第二章 第三十九話
「じゃあとりあえず、4大元素の魔法からやっていこうか」
あれから約束通り、稽古前に魔法についてオリビアに教えるようになった。
「火、水、風、土についてだよね。あとはその細分化した役割は前ウィルが言ってたやつだよね。ちゃんと予習してきたよ!」
オリビアも準備ばっちり。
「さすがだね、オリビア。じゃあさっそくだけど4大元素の魔法には基本の初級魔法があって
それは『火球』、『水球』、『風球』、『土球』って言って全部球状の魔法。4大元素の魔法は無属性魔法の何かに寄与して単発の効果を期待する魔法文字列のみの魔法と違って、事象そのものを引き起こす。だから数個の魔法文字列が重なり、干渉しそれが魔法陣となり魔法が発現するんだ」
「魔法陣?」
百聞はなんとやらだ。
「見てて」
僕は手のひらに手のひら大の魔法陣を組み立てる。
初級魔法はどれも同じだ。4大元素の性質、球状を保つ形状維持、そして決めた方向に飛ばす方向性の出力、魔法文字列は4大元素ごとにそれぞれ違うけど細分化すればこの単純な構成で組み立てられている。
今、4大元素の魔法が発現する。
「これが初級魔法『火球』」
僕の手のひらの魔法陣の上に、青白色の火の玉が浮かんでいる。
「綺麗•••ウィルの魔法って本当に綺麗だね」
よかったよかった。そう言われるのは魔法師冥利に尽きるってやつだ。うん、今日もいい感じに魔法が発現できてる。
「こんな感じで初級魔法って言うのは性質と形状と方向性とで成り立ってるんだ。だから魔法文字列も3つを組み合わせて作られていて、その文字列同士が反発しないように組み合わされた形が魔法陣ってわけ」
「はえー、なるほど。4大元素の性質と形の維持と方向性、確かに何かを発現させる上でどれも基本のきって感じだね!」
オリビアは本当に理解力が高い。なんでも吸収するわかめのようだ。
「そう!オリビアの言う通り初級魔法には基本が詰まっている。これを暗記だけで覚えるところもあるようだけどそれは勿体なすぎる。僕は細分化して気づいたけど、ここに魔法の発現の基本が詰まっているんだ。だからオリビアも発現できるようになるまでは暗記でそのまま組み立ててもいいけど、慣れてきたら是非とも1つ1つ噛み砕いて工夫して組み立てて欲しいな」
「よーし、頑張る!」
オリビアにまずは『火球』を教えていく。『火球』の一般的な魔法陣を教えて、念の為にどう言うふうに魔法文字列が区切られてそれぞれどんな役割があるかも教える。
「これが『火球』の魔法陣。それでこの魔法陣はこんな感じで魔法文字列が分けられるんだけど、それぞれに今さっき言った役割があるって感じ」
「なるほどなるほど。え?ねぇねぇウィル。いろいろ質問があるんだけど、ウィルが今さっき使った魔法って手のひらくらいの大きさだったよね?今ウィルが教えてくれたこれってウィルのより拳1個分くらい大きいよ?あと4大元素の性質だけ変えたら他の4大元素の魔法にならないの?」
ふふふ、気づいてくださいましたか。そしてさすがオリビア、とてもいい着眼点だ!
「いい質問ですオリビア君!魔法を組み立てる上で”共鳴点”と”反発点”って言うのが重要になるんだ」
オリビアはと、いいますと?みたいな顔をする。
「魔法文字列が重なることによってそれぞれ魔力が干渉するんだけどその際に魔力同士が共鳴しあって効果が相乗される”共鳴点”と魔力同士が反発し合う”反発点”って言うのができちゃうんだ。共鳴点は強ければ強いほど魔法の質も高くなって、反発点が強ければ強いほど反発して魔法がうまく発現しない。だから役割はそれぞれ一緒の効果を持つんだけど、『火球』以外の他の初級魔法は文字列の並びや文字列が4大元素の性質に反発しないように別のものになってたりしてるって言われてるんだよね。だから一般的に教えられてる魔法は反発点が少なく共鳴点も普通基準な並びに組み立てられてるんだ。僕のはちょっと工夫してるからそれに外れて小さかったりするわけ」
僕はこの反発点、共鳴点に重きを置いている。反発点が多いと反発してまず魔力は発散してしまって魔法はもちろん発現しない。魔力を多く通して反発を無理やり無視して魔法を発現することも可能ではあるが、安定もしないし効果も安定するかと言われれば期待できない。今でも大きな魔法を大量の魔力を通して発現させるやり方をしてるらしいけど、逸出現象も大きいし魔力変換効率も悪く、それならと僕は反発を少なく、共鳴点を強くするように魔法文字列の組み立てに重きを置いて逸出現象を限りなくなくし魔力変換効をよくすることを試している。そうすることによって少ない魔力でより質のいい魔法が発現できるってわけだ。
うーん、魔法はいつ見ても奥が深いね。
「まあまあ、これは教科書的な話だから実際にやってみないとね。さ、オリビアもやっていてみよう」
頭では分かっていても実際にやってみないとわからないことは多いからね。
「うん!やってみる!」
オリビアが初級魔法・『火球』を組み立てていく。うん、身体強化の魔法を極めているおかげで魔力での魔法の組み立てはスムーズだ。そして魔力量も申し分ない。その美しい金色の魔力が織り成し、魔法を発現させる。
そこに発現されたのは丸というような、丸っぽいというような、辺縁がぎざぎざぷよぷよしてる丸ぽい赤色の火の玉だった。
「ええええ!?こんなんになるの!?」
「ははははは、そうそうそんな感じになるんだ。ただ組み立てたらいいってわけじゃないってこと。さ!あとは練習あるのみ!魔法陣の組み立てをもっと具体的に意識できるように実際に紙とかに書くことも重要だよ!」
オリビアの魔法生活の始まりだ。
いやー、やっぱり魔法は奥が深いね!
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それから何度か魔法を練習し、オリビアの魔力も尽きかけたところで一旦休憩。
「はあ、ウィルー、魔法って難しいんだね」
「難しいよ!だからこそ面白いんだけどね」
今のオリビアの魔力量はたぶん普通くらい。これから魔法をどんどん使っていっての成長と魔力開花期にどれだけ伸びるかって感じかな。うん、オリビアがどんな魔法師になるかとても楽しみだ。
「ちなみに、魔力は自分で作って自分で操るものだからそこにはイメージ力が少なからずとも影響されるって言うんだ」
「うんうん、なるほど」
「だから多くの人がその魔法の名前を詠んでイメージを固く持って魔法を発現する詠唱魔法を使ってるよ。僕たちのは無詠唱魔法ってやつだね」
「ウィルー!そういうのは初めに言ってよ!!わたしはまだ初めてなんだから1つずつしていかなきゃ!!この魔法バカッ!!」
えええ、でも詠唱魔法はその分詠唱分の多少のラグが生じるから最初から無詠唱の方がいいかなって思ったんだけどなあ。
「ご、ごめん•••」
と言おうと思ったけどオリビアが有無を言わせない形相をしていたので素直に謝ることにした。
この後めちゃくちゃ丁寧に教えた。




