓のおば様に渡したところの金額を聞いてみよう。
「おば様、あのガラス細工のやつってどれくらいの値段するんですか?」
「あれは大体50シルバーだね」
50シルバー!?高っ!!僕は大公園で待っててって言われてアーサー殿下が何飲みたい?って言うからカフェオレって言って渡されたものを飲んでただけだけど、あれそんなすんの?
100シルバーで大体1ゴールドと言われている。そして普通の大人が働いて普通に暮らせるお金は月に2ゴールドくらいと言われている。つまりあれ4つで大人の月にもらう給料と変わらないと言うこと•••クラスの女子もおおすめってオリビア言ってたよな。いや、貴族の世界観どうなっとんじゃ?
「あとおば様と言うんじゃない。女性は全員どんな年齢でもお姉様といいなさい。それが紳士の道への1つだよ」
確かに!しかもそっちの方がなんだかかっこいい!今度から気をつけよう。
「すみません、直ちに気をつけます」
「いい子だ」
しかし、お金面については考えないといけないなあ。ホグン村ではほぼ自給自足だったしお金に関してあまり考えたことがなかった。まあ寮でのご飯はタダだし、服は制服があるし衣食住についてはなにも困らないんだよね。ただ、こんな都会に来てしまったからにはある程度お金のことについて考えなくてはなるまい。さて、どうしたもんか。
「お」
オリビアが寮に物を置いてきたらしく小走りでこっちに向かってくる。うん、色々街並みを見て、街はどんな相場なのか感じて考えればいいか。
「ウィルお待たせ!」
「よし、じゃあ行こうか!」
正直、このオリビアの笑顔が毎日見れれば幸せだ。あれ?やっぱり僕ってきもいのかな?
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「おー、やっぱりこの人の多さは圧巻だなあ」
僕、街に再臨。
「でも今さっきもウィルきたんでしょ?」
「いやー、何度来ても驚くよ。しかもアーサー殿下とここに来たのは話しするためであんまり街並みを見ずに来たからね。今さっきとは心境も違うし、違ったモノの見え方がしてまた新鮮だよ」
オリビアといるときは周りがふわふわ輝いてるような感覚だ。
「本当にすごいよね!まだなかなか慣れないなー」
「人酔いする前に色々見て回ろ!」
買ったり、食べたりはしなかったけど雑貨、服屋、飲食店、いろんなところを周りにまわった。物価はホグン村とかの商人が売ってるやつで比較した感じだと、若干高いくらい。意外にそんなに差はなかった。土地代が高いのかな?
「うーん、色々あって飽きないけどどれもお金がかかるねえ」
「そうだよね。僕たちも仕送りがくるってわけでもないし、どうしたもんかね」
僕たちは色々周り、今は大公園でまったりくつろいでいる。大公園、大きくてなんだか街の中にあるけど街の時間が流れてなくて、ここ本当にいい所だぞ。すごい落ち着く。リピ確定だ。
「別に贅沢しようってわけじゃないけど、どうせなら堪能したいよね。僕もお金の件については色々と考えていたんだ。そこで1つ案がある」
「?」
オリビアは疑問を浮かべる。ふふ、僕とオリビアにとってぴったりな案だ。
「それは”冒険者”さ!」




