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第二章 五十九話 【入学会議】

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 王立中等学校採点会議。合否に関して、複数人の教論が大テーブルを囲み集まり、担当した今回の受験の採点を各々行い、受験生に対して評価を供覧し合否を決める。


「いやー、今回の受験も終わりましたねー」


「貴族枠に関しては有名どころが順当な成績を収めてるって感じですね」


「うん、貴族枠はほとんど変わりないからねえ。いつも通りに進んでいくだけかな」


 貴族枠の担当を行っていたと思われるベテランの教論たちが話し合う。貴族に関してはやはり高い位の順通りの成績になるようだ。それは教育の質であり、そもそもの血筋などが影響しているのだろう。


「一般枠はどうでした?ちょっとトラブルが起きたって聞きますけど」


 次は一般枠の生徒の評価である。採点者の中でもめんどくさそうな雰囲気を醸し出している教論が頭をボリボリと掻きながら一般枠の試験の概要を話す。


「今回も大多数の方々が試験に来てました。どの子もいい原石だったんですけど、合格者は3名ですね」


「3名?」「それは少なすぎないか?」「受かってても、大体10人ほどは受かってないか?」


「それがですねえ、なんか今回は内部進学と貴族枠の受験が多くて一般枠を削れって圧力がかかったんですよ。もちろんこちらも抵抗するでってなったんですけど、これがちゃんとした成績を示しますし寄付金もしっかりしてるしで泣く泣く一般枠を削らざるって感じだったんです」


 貴族枠と一般枠の受験日は別々で行われる。貴族枠は早く、一般枠は後日行われる。それは貴族が先に採点されまずは貴族の合格から決まっていくからである。今回の試験では貴族の数が多く、一般枠の内部進学もあり中等学の中途受験の枠が減らされたのだ。


「逆にどういう基準で3人なのだ?」


「”()()”に入れる資格のある者、を合格者としました」


「は!?」「嘘でしょ!?」「本当かそれ!?」


「嘘でもなんでもありません。特撰に入れる資格を持ていれば貴族からも文句の言いようがないでしょうっていう考えですね。一応この学校は実力主義の学校なんですから。そしてその資格を持つ者が3人いた、というわけです」


 中等学校にはクラスがある。それは5つのクラスであり普通は1クラス30人程度のABCDの4クラス。これはランダムに振り分けられている上下何もないクラスである。そして最後の1つは特別なクラス、”特撰”クラスである。10名のみで成り立ち、その年間のトップ10名のみがそのクラスに入れるのである。小等学校には特撰クラスはなく、それは貴族が小等時期の際には家で教育し、中等学校から入れる貴族がまあまあいるからだ。つまり中等学校からの特撰クラスは内部進学も含めたトップ10となる。その中に入るのは至難なのは言うまでもない。しかし、その中での3人。この会議の驚き様はまずその”特撰に入れる資格”という難しさと、そのクラスに3名も一般枠から入ったという2つの驚きからである。


「先ほどの試験の際にトラブルがあったということですが、それも合格者のうちの1人です」


「ほう、それはどんなトラブルじゃ?」


 今まで黙っていたテーブルの最も奥に座っている左右の髪をツインテールに結った、この場には違和感極まりない、どこからどう見ても少女の見た目をした女性がこれまたその容姿に似合わない口調で口を開く。


「お、理事長も興味あります?」


 その少女の見た目をした女性は理事長と呼ばれた。


「わしもなかなか面白いのを見つけてのう。ちょっと気になるんじゃ。して、どんなトラブルだったんじゃ?」


「”魔法分野”の実技の際にとんでもない魔法を発現させた受験生がいたんですよ」


「それは一体どんなじゃ?」


「教員の魔力酔いを起こさせるほどの魔力、そして太陽を思わせられるかのような質の初級魔法『火球』です」


 会議の出席者全員がその報告に若干の動揺を示す。


「はっはっは、久しぶりに面白いやつが現れたのう。ここの教員は王立でもありもしもの時のためにも対応できる精鋭たちじゃ。もちろん魔力場の急激な変化にも耐久がある。なのに魔力酔いを起こさせるなんて、いやはやいやはや。そしてその魔法は太陽のような質だと、な。はっはっは、全くもって面白いのう」


 理事長と呼ばれた少女のような女性は静かに、自分だけが噛み締めるように笑う。他の教員たちはその言葉で再認識したのか、本当にそんな受験生が現れたのか?と疑問と興味を持ち始める。


「トラブルはそれだけです。あまりにもの魔力場を乱す魔力に受験生を装った無法者かと思い試験中に警備していた職員が出動したくらいです。ただ、それだけでなく、王国騎士団にも試験で打ち負かしたと聞きます」


「「「!?」」」


 だが、次の発言で評価は覆る。確かに王立には様々な人材が揃う。それこそ大人顔負けな力を持っていたり、魔力量も化け物じみた子供も今までにもいた。だが大人顔負けどころか、大人も負ける魔力量、そして王立騎士団をも倒す技量、それほどの者が今までいたのだろうか。


「あと理事長、これどう思われますか?」


 気怠そうな男は1枚の紙を渡す。それは”魔法分野”の筆記の最後の設問の解答用紙だ。


「その受験者の最後の設問の回答です。今回の合格者の圧迫を受けて最後に自己PR型の設問を設けたのですが、その者の解答は魔法陣のみ。そしてその重積数は2()0()です」


「おいおい」「適当に書いてるんじゃないか?」「ちょっと理事長、後でこっちも見ていいですか?」


「試作段階の魔法陣のようじゃな。明らかな効果はないがちゃんと発現するようじゃ。ということはそれ以下の重積数ならある程度の魔法を発現できる、と言ったことかもしれんな」


 その受験者の評価に会議室は騒然となる。


「もしかしてじゃが、こやつは2人組ではなかったか?」


「2人組かどうかは知りませんが今回の受験者で辺境のホグン村というところから2人受験しているのですが、その1人ですね。もう1人の方も優秀でその子も騎士団を圧倒していたとか。どちらも特撰級で受かってますね」


「ふむふむ、やっぱりあの2人じゃったか。ただもんじゃなかったからのう」


 少女の見た目をした理事長は1人で納得する。


「それで、最後の1人の特撰級はどんなやつじゃ?」


「もう1人も結構不思議でどんな子かというと無駄が多いって感じなんです。文章も長いし魔法も無駄に発現遅いし。この子も武の会場を選んだんですけど、なんだか無駄が多いって感じです。なのに、全部質がいいんですよ。騎士団にも渡り合ったとかで。1言で言うと異質ですね」


「かっかっか。とんでもないやつらが出てきたのお。いやあ、楽しくなってきた楽しくなってきた」


「生徒にとっていい風になるといいんですがね」


「今までも化け物じみた生徒はいた。そしてそやつらは今、何かしらの役目を背負っておる。大きな力は常に何かを背負う宿命なのじゃ。または、破滅するか、じゃな。はっはっは!今後が楽しみじゃのう!」


「まぁ特撰級は貴族枠も含めてみんながみんな化け物じみてますからね」「うむ、是非とも切磋琢磨してもらいたいものだ」「理事長の言うように楽しみですな」


 今までの会議室の興味や驚きは新しい芽の期待へと変わっていく。


「さあ、楽しい新学期の幕開けじゃ」

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