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第二章 五十話

 王立へ通う生徒は殆どが貴族出身だ。それはもちろん貴族による献身的な寄付などで成り立っていると言うこともある。その裏は王に取り繕うために色々な政治工作もあるのだとか。政治的なことはよくわからないから僕にしてみればそんなのは関係ないとして、ただお金だけ払って入れるかというと、そういうわけではない。

 献身的な寄付をしているのはもちろん王に忠誠を誓う上級貴族たちも多く、その子息たちが有能じゃないはずがない。その他の貴族たちも面目を潰さないようにやはり最高の教育をした者がくるだろう。地位とお金があれば最高の環境を整えて平均以上の有能な人材を作ることはできるのだ。そういう循環によってどうしても貴族の割合がほとんどを占める。

 だけど、もちろん貴族じゃない人たちにもとんでもない才能を持った人がいる。オリビアだってそうだ。ヴァルヴィデア流剣術をこの歳で免許皆伝し、さらに勉学の才能だってある。そういった才能を漏れさせないために”一般枠”が一定数定められている。もちろんそれは狭き門だ。王立に行き卒業できれば職は保証されている。つまり将来が約束されているということ。一般枠は壮絶な受験戦争となる。各々が並外れた才能を持っているかもしれないし、それこそ血の涙を流すような努力をしてその門をこじ開けてくる者もいるだろう。そういった先鋭が押し寄せてくる。まあ、その貴族と一般枠の間に確執はありそうだけど。でも、そこに僕たちも突っ込むってわけだ。

 主に受験科目は”基礎勉学”と”魔法分野”と”実技”である。この中で”実技”は多分僕もオリビアも大丈夫だと思う、たぶん。”魔法分野”にも実技はあるけど”魔法分野”の実技は向こうに与えられた問題に対して発現するような、魔法がどれくらいできるかの確認のような実技だ。本来の”実技”は自分の得意なことをしろと言った自己PRのような試験である。恐らく一般枠で化け物がいるとしたらこの”実技”の範囲だと思うけど父様とやりあえる僕らなら恐らくきっとたぶん平均以上であるはず、という考えだ。”魔法分野”は筆記と少しの実技とのこと。だからやるとしたら”魔法分野”の筆記と”基礎勉学”を練り上げることだ。

 筆記は特別な才能なく勉強すれば点数を取れる範囲である。そして恐らくみんなもそう思っているはず。誰もが特別な才能なく点数を取れるという範囲は本気なやつはもちろん詰めてくる。逆に言えばこの範囲を落としたら不合格、さらに言えば1問のミスですら不合格に繋がるだろう。だからこその猛勉強だ。後は”魔法分野”の実技を乗りこられるように満遍なく魔法を発現できるようにして、平均以上を目指す。後はその時の受験生の質と運次第だ。

 これからは筆記の勉強を詰めて、”実技”も蔑ろにせず、さらに運を味方につけるべく一日一善を徹底すること。これが王立合格への道だ!!


 よおおおし、やることは全てやるぞおおおおおお!!!!


 こうして僕たちの受験戦争が始まった。



 それから、僕たちは毎日勉強をしまくった。一般教論的なところは母様に教えていただき、『王立中等学校へ合格の道!』的な参考書をなんとか入手して何周もオリビアと一緒に解きまくった。稽古も切り詰め、オリビアも戦いに慣れてきて”真”に迫る強さへと成った。さらに一日一善は欠かさなく、困った人が村にいたら2人で積極的に助けに行った。王立中等学校の試験は朝から始まるために1日のスケジュールも試験に合わせてるように設定してしっかり毎日寝れる時間も作り万全の体制を整えた。やれることは全てやろうと毎日を懸命にオリビアと駆け抜けた。


 いつの間にか季節が移り変わり、夏が来た。暑さにも負けずにこの暑さを忘れるくらい没頭すればいいとお互いに焚き付け合い夏の暑さを忘れるほど詰めて、そうこうしていると次に涼しい秋がきた。

 過ごしやすい季節だからこそ詰めれるとさらに根を詰めた。そしてそんなことをやる気だけで継続していくと、いつの間にそんな一年はあっという間に過ぎて冬となった。


 王立中等学校の試験は年明けの7日後と決まっている。マドワキア連合王国は年明けを大々的に祝う習慣がある。それは周りの6小国も一緒でヴァルヴィデアでも年明けはお祭り騒ぎだった。でも今は違う。年が明ければ残りの猶予は7日になる。僕たちからすれば年明けはラストスパートの合図なのだ。今回の年明けは油断せずに今までの受験ルーティンをしっかりと崩さずに過ごそう。


 それから、冬も体調を崩さないようにしっかり勉強に稽古に励んだ。


  

 そして遂に、年が明け試験7日前となった。


「オリビア、あと7日後だね」


 村では朝からみんなでお酒を飲み、みんなで楽しくおかしくお祭り騒ぎになっている。それを横目に僕たちは家にこもって絶賛勉強中だ。


「うん。外は楽しそうだけど、学校に行くほうが今は楽しみ。前まではあんまり想像できなかったけど勉強していくうちに、対策していくうちに王立学校の凄さを知ったよ。だからそんな凄いところに来る人たちってどんな人なのか凄い楽しみ。私たち大丈夫かな?」


 オリビアの物書きのスピードが落ちる。それは不安の現れだ。僕だって不安はある。今の勉強法が正しいのか、はてまたここまで勉強したのに落ちることもあるかもしれないという恐怖も。だからこそ、


「わからない。けど、やらなきゃ受かりはしないんだ。後は大丈夫かどうかは結果が教えてくれるよ。だからやれること全てやって、ダメだったときまた考えよう」


考えても仕方ないことは考えない。その分やれることをやるだけだ。あとはそれを継続して走り抜けるだけ。これもやってない、ああすればよかったは言い訳だ。そんな逃げ道を作らないために、悔いなど残らないように、全てを出し尽くすために、今はその準備だ。


「ウィルは、魔法バカだけど、一緒にいると前向きになれるよ。ありがとう。うん、まだまだやれることはある!頑張るぞー!!」


 オリビアが微笑みながら気合を入れる。元気になってよかった。僕だってオリビアのその笑顔に助けられるぜ。別に見惚れて勉強が手につかなくなってないぜ?うんうん、よし、ラストスパート、駆け抜けるぞおおおお。


 そして、5日が経ち、王都に移動する試験前日がやってきた。

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