第3章 第5話 【デート】
休憩が終わる鐘の音が響く。
「おっと、ウィル君この話はまた後でじっくり話そうか」
僕も王子様が僕を指名してきたことを詳しく聞きたくはある。なんせこの連合王国の王様の直系なんだ。ことが大きすぎて事情を聞きたい。
それから暫くして僕たちの担当の先生が入ってきた。おお、この人僕たちの受験の時のやる気がなさそうな試験官だ。いやー、あの時もただもんじゃない魔法使ってたからなー。こりゃ授業が楽しみだ。
「はーい席につけー。この高貴な特撰クラスを担当するノーマン・トラビノットだ。まあ、色々説明していくぞー」
今日もやる気がなさそうに片手をズボンのポケットに入れて、進行していく。でもこの人、説明は要所要所おさえているし、スムーズに進行していくし話の内容が頭に入りやすいんだよね。さすが王立学校、さすが特撰クラスの担任だ。
授業はそれぞれの教師の担当制。大きく分けて科目は基礎知識、魔法分野、武道でさらにそれに関してそれぞれの授業があるといった感じらしい。例えば魔法分野ではさらに4大元素の魔法にわかれて授業が行われる。風の分野に対しては僕たちの担任であるノーマン先生が担当らしい。武道に関してほぼ実践形式で、各々の実力、スタイルに合った個別授業をしてくれるらしい。しかもその内容はなんと、王国騎士団の若手から中堅どころが来てそれぞれに教えてくれるらしいのだ。生徒の実力の底上げかつ騎士団に興味を持ってくれるようにとのことらしい。
これは願ったり叶ったりだ。自分の実力がどこくらいかっていうのもわかるし、何よりも兄様のことがわかるかもしれない。
いやー、楽しみだ!魔法のことについても基礎を学びたかったしとても実りのある学校生活になりそうだ。
色々な学校についての説明が終わり、後は生徒の自己紹介だけとなる。マドワキア王子から始まり、僕の番もなんとなく終わり、みんなの自己紹介は終わった。正直10人しかいないけど、みんな初めましてで自己紹介されても記憶に残らずにわからない。今後の学校生活で覚えていこう。
こうして学校初日は昼くらいに終わった。
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「ということでウィル君、お茶しにいこうか」
アーサー殿下からのお茶の誘い。最初に誘われるのは女の子がよかったなあ。
「オリビアとアディも誘っていいかな?」
どういう理由かはわからないけど、とりあえず責任を分散させよう。
「いや、少しばかり込み入った話になるからできれば君だけがいい。申し訳ないね」
だめだった。
「ごめん、オリビア。最初のスクールライフはオリビアと一緒って決めてたんだけど•••」
「ちょ、もう!何言ってるの!早く済ませてきてよ。街を探検しにいくよっ」
可愛い!すぐ済ませちゃう!
「君たちねえ。一応彼はこの国の王子なんだよ?もっと敬う気持ちを持たないと」
「でも理事長は貴族も庶民も関係ないって言ってたぞっ」
「まったく、ウィル君。君は本当に楽しい人だ。まあ僕もどういう理由でウィル君を騎士として指名してきたのは気になるけど今日はよしておこう。また聞かせてよ。この暇というのもまたいい無駄だ」
アディは今日も無駄に勤しむらしい。
「オリビア女史もアディ君もすまないね。少しばかりウィル君を借りるよ。そんなに長くはかからないと思うから、オリビア女史はウィル君のためにおめかしでもしててあげておくれ」
「ウィ、ウィルじゃなくてもおめかしくらいするもん!」
「オリビアは何にもしなくても可愛いよ?」
「ッ」
オリビアが突如として停止してしまった。なんで?また僕何かしちゃいました?
「ちょっと、ウィル君はややこしいことしないでおこうか。さあ行こう」
少しばかり時間が停止してしまったオリビアと、暇を楽しんでいるアディを置いてアーサー殿下とデートをすることになった。
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マドワキア中央王国の中心地である都市マドワキア。入学試験の時の夜しかみてなかったけどやはり中央王国の中心、昼でも人がすごい。めちゃくちゃ賑わっている。僕たちはどこにいるか?その都市のさらに中心であるとんでもなく広い公園のど真ん中に尻を土につけ、カフェで買ってきたカフェオレ片手に対面している。どう言う状況?ちなみにカフェオレは殿下に奢ってもらった。殿下はコーヒーにしてた。コーヒー苦くないの?
「ここは都市マドワキアを代表する大公園なんだ。どうだい、いろんな人達が行き来して、いろんな人達がそこら中で語り合っているだろう?」
公園にはそこらじゅうを横切る人がいれば、座って色んなことを話し合っている人もおり、中には自分と向き合い自分の才能を伸ばそうと歌や楽器や大道芸など自己研鑽に励む人たちもいる。そこには大人から子供、様々な人間の関係性があり、色んな人がいることに、この国を凝縮したような風景となっている。
「いい光景だね。この国がこれだけの人がいて、これだけの生きる人生があることを、この大公園にいれば感じ取れるよ」
僕は素直な意見を言う。なるほどなあ。だからこんな中心にこんな大きな公園を作ったのか。うん、とても素晴らしい国だ。マドワキアっていうのは。人が多すぎるけどね。
「君は•••。ははは、やっぱり面白いね。よく俯瞰して見えている。頭がいいのかそれともただの自分勝手の鈍感なのか。ただ、ちゃんとした目を持っている」
これ褒められてるの?
僕は殿下に買ってもらったカフェオレに口をつける。うーん、カフェオレって甘苦いけどこう、その苦さが身体と頭にびびっときて全身が冴え渡るような気分になるんだよね。コーヒだけだとちょっとまだ僕には苦すぎて全身がびびっとじゃなくてぶるぶるってなるからカフェオレがちょうどいいね。
「私はこの光景が大好きだ。みんながみんな、それぞれの行動を自由にできている。それだけ余裕と発展できる自由と豊かさがある証拠だ。私はこのいい国をもっと面白く、そしてずっと継続して行きたいんだ」
殿下はすこしばかり遠くを見て、手に持っているコーヒを飲む。それは物理的な遠さではなく、時間的なこの国の将来を見据え噛み締めているようだった。
いやめっちゃ絵になるな。この大公園というシチュエーションも相まっている。てかなんでこんな場所なんだろうか。これはこういうことを感じさせたかったのだろうか?
「なんでこの場所でこんな話をするかって言うとね、この素晴らしい景色を感じて欲しかったって言うのと、私も何かと色んな目があってね、ここだったら色んな人が見えるでしょ?盗聴とかの心配がないからここにしたんだ。こんな見渡せるところでそういったことはあまりにも目立つからね」
おっと、半分正解でしたか。いや、王子大変だな。この感じだと暗殺とかも今まであったんだろうな。まあそれだけ気をつけないといけないってことは、このアーサー殿下が後継候補にあるってことか。
「なんで僕を騎士に?僕はまだ中坊だよ?」
アーサー王子の騎士とは、専属騎士という意味だ。力こそ全ての武の国と違い、マドワキアの王族はなにも力だけではない。政策があり、外交も考えなくてはいけない。故に王は中央王国騎士団が壁となり、さらにそれを統べる総隊長が王自身を守る。では王子はどうするか。王の直系であるために騎士団からは守られる。しかし自分自身のためにも自分の専属騎士をつけておくのだ。アーサー殿下にだって若いけど専属騎士がいるはずだ。改めて騎士になるとしても、後継者候補である殿下の騎士なんて、なんだか僕には色々と不足してる気がするんだけど。
「君が単純に強いだけじゃないからさ。私が求めていたのは強さだけじゃなかった。この国を素晴らしいと思ってくれる感性がある人が、良かったんだ。それをここで確認したかった。ウィル君は聡明だよ。そしてウィル君の言葉には裏表がない。そしてそれは、それを押し通せる力がある証拠だ」
だから君なんだ、とアーサー殿下は僕を見る。
僕は•••。
「僕は、あまりまだ飲み込めてないよ•••。アーサー殿下には騎士がいるばすですよね?」
「ああ。いるとも。ただそれは王が、私の父が当てらった騎士だ。確かに強い。だけども子供を1人守れるくらいの強ささ。私はね、大袈裟に言えば1人で戦局を覆せれるくらいの強さを持った騎士が欲しいんだ」
なんでだろう。何をそんなに。
「ははは、なんでって顔にでてるね。ちゃんと理由がある。ちょっと身の上話になるけど、私には成人している兄がいてね。私と同じくこの国の未来を見据えて行動なされてきた兄がいるんだ。兄は少し頑固なところもあってね、常日頃に国を守りたければ強くならなければならないとおっしゃっていた。ただ兄は国のためにたくさんのことを学び、奔走していた。だからそれくらいの頑固さは目に余らなかった。ただ、兄がだんだんと発言権を増し始めてから、兄は変わってしまった•••。力が全てだと。弱きものに生きる意味はないとまで言い放ったんだ」
それはなんとまあ•••。でも、わからないこともない。僕だって1回そっちの道へ踏み出しかけたことがあるからね•••。お兄さんは何かを思い、そして立場上何か行動しなければならないと進み続けているのだろう。それが例え、覇道だとしても。
「まあ、私たちは人の上に立つ以上そう言う行きすぎた考えになることもある。ただ、もう1つ。兄がそう進み続ける原因の1つに兄の騎士も関係していると、私は考えている」
どういうことだ?
「それはどんな人なの?」
「名はドラゴン。どこで知り合いどこから着いてきたかわからない男だ。何もかもが全て謎。知るのは兄のみ。ただわかるのは、その純粋な強さが尋常ではないということ。恐らく王国騎士団の誰よりも強い」
え?
「そんな男が今まで知られてなかったの?」
「本当に誰もわからないんだ。その強さ故に兄の選民思想が助長されている、というより裏付けされていると私は思うんだよ。私は今の兄に国を譲る気はない。私は弱きも強きも関係ない、みなが今面白く、平等に笑えているこの国を継続していきたいんだ。だから私は兄に強さでも勝たなければならない」
その役目が、僕。ちょっと荷が重すぎませんかね?
「僕ではやっぱり力不足のような•••」
「いいや。君は強いじゃないか。若干の中学生にして信じ難いけどね、ただ僕も見る目は自信がある。わかっているよ。君はドラゴンと同じくらい、強い」
強さは、僕って強さってどんくらいなんだ?
「買い被りすぎだよ。それに純粋な強さだけではないのはこっちもだよ。僕は平民だ。なにもかもが釣り合ってないよ」
「ははは。貴族も平民も関係ない、そう理事長だって言ってたじゃないか」
う、やり返されたぞ。実は根に持つタイプ?
ただ、そうやってアーサー殿下は笑う。うん。この人は、自分の折れない、崩れない、ぶれない意志がある。それが彼の力であり原動力なんだ。こりゃいい王になるぞ。
「ウィル君、この話をするのは君が初めてだ。兄に譲らないと言うのはそれは継承争いになるということだ。それぞれの派閥ができて戦いになる。そう言ったことも考えたらすぐに答えられないよね。考えて返事をおくれ」
うーん。王子の騎士、か。どうしたものか。




