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第二章 第四十七話

 オリビアが目覚めた。でも、なんだか様子がおかしい。僕はあんまり人の目を見て話すのは得意じゃないけど、オリビアはいつもばっちり人の目を見て話す。なのに今のオリビアはなんだかよそよそしい。まだ体調が万全ではないのだろうか?


「オリビア体調は大丈夫?無理はしちゃいけないよ?」


「はう!?」


 えー?本当にどうしたのオリビア?

 どうやらまだ体調は万全ではないらしい。


「な、なんでここにいるのウィル?ここわたしの部屋だよ」

 

 なんだかそっけないオリビアだけど言ってることはごもっともでど正論だ。いくらオリビアが心配だったとはいえこれは失礼した。


「ごめん、オリビアのことが心配で側にいたかったんだ」


「はう!?」


 オリビアが手で顔隠して布団に顔を埋める。

 あれー?どうしちゃったのオリビア?本当にまだ体調が悪いんだろうか。

 

 そんなこんなのやり取りをしてるとオリビアのお父様とお母様がオリビアの体調を見に部屋を訪れた。

 幸いにも、目立った傷跡はなく擦り傷程度だし、魔力も回復してオリビアのお父様とお母様の前では体調は大丈夫のようだ。オリビアのお父様とお母様はその無事なオリビアを見てとても安堵して抱きしめる。とても、あたたかい家族だ。

 もうオリビアは大丈夫だ。大丈夫なはずなんだけど•••僕の前ではなぜか吃ったりしてる。なんでなんだ?

 まぁ、あんな悪意のあった事件の後だし、魔力欠乏も起きたし、まだまだ疲れは取りきれていないのだろう。うん、今日はとことんゆっくりしてもらおう。


「とりあえずオリビアが無事で良かったよ。じゃあ僕はこれで帰りますね」


 オリビアのお父様とお母様もありがとうございました、と言って去ろうとするとオリビアが僕の服を摘む。


「ウィル、また明日ね」


 オリビアからの上目遣い、そしてちょっと寂しそうな儚げな顔。髪が潮垂れて、その顔は本当に次は会えるのだろうかと不安な顔、その気持ちを表すかのようにこちらに寄り添う仕草。

 

 瞬間、僕はオリビアの可愛さで全ての思考が途絶えた————危ない!!意識を戻すんだ僕!!

 

 人の可愛さで意思が吹っ飛びそうになるなんて稀な体験だ。


「もちろん。また明日ね」


 そうやって、僕はいつも通り帰路に着いた。



「とういうことがあったんです」


 僕は事の成り行きを、食事時に父様と母様に告げた。


「そう、か。私がいない時にそんなことがな•••何事もなくよかった。よくやったウィル。ここにはいないがオリビアもよくぞ戦った」


 父様も母様もすごく心配をしてくれた。

 そして無事であること、賊を撃退したこと、その観点にとても喜び誉めてくれた。


「してウィルよ。その最後にいた身体強化の魔法を極めた男を途中から無力化したと言ったな。それは何かに()()()、ということか?」


「父様、僕はそれが知りたいです。なので明日、父様が良ければお手合わせ願えませんか?」


 父様が口角をあげ、微笑む。穏やかなのに、空気がピリつく。


「ちょっとあなた、完全に戦いを楽しむあなたになってるわよ」


「ハハハハハ!これはすまん!遂に、遂に辿り着いたかと思ってな!血が湧き、肉が踊ってしまったわ!」


 父様は相変わらずである。ただ、僕も自分の力を試してみたくて、同じような感じだ。


「もう、親子揃ってなんだから」


 はぁ、と呟く母様。でもなんだかんだ、母様も楽しそうだ。戻ってきた家族の空気。もう家族がバラバラになるようなことは僕も嫌だ。こうして帰ってこれたことが幸せなんだ。やっぱり帰るところがあるっていうのは、とても幸せなことだ。



 早朝。僕は変に目覚めてしまった。今日の手合わせが楽しみで、でも緊張していて気持ちがなんだかふわふわ地面に足がついてない感覚でいる。そのためか気持ちが昂って変に目覚めてしまった。なんだか落ち着きがないので外の空気を吸おうと外に出る。

 

 するとそこに、父様もいた。


「ウィルやるか?」


 僕は早くこの型を、自分を、試したい。

 僕は黙って頷いた。


 僕と父様はいつもの稽古場へ向う。もちろん父様は2本の木剣を。そして僕は()()()()()()

 父様は何も言わない。実際に戦って確かめたいのだろう。父様はそういうお方だ。

 そして、稽古場に到着する。2人の間に会話はない。お互いに対峙し、構える。父様は両手に木剣を持ち、正眼、観音開きの構え。僕は左手を前に、右肘を腰に軽く当て手刀の構えを。


 そして、


「強化」


 僕は自分の肘から手にかけて付与を施す。まだイメージが強くできないからの詠唱だ。施す付与は『補強』。真剣じゃないために『斬れ味補正』はいらない。


「ふはははは、面白い。それがウィルの”真”へ至った型か」


 父様が腹からくぐもった声を発する。


「いつもはなんとなしに合図はなしだったな。だが、今のお前からは”真”へ至った者の雰囲気が醸し出されている。そのような相手にこちらが名乗らなくては失礼というもの。私は”真・ヴァルヴィデア流剣術鬼人派”の使い手、ウィルよ、本気で行くぞ」


 父様の爆発的な身体強化の魔法の発現。

 僕もそれに呼応し爆発的に身体強化の魔法を発現。


 目の前から父様が消え————いや、見える、見えるぞ。

 父様は身を低くして僕に直進、その豪剣で僕に迫ろうとしている、その未来が見える!僕もすかさず前進、その勢いを殺す!


 僕の手刀(つるぎ)と父様の木剣(つるぎ)が激しく交わる。その音は手と木剣の混じり合う音を超え爆発音だ。よし、本気の父様の豪剣を止めれるならほとんどこの世の攻撃を止めれるだろう。

 そんな確認も束の間、父様の息づく暇もない猛攻が始まる。その猛攻に、意図を感じる、前の未来視よりも細かく、その動きが伝わる。父様の猛攻が細かく()()()

 父様の猛攻を捌くだけでなく、こちらも反撃を加える。前みたいな防戦一方の稽古ではない、不意をつく戦いではない。本当の、凌ぎあいだ。

 視える、動ける、戦える。それはこちらだって攻めに転じれるということ•••!

 爆発的な身体強化の魔法のオンオフ、僕はいつも誤魔化すためにしていた身体強化の魔法にムラをつける方法を、不意をつくのではなく意図的な攻めに使用するために使用する。

 

 父様は言った。僕の身体強化の魔法の使い方は切ってみないとわからぬ、本物と勘違いするほどの残像だと。

 

 さあ、こちらの番だ。


 残像を発生させつつ僕は身を低め、父様の元へ迫り潜り込む。

 父様は残像に一瞬気を取られ僕を見失う。


 わかる、わかるよ父様。その時に父様がやるのは()()()()でしょ?そしてその未来はもう視えている。

 

 あの時は対応できなかったブッ放し。僕の思考と身体の動きに差がなくなった今、その1つ1つが鮮明に視える。つまり、それは()()()()()ということ。


 父様の無数の斬撃が僕に迫る。僕はそれを全て()()()


 ッ!父様もすごい!!


 全て避け切れるとわかった瞬間、無数の意味のない斬撃のようにみえる攻撃が、上手く自分の得意な間合いと位置へ誘い込むような剣となる。


 僕はいつの間にか右手片手上段で構える父様の目の前にいた。


 考える隙もなく父様の渾身の上段からの真っ向斬りが来る————でも、それは考える必要もない。それも()()()()()。父様の意図がわかる!なら、その情報量をかき消すくらいの猛攻をこっちも仕掛けるだけ!!


 父様の渾身の真っ向斬りを臆せず懐に入り込み、その柄を強化した手で逸らしそのまま身体を独楽の如く回転させ胴体から首にかけ巻きつくように止まることなく回転切りをしようとする。


 が、


 父様もその行動を察知し上段を振り下ろした力を利用してそのまま身を放り投げるように前転、さらに僕の斬り付けを左手の片手剣で捌き切る。

 

 今は父様を押す時!このまま間合いは取らせない!!


 真っ向斬りからの前転による回避、片手での僕の斬り付けの防御、父様、それは無理な体勢ってやつだ。僕は1呼吸も置くことなく距離をそのまま詰める————だが、視える未来は無数の父様の斬撃。まじか父様、その体勢でもブッ放しできるのか!?いや、こっから先は技とか駆け引きとかじゃない•••どっちが先にやるかやられるかのやる気の問題だ!!!父様の無理な体勢のブッ放しはそう言う意図だ。私は無理をしてでも勝ちに行くぞと。

 

 考えるな、反応しろ!

 

 父様のブッ放し、すべてを見切る、反応反射、身体を動かせ、イメージを解き放て、止まることなく攻め続けろ!!

 

 体を回転させ体全体で回転斬りの要領で攻め続ける。回れ回れ回れ、感覚でイメージで戦闘を解き放つんだ。


 自分が何を考えているか、身体がどこまで耐えれるか、どれほど動いているか、もはやわからない。父様も休まずの猛攻。攻めと攻めとのぶつかり合い。周りは見えない。視野が父様の動きのみを捉えるように狭くなる。集中しているのか俯瞰しているのかも理解できない。ただそこには僕と父様の”負けない”という意思のぶつかり合いだけだ。


 もう何度目かもわからぬほどの鍔迫り合い。何度目かもわからぬ爆音の継続————しかし、どんな時も、どのような事も、終わらない事柄はない。


 遂にその音が止む。


「私も10の時に父上を超え”真”にたどり着いた。なるほど、その時の父上の気持ちはこのようなものであったか•••うむ、悪くない」


 父様は今僕を切らんと木剣を振り上げている。僕は、父様の片方の木剣を手で逸らし、右手を喉に突きつけている。僕の方が()()早かったのだ。


「ウィル、よくぞたどり着いた」


 僕と父様の激しい戦いは、僕の勝利で幕を閉じた。


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