第二章 五十六話
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昼休みは終わり、最後の試験となる。
続々と受験生たちは実技試験を行う別室に案内されている。
「じゃあ次の受験生、用意してこっちに」
よーし、僕の番だ。
僕は持ってきた荷物を肩にかけ、立ち上がる。教室から出る時、名残惜しくなるのはなんでだろう。ここに来たのは初めてだし午前中しかいなかったのになぜだか後ろ髪を引かれるというやつだ。名残惜しくならない様に、ずっと通える様に次は生徒として帰ってくるからな。
最初のやる気のなさそうな僕たちの担当の試験官に連れられ、廊下を歩いていき教室とは違った小さな部屋へと案内される。僕たちの担当の試験官はまた教室へ帰り、僕1人で入室となる。
なんだかちょっと緊張するぞ。稽古とか実戦とかとは違った緊張が試験にはある。ええい、そんなことを考えても仕方あるまい。死にはしないんだ、飛び込んでしまおう。
失礼します、と扉を開けると部屋の中には机が1つ、別の試験官が1人椅子に座っていた。
「午前の試験お疲れ様でした。リラックスしてくださいね。じゃあ荷物を置いて机のところまで来てください」
試験官は物腰が柔らかいお姉さんだ。はああああ、リラックスリラックス。
僕は荷物を置き、机まで前に出る。そこには1枚の紙が置いてある。
「その紙に書いてあることが問題です。こちらでも確認のために復唱させていただきますね」
僕は紙に書いてある問題を見る。そこに書かれていたのは、
「『1つ4大元素の初級魔法を発現させよ。その際に4大元素の種類は問わない。』」
1つの4大元素の初級魔法の発現のみであった。
「質問があればなんでも言ってください。答えれる範囲で答えさせていただきます。あと魔法を媒介する魔道具は不正行為の観点から使用はできません。では、準備ができたらお願いします」
父様から貰った手袋は使えないか。オーケーオーケー。さて、どうしよう。初級魔法か、どの魔法でいこう•••。というか本当になんでもいいのだろうか?
「質問いいでしょうか。これは自分で改良している初級魔法でもいいんですか?」
「はい。構いませんよ」
なるほど。そっか、実技ってくらいだからそういう改良も含めて見ているんだろうな。貴族ならそれに付随する固有魔法を見たりすることができるし、そう言うことも含めての”魔法分野”の実技か。そう思うとこの出題から考えたらオリビアの筆記の最後の答えナイスだなあ。ここでその魔法も見せれるから一連の繋がりもあり一石二鳥だ。うーん、僕はどうしよう。
『ちょっと派手くらいにしてもいいんじゃない?』
先ほどのオリビアのアドバイス。そうだな。”魔法分野”の筆記の最後の設問に若干の不安要素が出てきたから、ここで念のためにアピールしておこう。そうと決まれば使う初級魔法は『火球』だ。
よーし。方針は決まったし、後は力一杯ぶっ放すだけだ。
「準備大丈夫です。ではいきます」
僕は初級魔法『火球』の魔法陣を組み立てる。
「あら。無詠唱魔法ですか•••でもちょっと、これ」
派手に見せる。そのために『火球』を選んだのは見るからに派手にできるからだ。熱量による光の輝き方、熱さなどが五感にアピールしてくれる。だからまず、文字列を熱量に関して組み換える。大量の魔力に耐えれるくらいの文字列へ。そして魔力量の多さを体感でもわかるように魔力場に干渉するくらいに爆発的に魔力量を注ぎ込む。
さあ、煌めけ。僕の『火球』。
今ここに僕の魔法が発現する。
「う!?ぁ、暑、熱いッ•••ま、魔力酔いも気持ち悪っ•••」
僕の『火球』はいつも以上に青白色に光り輝く。熱量も魔力を注ぎまくっているから果てしない熱を放っている。僕がこの『火球』に求めたのは太陽の如く、燃え盛る熱量だ。試験官殿これで驚かれちゃあ困りますよ。僕の魔法はまだまだこれから。さあ、僕の『火球』よ!もっと輝け!!そしてもっと煌めけッ!!!
「何してる!?」「尋常じゃない魔力だぞ!!」「おい大丈夫か!!」
僕がさらに魔力を注ごうとした時、扉が勢いよく開かれここの職員と思わしき人たちが数人飛び込んでくる様に押し寄せて入ってくる。
え、え、え?
僕は即座に発現中の魔法を魔力の供給を遮断し中止する。
「貴様、本当に受験生か?」
飛び込んできた試験官達に詰め寄られる。
「え、あ、僕は」
急な出来事で言葉が詰まりまくる。え、僕失格??
「いえ、みなさん落ち着いてください。ふー、はい。彼はれっきとした受験生ですよ。その力を澱みなく、全力で使ったまでです。とても素晴らしいことですよ」
部屋の試験官であるお姉さんがしんどそうながらも深呼吸して立て直しフォローしてくれる。
『突き抜けたことするよね』
オリビアの先ほどの別の言葉が蘇る。オリビアさん、僕は突き抜けたわけではないです。常に全力でやってるのです。そしたらなぜか今日は空回ってる様な気がするのです。
「ウィルくん、だったかな。この試験は大丈夫です。では、次の”実技”の試験へ向かってください。誰か次の試験会場へ案内していただいてもいいですか?」
大丈夫ってなんだろう。評価しますよってことだろうか、それとももう用済みだぜってことだろうか。お姉さんの変わらない笑顔がまたわからない。これ試験大丈夫なのか?危険人物に認定された気がするぞ、おい•••。
なんだか警戒されながらそこにいた別の試験官が僕を次の試験会場まで誘導してくれた。




