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第3章 第2話

「ウィルって髪切らないの?」


 馬車に揺られ乗りながら今日という長旅の中、オリビアと雑談中。

 

 ふむ。髪を切らないと、な。


「髪は定期的に切ってるよ?」


「えー、全然じゃん。前髪で目が隠れてるよ•••ウィルの顔見たいのに」


「え?なんて?」


 ちょっと最後の方が小声で言ってて聞こえない。


「もう!ちゃんと目とか見えた方がスッキリするんじゃないってこと!」

 

 え、ええ。むさ苦しすぎってこと?んー、でもなー。今も人の目を見て話すってのが苦手なんだよなあ。なんだかあの時の”死の目”と目があった時の歪感が未だに纏わりついているんだよね•••。人の目を見て話すのが苦手だからついつい人の後ろを見たり、ちらっとみて下を向いて考えているふりをしたりする。だから前髪で目が隠れるくらいの長さってのは人の目を見ているようで見てないから落ち着くんだよね。そんな前髪も僕の大事な防衛戦なのだ。

 オリビアは、と僕はオリビアをじっくり見てみる。前髪が眉毛の上でカールされるように切り揃えられておりその大きなお目目とその顔が強調されるように輪郭に沿って切り揃えれている。たぶんオリビアの両親がオリビアの可愛さを際立たせるようにカットしてるんだと思うんだけど、そんな自信満々さが僕には眩しい。


「そんなんじゃ根暗ぽくて変な貴族に絡まれるかもしれないよ?」


 う、なんか根暗とか隠キャとかって言われると図星すぎて心が抉られる。でも僕って引きこもりがちかもしれないけど、それ故に変なことはしないし目立たなく細々と誰にも気にされず厳かに過ごす予定だからそんなことにはならないと思うけど•••。



「おい庶民、イキがるなよ。ホークレンドニクス家の名においてこのサムエル・ホークレンドニクスがお前を粛清してやろう」


 そんなことになった。なんぜ?


 父様、母様。僕は入学式当日、まさに粛清されそうになっております。どうしてこうなったのだろうか。



 ホグン村を出た僕たちは馬車でどなどな揺れながら夜に寮へ着いた。試験の時に借りてた宿舎ではなく、学校から徒歩10分いかないくらいのところにある建物だ。

 建物は中等学校専門の寮で、男子寮と女子寮で1棟ずつ別れている。3階建てで見た目は木造を主体としている。3階建てなのは1学年1フロアなのだろうか?豪華ではないけどしっかりと整備されているいい宿、と言った感じで格式高そうな寮だ。

 入り口は木造の木彫りが細かく彫られている両開きの扉で、中に入るとエントランスがありすぐ入ったところに受付のようなスペースがあり管理人が日中はいるとのこと。そのまま真っ直ぐいけば1階の部屋に、エントランスにある階段を登っていけば2階、3階へ行けるようになっている。部屋はそれぞれ個室で部屋の中にはベッドと勉強机、そしてクローゼットがある。広さは無駄に広くもなく、また1人で住むには狭くもないと言った感じで実に無駄がないちょうどよい部屋だ。今年の僕たちの年は3階だった。

 貴族は自分で借りたり別宅があったり、家から通える距離であったりでこの寮には一般枠の生徒しかいない。そしてびっくりなことに僕たち一般枠は今年3人しか受からなかったらしい。だいたい毎年10人は受かるらしく、内部進学を合わせて20人くらいになるためにこの寮では1フロア20部屋くらいある。でも僕たちの年は僕たちが3人なために内部進学の一般枠を含めても10人くらいしかいなくて空き部屋の方が多くなっている。なんだか寂しいね。


 さて、そんなこんなで荷解きも済んだし明日は入学式だ。今日はゆっくり寝よう。


 

 入学式当日。



 まず入学式の前に制服の支給と学校についての説明がそれぞれの寮の説明室みたいなところで行われる。現在、オリビアは1人で女子寮、僕は僕と背の高いすらっとしたもう1人の合格者と2人で男子寮で説明を受けている。


 じゃあ今年は男子2人、女子1人なのか。

 

 今部屋には僕とその合格者の男の子と2人だけ。それにしても背が高いなあ。僕はだいたい150センチくらいだけどこの人20センチは高いぞ。今でこれなら一体これからどんくらい伸びるんだ。しかも顔は爽やかな感じ。天は二物は与えないが三物以上はほいほい与えると言ったやつだろうか。なんだか同い年のはずなのにお兄さんに見えるぞ。キラキラしてやがるぜ。


「やぁ、初めまして。今年の一般枠を受かったのは僕たち三人なんだって。あと1人いないってことは女子なのかな?」


 そう言って爽やか高身長お兄さんは頭の後ろで手を組んで僕に語りかけてくる。おいおい絵になりすぎだぜお兄さん。


「初めまして。そうらしいね。ちなみにもう1人は僕の同郷で、君のいう通り女の子だよ。あ、僕の名前はウィル、よろしくね」


 僕は手を差し出す。


「お、自己紹介。うん、僕はそう言う無駄が大好きなんだ。名前なんてあってないようなもんだからさ。ごめんね、僕の考えはちょっと変わってるんだ。そう、名前だよね。僕の名前はアケディア。こちらこそよろしく」


 アケディアと名乗った高身長爽やか謎発言お兄さんも手を差し出してお互い握手を交わす。


 よ、よかった。なんだかよくわからない発言ばっかりするし見た目も相待って陽キャ過ぎてこんな引き篭もり陰キャの握手なんか断られるかと思った。発言はよくわからないけど。まあ発言がよくわからないのいいんだけど•••僕もちぐはぐしてるし。この人はあれだろうか、僕たちはまだ入学ほやほやの中等学校1年生だけど、流行病である”厨二病”の早期発症なのだろうか。よし、ここは彼の名前にこの陰キャが意味を持たしてあげよう。


「オッケー!じゃあアディだね」


 まずは友の証、あだ名だ。アケディアの名に意味がないなら君はこれからアディだ。うん、実にいい名前だ。


「•••へえ。面白い。悪くないね。アディ、アディ、アディ、ね。よし、これから僕はアディだ。はは、なんだか学校生活楽しくなってきた!」


 おお、なんだか予想以上に気に入ってもらえてよかった。


 そんなことをしていると説明の白髭を生やした年配の先生が到着。色々説明をしていただく。渡された制服は白を基調として、シャツに今は短パン、寒くなるにつれてジャケットと長ズボンが加わるといった感じだ。シャツとジャケットには胸の部分に王立学園のエンブレムが金の刺繍で施されている。なんか特別感あってめっちゃかっこいいぞこれ。


「君たちはもう知っていると思うが、今年の一般枠は3人じゃ。例年に比べるととても少ない。なぜか、それは合格条件が非常に高かったからである。その合格条件は各学年トップ10しか入れない”特撰”クラスに入れること、じゃった」


 王立のトップ10!?


「ヒュー」


「君たちよくぞ受かった。”特撰”は王立の中でもさらに別格じゃ。故に制服も他のクラスとは違い、白を基調としておる。特別な存在であり、そして特別な存在であらなければない。それほどまでに”特撰”は皆の高みで目指すべきところであることをわかってもらいたい。じゃが、君たちはこの入学がゴールではならないように。いつまでも高みを目指して頑張るのじゃぞ」


 なんかすごいクラスに入ることが条件だったらしい。制服も本当に特別仕様だったらしい。うへえ、王国騎士団の人に勝っといて良かった。あと20重の魔法陣もよかったのかな。あの”魔法分野”の実技は無かったことになったのだろうか。それにしても受かって良かった•••なんだか上位10人に入ってる実感はないけど。


 それからなんだかそんなクラスに入った現実味のないふわふわした気持ちで説明を聞き、いよいよ準備をして入学式へ参列である。


 うん、よくわかんないけどやることは一緒。とにかくみんなのためになる力を得るために頑張ることだ。

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