第二章 三十三話
「さあ、みんなどんな感じになったかな?」
今日は父様がいる日。
さっそく父様とオリビアが稽古の準備をしている。
「ウィルのお父さん、進化したわたしを見せてあげよう」
「おお、気合いが入ってるな。是非とも全力でかかってきてくれ」
オリビアの身体強化の発現。これは、すごい。前以上に滑らかな発現だ。身体強化しか練習してないのもそうだけど、毎日の濃密な稽古が身体強化の魔法の発現の練度を計り知れないくらい底上げしている。発現の質だけでいうとすでに達人級だ。
「ほう?」
おお。瞬きをする間にオリビアは父様の前に構えている。父様もびっくり。
体捌きも明らかに前と違う、本当に無駄がない。早く動いてるわけでもないのに動きが滑らかすぎて気づいたら目の前という感じだ。
オリビアの上段、横薙ぎ、刺突と様々な攻撃手が高速に父様を襲う。父様は難なく、免許皆伝の前の型通り一本の木剣で、防いで行くが攻撃のテンポがとてつもなく速い。攻撃自体は特殊なことはなく、とても普通な連撃だが•••やはり無駄がなく、著しくテンポが早い。
オリビア、すごすぎないか?
身体強化の練度、型の質では免許皆伝レベルだ。
オリビアが攻めて攻めて攻めまくる。そしてその猛攻すらも囮にして父様の死角をとる。父様は完全にオリビアの姿を失っている。
オリビアは渾身の袈裟斬りを振るうーーーーーが、
「!?」
「惜しかったなオリビア、いい成長具合だ。今にも免許皆伝と言いたいところだが、実戦不足がいなめんな」
父様は完全に経験とその戦闘における嗅覚でオリビアの袈裟斬りを見ずにその場の感覚だけで掌握し、オリビアの木剣による攻撃をうまく片手の剣だけで吸収し、そのまま文字通り地面にねじ伏せた。
「ぐぅ•••参りました」
オリビアの木剣が地面にめり込みすぐには抜けない状況。武器の無力化でオリビアの負けだ。ただ、あの時に父様の手加減はなかった。もちろん免許皆伝用で二刀流ではないし身体強化の魔法も全力ではない。でも、その状況の中での父様の全力は出していた。オリビアの袈裟斬りを吸収する技術、ねじ伏せる腕力、そして父様の戦闘におけるプレッシャー、それは紛れもない父様の”本物”だった。
「今のはいけたと思ったのにー!」
「はっはっは、確かにもう少しだったぞオリビア!私もやられたと思ったよ。しかしだな、そこを経験と技術で迎えうった。だからそこを突破する経験と技術を身につけなければいけない。だからこその実戦不足がいなめん、ということだ」
「うん、本当に惜しかったよ、オリビア。道筋は完璧だった。父様の言う通り後は実戦あるのみ!稽古いっぱいしよう」
くっそーと言って力が抜け地面に座り込むオリビア。大丈夫、オリビア。君はしっかりと成長しているぞ。
「さて、次はウィルか」
さあ、問題は僕だ。オリビアにああは言ったものの僕の方こそ今は伸び悩みしている。
父様はもう一本の木剣を持つ。それだけでプレッシャーが2倍になったような威圧感だ。父様の構えが隙が、その一挙一動がこの剣士からは逃れないと本能が警鐘を鳴らす。ただ、逃れられないと警鐘を鳴らすだけだ。今は押しつぶされる様なプレッシャーには感じない。戦えると言うことだ。
これは成長と受け取ってもいいのだろうか。
「ほう、ウィル。中々堂々としているじゃないか。どんどんと成長して行くな、お前たちは。私は嬉しいぞ」
にちゃあと笑う父様。うわあ、完全に戦闘モードだ•••。うん、でも、僕も楽しみだ。”真”に達してはいないけど、父様と打ち合える自分が楽しい。
「ふははは!ウィル、溢れているぞ」
おっと、僕も父様の血を引き継いでる証拠の様だ。どうやら、今から父様との命懸けの稽古なのに笑みが溢れていた様だ。




