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第1章 4話

 知ってる、天井だ。

 僕はいつも起きた時に見上げるいつもの光景に親近感をわく。そのせいか、今さっき起きたことが幻だったのではないかと思ってしまう。

 とりあえず起きあがろうかなっ!?ぜ、全然力が入らん、、


「う、うごかない。」


 この疲労と脱力でやっぱり今さっき起きていたことが現実だったのだと再認識する。

 10重魔法陣の発現は僕が発現できる魔法の中で最高位の魔法だ。でも理論上の話で実際に発現させたことはなかった。あの時は頭が完全に吹っ飛んでて最大の出力でやってみたけど、その後の記憶が曖昧だから正直どうなったのかわからない、、、

 でも、

「今僕が無事にいつものベッドで起きて大丈夫ってことは、なんとかなったのかな」

 城は静寂に包まれている。外は真っ暗で月明かりが部屋を照らしている。

 破壊音と悲鳴が交差した阿鼻叫喚だった光景が夢を見ていたかのような感覚だ。

 あのときから、どれほど寝ていたのだろうか。あの場にいたみんなはどうなったのだろうか。僕の身体はまだ言うことを聞かないようだ。でもあの時の無力感での、自己嫌悪での脱力ではないのは確かだ。扉を開けられたし、外にも出られたし、他人の目もあまり気にならなかった。それはあの時から成長したと言えるのかもしれない。

 少し自分のやったことに満足感と、こんなものだったのかというような拍子抜け感があるが恐らく何か壁を乗り越えた後の気持ちというものはこんな感覚なのだろう。

 ロード兄様の言う通り、この壁を乗り越えたときの自分の感覚は大事な気がする。

 悩んでいたことの小ささを知った気がします、兄様。これを成長というのでしょうか。

 僕はこの何年間で年齢以上の体験をしたような気がする。自分で言うのもなんだがどっと老けたような感じだ。

 ただ身動きがとれないこの状況はなんか複雑で、むしろ笑えてくる。何かを乗り越えた気がするのに実感した気にならないのはなんかヘンテコなもの同士を寄せ合わしたつぎはぎな気持ち。


「こんなものかあ」


 そう思うと全身に力は入らないけど、気持ち的な力が抜けてくる。

 くつくつと笑みが溢れる。

 これが外で周りから見たら完全にただのやばいやつだろう。

 ただ、気分は悪くない。ふっきれた、快晴な空のような爽快な気分だ。

 

 でも体が動かないのは無茶したからっていうのはわかるけど、魔力が全然回復してない気がする。


「魔力がなくなったのは事実だろうけど、回復が遅いのは何も発現させなくて魔力を使い切るいつもと違って、魔法を発現させることに何か違いがあるのかな?」


 動かない身体で現状が確認できない今、できることといったら魔法について考えることくらいだ。

 10重魔法陣の成功の威力はうる覚えでよくわからないけど、龍にきいたのはなんとなく覚えている。世界殲滅級の魔物に効く魔法、うん、普通にやばすぎでは?

 でも問題点を挙げるなら、魔力変換効率の点から言うと理論上ではあまり無駄がなかったはずなのに、確かに発動に関してはスムーズにいったけど、明らかに当初の考えてたよりかは魔力が吸い取られた気がする。

 たぶん、魔法陣の組み合わせや文字列の干渉点の些細な調整が影響してんだろうけど、まだまだ改良点はいくつもあるなあ。

 しかも10重魔法陣でこの魔力量を必要とするなら、僕が考えている先の魔法はおそらくさらに何倍何十倍以上の魔力が必要となってくるはずだ。魔力増大の可塑性がある今できるだけ魔力を蓄えよう。

 やっぱり理論と現実は違うんだな。その場の魔力干渉とか空気の違い的な小さなずれがたくさんあるんだろうなー。

「今できること、できないことを考えて、できることをしよう。そして、できないことは道筋だけ作っておいて順番に処理していけばいいかな。」

 自分の魔法の発展を考え、明日が来ることを願いながら、今の現状に対して思いを馳せ、いつのまにか眠りにつくのであった。


 眠りから覚めた。寝ぼけ眼で窓から見た外は清々しく、太陽の日差しが部屋の中を灯り照らしている。

 むくりと起き上がり、どうやら体は動くようになったようだと確認する。

 大きな伸びをして、寝すぎによる体の倦怠感と節々のだるさをほぐしているとドアをノックする音が聞こえる。

 返事をするまでもなく、ドアが開くと母様が入ってきた。僕と目があうと母様は目を見開き、口を開け、まさに驚いた顔をしたまま固まった。


「えーと、おはよう、母様。」


 気まずそうにそう言うと、母様の頬に一粒の涙が走った。それをきっかけにぼろぼろと母様の瞳には涙があふれていく。

 そのまま近寄ってくると、僕を抱きしめ、抱きしめたまま頭を撫でる。


「おはよう、ウィル。お腹空いてない?」


 そして笑顔で僕の顔を見ながらいつも通りに僕に挨拶をしてくれた。

 母様は今日も、美しくてかっこいいな。涙を拭くこともせずに自分を曝け出して、僕の心配までしてくれる。マナーなんてものは雰囲気作りのためであって、自分を美しく見せれる人はなにをしても美しいことを物語っているような人だ。


「すごく寝たので、お腹減りました。」


 だから僕も笑顔でいつも通りに、今の心情で返すことにした。


 それから身支度を軽く済ませ、朝飯をとるために食堂へと歩いていく。

 母様が言うにはどうやら僕は5日間ほど寝ていたらしい。

 途中に何回か目を覚ましたことがあったけど動けなかったことを言うと、「よくがんばったわね」と言って笑顔で頭を撫でてくれた。

 食堂へ行く途中に従事者の人たちに声をかけられた。目が怖い時はその人そのものを怖かった感じがしていたけど、こんなにも親身になってくれていたんだと温かい気持ちになった。

 本当にこの城に生まれてきてよかったと思ったし、被害はわからないけどこうやってなんとか城を守れてよかったと思った。

 食堂につくとそこには父様がいた。

 おはようございますと挨拶をし、席へ父様、母様、僕の3人の家族が座る。

 龍が出た時の父様が腰が抜けた話や僕の魔法の話や色々な他愛もない話をしながら食事が終わると、父様が改めて話を切り出した。


「ウィル、話がある」


 父様の先程までと違った緊張した空気を醸し出す。


「? なんでしょうか?」


 父様は1呼吸おき、返事をする。


「この国は潰れることになった。」

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