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第二章 四十三話

 ゆらりと男は帯剣している剣を抜く。

 剣を片手で持ち、だらりと下に向ける。

 

 真、剣だ。 


「大丈夫、殺しはしねえよ。なんせ重要な商品だからなあ」


 ニチャアと気味悪く笑う男。男のその気持ち悪さの嫌悪感からなのか、魔力切れを起こしそうからなのかわからないけど吐き気が込み上げてくる。

 

 でも、本当に魔力は切れそう•••。

 

 そして、その男は全身に駆け巡るように魔力を走らせる。これは駆け巡る身体強化の魔法———やっぱりただものじゃない!!


「あんまり抵抗すんなよ?ついつい傷つけちまったら大変だからよお」


「ッ!」


 男が距離を詰めてくる。わたしもその動きになんとか対応し距離を取る、が、ジリ貧だ。魔力切れすれすれの状態、どうしても受け身になってしまう!


「おら、逃げんなよ!」


 男の逆袈裟斬り、剣の腹を拾った木の棒で弾き防ぐ。


「器用なことするなあ。でもまあ、いつまで持つか!」


 男はやったら滅多らに剣を切りつけてくる。そこに型はないが、妙に形になっていてこっちも防ぐしかない。こいつ、完全に実戦からくる我流の形だ•••こんなやつ、こんなやつ!こっちも全快なら絶対にやられない実力があるのに!!


 何度も凌ぎきっていくが、駄目だ、もう魔力が切れそうだ•••。


 何度目かの鍔迫り合いでわたしは耐え切れず、相手の勢いを防ぐことができなく難なく吹き飛ばされた。


「は!逆によくそんなカスみたいなもんで持ち堪えてたってもんだ!」


 く、そ、体、動いてよ。

 

 体に無理を言わせてなんとか立ちあがろうとするが、体は1つも動いてくれない。息が上がる、目の前がところどころぼやけて見える。男が何か言いながら近づいてくるが、そんな男の声もなんだか遠い。これが魔力欠乏ってやつなのかな•••。


 お父さんお母さん、ごめん•••。


 その時、わたしの目の前に1人の人影が差した。ああ、この溢れんばかりの魔力量は


「オリビア!大丈夫!?」


 声を聞かなくてもわかる、


「ウィル、助けて•••っ」


 わたしの前に、ウィルがいる。



 僕は稽古場でオリビアを待つ傍で準備運動をしていた。でもなんだか集中できなかった。その集中できない原因は、あの商人だ。明らかに武道に精通したものの体運びだった。父様の未来視ってわけじゃないけど、僕の直感が何か違和感を受け取っている。


 そしてその直感は林の向こうから発現される魔法で現実となる。


 これは、オリビアの身体強化の魔法だ。なんでこんなところで?何かトラブルでもあったのだろうか?


 僕はすぐに稽古用の木剣を手に取って駆け抜ける。ただの野生の動物に襲われたくらいであってくれ、と願うがあの商人のことがどうも頭から離れない。何か人為的な狙いがあるのならそれが組織だっているようで1番恐ろしい。僕は嫌な予感に付き纏われながら林へ駆けつける。ここから林までは少し時間がかかるし林のどこら辺にいるかでも時間に差が生まれる。どうか、間に合ってくれ!


 林の中に入り込む。林の中では幾多の打撃音が響き渡っている。やっぱり、これは野生の動物と戦っている音数じゃない。


 僕は音の方向とオリビアの魔力をどうにか掴もうとする。がむしゃらに駆け抜けていく。


 一瞬の静寂が訪れる。そしてまた打撃音が響き、次に何かが吹き飛ばされる音が響き渡る。その時、オリビアの魔力が全くわからなくなった。僕は爆発的に魔力を全身に駆け巡らせる。もう草木の障害物なんてどうでもいい。強引に全速力で駆け抜け、その先に———倒れている、オリビアを見つけた。

 

 その前にはもじゃもじゃの頭をした変な男が1人、しかも真剣を持ってる•••!オリビアは倒れているが息はしている、ぎりぎり間に合ったか!?


 僕はすかさずオリビアの前に塞がる。


「オリビア!大丈夫!?」


「ウィル、助けて•••っ」


 いつもははきはきして、逞しく輝かしいはずなのに、打って変わってオリビアのそのか細い声に、僕の頭は怒りで埋まっていく。

 頭は真っ白にしない。オリビアをこんなことにした目前の男を、しっかりと視野に捉える。

 

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