第二章 五十四話 【入学試験】
検問所の検問を何事もなくパスして、僕たちは王都入りした。
王都は一言で言うと華やかである。夜であろうと人々は賑やかで、客引きも熱心だ。そこら中から笑い声や怒鳴り声、人々の活力で満ち溢れている。馬車の中の人たちが言ってたのは王都『マドワキア』は夜でも眠らない街らしい。
「ねえウィル見て!あの人、耳が生えてる!あれ獣人族かな•••?」
「さすが王都だ。色んな人種の人がいるね」
王都は人も多ければ人種も様々だ。いやー、楽しいなあ。ここで生活できたら色んなことが経験になるに違いない。
「オリビア、絶対受かろうね」
「もちろん!」
今さっきは都会の風に当てられてついつい浮かれてしまっていた。気を引き締めろよ、僕。よし、後は明日の準備して、しっかりと休み、明日に備えることだ。
僕とオリビアは馬車から降りて、王立が用意してくれた宿泊所へ歩いて向かう。その間に街並みを見ながら歩いていく。石畳の情緒あふれる綺麗な道、木製だけでなくレンガや鉄製の物が加えられ壁は時々カラフルな家々。美しく、風情のある街並みだ。夜の月明かりに照らされることも相まってその風情の良さに大人ぽい雰囲気がアクセントとなり重みを増している。
この雰囲気も都会に来たって感じだ。
僕たち2人はそんな街並みを外れていくようにてくてくと歩いていく。
試験会場である王立中等学校と用意された宿泊所は中心地から離れている。宿泊所に進むにつれて街の喧騒が少しずつと遠のいていき、その喧騒が遠ざかっていく感じ、人気が無くなっていく感じがだんだんと試験への現実味に比例してくる。
そして遂に王立中等学校へと着く。
「う、わー」
「これは立派だ•••」
王立学校の建物の特徴として、小中高等学校が1カ所に集まっていることである。それぞれ校舎はエリアで分かれており、小等エリア、中等エリア、高等エリアとなっている。
今僕らがいるのは中等エリアの校門の前。ここに警備員がいるので、その人に受験生であることを言って、手続きをして、宿泊所の鍵をもらい、宿泊所への案内の説明を受けて行くといった段取りだ。
最初はなんで初めから宿泊所に直接行かないんだろう?と思ったけどなるほど。これは直に校舎を見ることで王立中等学校で学ぶことを具体的に想像することができて、受験合格の意欲が湧いてくるってわけか。くぅ、まんまとその通りになっちゃったよ。絶対合格絶対合格。
そんなわけで校門の前にいるわけだけど、校門からでもわかる学校の荘厳さ、神聖さ、と言うのだろうか。ぱっと見4階から5階はあるであろう大きさの校舎が3つ。そこから無駄な装飾はないが彫りによる立体的で神秘的なデザイン性あふれる白を基調とした校舎の見た目。校舎自体のでかさと見た目の気品といったコントラストが学校自体の存在を大きく魅せている。
オリビアは学校の威厳あふれる佇まいに感動している。僕だって大感動だ。ヴァルヴィデアの王城だってもちろん凄かったけど、あれは偉大さというか、そっち系だ。でもこの王立中等学校は聖堂とかそっち系の神聖さが宿っている感じである。
「いやあオリビア。モチベーション最高潮だね」
「うん、こんなの目の前に見たら行くしかないって思うよ」
よし、僕とオリビアのやる気はマックスだ。後は明日に備えて無理はせず、だ。
そのまま余韻を噛み締め手続きをして僕たちは宿舎に向かった。向かいながら明日の試験のために魔法の実技の確認をする。
僕は念の為にオリビアが全ての属性の初級、中級、上級魔法を無詠唱で発現できるように教え込んだ。初級は質と形状維持と方向性の基本的な魔法。中級はそれに文字列を加えた反発点が多くなった魔法。上級は二重魔法陣による多重魔法陣を使用する魔法だ。
「どうかなウィル?」
オリビアは無詠唱で手の平に魔法陣を形成し初級魔法『火球』を発現させる。その発現された火球は青白色に輝いている。
「うん。すごくいいよ。逸出現象もないし、しっかりと魔力が滞りなく使われてるね。とても質がいい魔法だよ」
オリビアももうこのくらいの魔法では完璧のようだ。よし、これなら魔法の実技も大丈夫だろう。気になるとすればまだ逸出現象が大きければ評価される時代だ。そこに点数をつけられるならどうなるかわからない。でもそれは僕の魔法哲学に反する。オリビアもその事についてはオリビアの無駄を嫌う性格からも逸出現象が少ないことを望んでおり、僕と同じ考え方のようだった。もし逸出現象が激しい方が良くてそれが評価されるならその時はその時だ。2人で悲しもうとお互い腹を括っている。
そうこう2人で試験の復習をしながら向かっているといつの間にか宿泊所についた。
宿泊所は男女別々になっておりここで僕とオリビアは解散。僕は部屋に入り荷物を紐解く。ホグン村からの移動は大変だったけど刺激になることだらけだった。よし、明日のために今まで勉強してきたことをもう一度ざっと復習して明日に備えて寝よう。
さあ、試験の幕開けだ。
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試験当日の朝。
僕たちは試験会場である王立中等学校校舎へ向かう。その向かう間に受験生がいるがみんな試験へ向けて集中しておりピリピリとした緊張感が歩道に漂っている。僕も身が引き締まる。
僕とオリビアも極力話さず、集中力を保ち校舎へと入る。
昨日見た校門と校舎は全くと言っていいほど目に入らなかったな。ふう、いい集中の仕方だ。そのまま試験会場である教室に入り、席につく。教室は階段式になっており、カンニング防止のためか1つ前の席には誰も座らず隔席間隔で受験生が座っている。教室は今、私語などなく、試験の緊張感に包まれている。
試験時間が近づき、ほとんど席が埋まったとき、前の教卓側のドアから先生らしき人が入ってくる。
髪はぼさぼさ、顔はくまがひどく生気が漲っていない。明らかにやる気のなさそうな男の人が来た。この人本当に先生か?って思うくらい気怠げだ。
「よーし、みんな着席ご苦労。数は•••揃ってるな。今回試験の担当をさせてもらうここの教員だ。自己紹介は、まあ受かってから改めてって事にしておこう。まずは机の上のものは筆記用具だけにしろよー。準備はいいなー?じゃあ早速だが”基礎勉学”の筆記の用紙を配るぞー」
「「「!?」」」
瞬間、先生が手にある試験用紙に魔法を発現させる。用紙は浮遊し、僕たちのそれぞれの机に机と机の間の歩き道から隊列を組みきっちりと飛んでくる。おそらく風の元素の魔法だとおもうけど、紙一枚一枚をコントロールする技術とそれぞれの机に置く正確さに受験生みんなが驚きを隠せない。紙の枚数だってぱっと見この教室の受験生は30人くらいだからそれくらいの数がある。それを気怠るげに当たり前のように魔法を発現させて配るなんて•••さすが•••天下の王立様、最初から驚かせてくれる!
配り終えたと同時に試験開始の鐘の音が鳴る。
「では、試験始め」




