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第二章 第四十六話 【オリビアの気持ちは突然に】

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 微睡の中で、わたしは夢を見るようにウィルに出会ったことを思い出していた。

 ウィルを初めて見たのはたまたまだった。

 村の外に家族で少し用事があって遠出をしていて、村に帰っている最中、林の奥から微かに何かと何かがぶつかる音が聞こた。お父さんとお母さんはあんまり気にしてなかったけど、わたしは気になってお父さんとお母さんに先に帰っててって言って林の中に入って行ったのを覚えている。

 林を抜けるとそこは更地になっている場所があった。そこにいたのは男の大人の人と、私と同じくらいの男の子だった。2人は木で出来た剣なようなものを持って対峙している。

 

 いや、絶対に男の子方勝てないでしょ!なにしてるの!


 わたしと同じくらいの子が大の大人を相手にしているのを見るとそう思うのは仕方のないことだと思う。結果はもちろん男の子の方がすぐに剣を突きつけられて降参したような形に終わっていた。でも、その一瞬の攻防はとてつもなく凄まじかった。目に見えぬ速さ、物を言えぬ圧力とはこのことだと思う。

 わたしはその男の子が大の大人に善戦している姿を見て、わたしの可能性が広がるのを感じた。


 今日の村の外へ行く用事は何回目かの小等学校の説明を聞きに行くことだった。わたしは小等学校へ行く権利がすでにあったけど行くのを悩んでいた。お父さんとお母さんのそばにいて何か力になれたらいいなと常日頃考えていたから。小等学校の説明を聞くと、たくさんのことを学べるしたくさんのいろんな人と接することができるしとても楽しそうなのはわかる。そして、そんなところで学び色んな人に接することをお父さんとお母さんは喜び、安心するだろう。でも、小等学校•••そんなに焦ってまで行くようなところなのだろうかとも悩んでいた時だ。そんなときにこの2人に出会ってしまった。

 普通ではない何かがある、普通ではない何かを持っている、と。もちろん小等学校に行っても隠れた化け物じみた人はいると思う。ただ、この2人は明らかには()()()()()()。でも普通に学校に行ってお父さんとお母さんを安心させてあげたい気持ちもある。

 

 わたしはしばらく悩んだ。


 そしていくつか日が経った日、お父さんとお母さんに林の向こう側に住んでる人はいるのかと聞くと最近引っ越してきた家族がいるとのこと。狩で捕まえた食材も分けてくれるしとても気さくな言い方たちだ、と教えてくれた。

 少し見てみようと思い、ある日夜に家を抜け出してちら見しに行った。そこには素振りをする男の子がいた。熱心に素振りしていてその熱意に見惚れていると目があった気がした。何も悪いことはしていないけど反射的に逃げてしまった。

 

 やっぱりこそこそはダメだ。直接行ってみなきゃ。


 ちら見した次の日に、わたしは林の奥の更地へと赴いた。そこで繰り広げられる光景はまさに圧巻。大の大人の人の気迫、小さい男の子の魔力の高鳴り、どれをとってもその時の衝撃は忘れることはないだろう。

 わたしの本能が囁いた。この人たちと一緒にいる方が何倍もお父さんとお母さんのためになる、って。


 2人の稽古(たたかい)が終わり、わたしは行こうかどうか迷っていると大人の人がわたしに来るように声をかけてくれた。正直、初めての人だったしでるかでまいか足踏みしていたところだったのでとてもその声かけは1歩を踏み出すわたしの助けになった。


「お、オリビア!」


 自分の紹介の時に少し緊張して声が上擦ったときはちょっと恥ずかしかったかな。

 

「僕はウィル」


 その時に会った、あの日わたしと同じくらいの男の子がウィルだった。

 初めて対面した時、前髪が長くてよく目が見えなく、なんだかもっさりした人だなって思った。ただ生まれつきか、生活していく上でなったかはわからないけど、その白い髪色と悲しそうな時々見える目からはとても苦労した過去があるのかななんてのも思った。そんな儚げで頼りなさそうな男の子があんな一進一退の攻防をしていたと思うと、不意にぞくっと鳥肌がたった。この子はそれほどまでに必死なんだと。


 わたしはそれほどお父さんとお母さんのために、自分のために、必死になったことがあるだろうか?


 わたしはこの2人に出会ってさらに決心が固まった。


「あの、わたしも稽古に混ぜてください!」


 平然と、その言葉を口に出せた。わたしはもう止まらない。お父さんとお母さんには後でうんと謝ろう。学校はまだ待ってって。


▼▲


 そこからはウィルのお父さん、今でいう師匠がわたしのお父さんとお母さんに話をしてくれた。お父さんはいつもわたしのことを応援してくれる。そしてお母さんは泣くほどわたしのことを想ってくれている。学校に行かないことについては何も言わない、お父さんとお母さんはいつもわたしの味方だ。こんな両親の元に生まれてきてとても幸せだ。やっぱり、わたしはお父さんとお母さんのことが大好きだ。だからこの2人のためにわたしは力を得たい。


 それからわたしとウィルと師匠の稽古が始まった。


 剣技のけの字も知らないわたしはヴァルヴィデア流剣術っていう剣の型を、そして基本的な体捌きをまずは徹底的に練習することとなった。でも普通にしていてはウィルと師匠には追いつかない。ならば、わたしは自分に合わない動きは無くして最小限の動きで剣の型、体捌きを準えられるように練習しまくった。それは結果として、ヴァルヴィデア流剣術の最小限の力で最大限の成果をえるといった考えに当てはまっていたのか、わたしは”早さ”を手に入れた。ウィルと師匠にはまだ全然歯が立たないけどその筋はとても褒めてもらえた。悔しいけど自分のやっていることが正しいやり方なんだとわかって喜んだのを覚えている。

 それから月日が経ち、わたしも実戦の魔法を教わるように師匠に言われ、ウィルのお家にお呼ばれした。その時にたくさんの世界の話をした。人種はたくさんいてそれぞれに思いがある。魔法は人の役に立とうとして作られたのに人を傷つける道具にもなっていること。小さな村でもそうだからもちろん世界でも良い事と悪い事は共存しているのだと改めて考えさせられた。


 わたしはお父さんとお母さんのために力を得たいと思ってたけど、できるならば世界の誰にでも手を差し伸べれる力が欲しいと思った。


 その時にウィルも同じ気持ちっていうことを知ってなんだか心強かったな。


 それからいよいよ魔法の実戦となり初めて身体強化の魔法を使った。これはすごかった!体が羽のように軽くなり、自分の思考がイメージが可能性が広がる感覚。ただ、ウィルと師匠はその先の身体強化の魔法ができるようでまだまだこれからだと自分を鼓舞した。

 その時にわたしの魔力は金色でとても珍しいとウィルは言っていた。どうやら魔力にも色々種類があるらしい。ウィルはあんなに人の目を見て話さないのに魔法のことになると目をキラキラさせながら語るからギャップが凄かった。ウィルのお父さんとお母さんは顔が整っているんだからきっとウィルも顔が整っているのに、なんだか勿体無いなあ。まあ人には色んな事情があるんだろう。そう言えば、ウィルはわたしの金色を見て珍しいって言ってたけど、ウィルの()()()()()()は珍しくないのだろうか?まあ、今は自分のことだ。とりあえずは言われたことをしっかりとやろう。

 

 わたしは家に帰っても身体強化の魔法をしっかりと勉強してたくさん使用した。そのおかげで稽古には使えるようになった。でもウィルや師匠は明らかに手加減している。師匠はまだいい。二刀流の師匠を見てるから最初から稽古用だとわかってるし。でもウィルは明らかに手加減してるのが気に食わない。勝てないのはもちろんだけど、それでもなんか嫌だった。たぶんこれがわたしのプライドってやつなのだろう。わたしはそれから密かにたくさん身体強化についてさらに深く考えた。そしてわたしは至ることができた、駆け巡る身体強化の魔法に。筋線維1本1本に流すことをイメージして魔力を流し込んで完成することができた。よし、あとはこれが本当に使えるかどうか、ウィルに試してやろう。わたしは悪戯な笑みを浮かべて楽しみに夜を寝た。


 いつもわたしたちの稽古にせーのはない。でも今日は違う。ウィルに対して挑戦の叩きつけだ。


「今日は本当にウィルに一本いれちゃうからね」


 わたしは確認した。本当に対応できるのか、と。

 結果は惨敗だった。ただ、ウィルが本気を出してくれた。それがなんだか嬉しかった。わたしもみんなのところに段々とたどり着いてきてるんだって。

 でも、ウィルはおかしい。だってわたしの動きがなんだかわかってるみたいに動くんだもの。時々師匠と言ってる未来視ってやつだろうか。なんだかインチキだ。しかも初めて真正面でのウィルの突発的で爆発的な魔法の発現による魔力酔いを食らったけど、本当に意識が飛ぶかと思った。まだまだ差は大きいようだ。

 駆け巡る魔法は大丈夫だったようでウィルはわたしに約束通り普通の魔法も教えてくれることとなった。

 稽古の前に魔法を、その後に稽古をというようなルーティンができた。

 

 そして、師匠との手合わせで認めてもらうことができた!師匠にもわたしは本気を出させたのだ。本気の師匠はやっぱり次元が違った。その圧力もその技も、しかもまだその時は二刀流じゃなかったからさらにこの上があるのだ。ということはまだわたしも強くなれるということ、それだけでもわくわくだ。そしてわたしはヴァルヴィデア剣術の免許皆伝者となった。

 

 その時に真・ヴァルヴィデア流剣術について説明を受けた。


 どうやらウィルと師匠はヴァルヴィデアのお偉いさんだったらしい。まあ、でもそれはそうだろう。師匠は明らかに強さがおかしいし。そんなのは関係ない、わたしはこの2人の強さに惹かれて稽古を頼んだんだ。出生なんて今更興味ない。わたしにとったらただのウィルに、ただの師匠だ。


 そしてそんな平和な日々が、みんなの善意で溢れる日々が過ぎていったある日。今の悪に満たされた事件が起きた。


 わたしがもっと体を上手く扱えれていれば、上手く立ち回ることができていたら。悔しくて悔しくて、悔しい事件だった。魔力欠乏でひとつも動けなくなった時は本当にもうダメかと思った。その時に、ウィルが駆けつけてくれた。

 

 そしてウィルはその戦いで”真”へ至った。


「オリビア!」


 全てが終わった時、ウィルがわたしに駆け寄ってくれた。いつもは目を合わせないウィルだけど真剣にわたしを見て、身の安全を本気で心配してくれた。下から見上げてみるウィルの素顔、なんだ、やっぱりかっこいいじゃん。その真剣な表情のウィルに見据えられてなんだか胸が高鳴る。なんだろう、この感覚は?

 何も反応しないわたしを見てウィルの表情は段々と曇っていく。もう、そんな悲しい顔は似合わないよ。


「ウィル、そんな悲しい顔しないで。わたしはウィルのおかげで助かったよ。ありがとう」


 本当に、ウィルのおかげだよ。わたしはウィルに出会えて本当に良かった。わたしはウィルがいる安心感で微睡についた。


 そのあとはなんだか夢半ばで家に着いて安心してそのまま寝た気がする。


 そしてまた目を開けると、ウィルがいる。

 あれ?ウィルになんでここにいるの?とかわたしの部屋だよ?とかいうこといっぱいあるのになんだか言葉が出てこない。ウィルを見ると胸が高鳴ってなんだか気恥ずしくなってしまう•••なんだろう、これ?

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