第二章 三十二話 【お互いの道のり】
最近、父様が村から外出する日が出てきた。
まだ日が沈むまでには帰ってはくるし、10日に1回とかの頻度ではあるがそういう日ができてきた。父様は何も言わないが、おそらく父様が言ってた通りにヴァルヴィデアの方で何かあったのだろう。父様は僕たちに心配をかけたくないために何も言わない。
だからそういう日はオリビアと2人で稽古をする日ができてくる。
「よーし、ウィルに魔法のこと色々教えてもらうためにぶっ倒すぞー」
「さぁ、そうはいくかな?」
父様には僕は免許皆伝をしているから父様がいない時は代わりにオリビアの師範として僕を認めさせたら免許皆伝してもよいと承っている。
だから僕に勝てば身体強化の魔法も十分に扱えていることになって魔法のことも聞けるし免許皆伝もできて一石二鳥なわけで父様がいなくてもオリビアはやる気満々なのだ。
ぽきぽきと首を鳴らせないので口で効果音を言いながら首を左右に振るオリビア。
僕はいつでも迎えるように諸手正眼の構えをとる。
僕たちの稽古には、やはりよーいどんの合図はない。
オリビアが身体強化の魔法を発現する。
僕もそれに応じて軽く身体強化の魔法を発現させる。
始まりはいつだって突然だ。
オリビアの踏み込みからの流れるような1歩での距離の詰め。気づいた時にはオリビアの刺突が目の前に来ている。
オリビアの身体強化の魔法、魔法文字列を具現化させての発現だけど恐ろしく滑らかな発現。僕でなきゃ見逃しちゃうってやつだ。もともとのオリビアの自分にとっての無駄を省くを魔法発現にも応用しているのだろう。故に逸出現象も少なく気づいた時には身体強化されたオリビアが突っ込んできているのだ。
じゃあこれはどうだ?
僕はその刺突に向かい、上段に構えながら半歩前進する。
「!?」
刺突は前への方向量がある。前へ進む力を急に上下に変えることはできない。だから半歩でも前に行って迎え入れてやればその突きは無力化できる。
僕はオリビアの前進する力を使い最小限の力で上段から振り下ろす、が
「ふっ」
オリビアは回転し刺突の前方向の力を利用したまま横薙ぎに迎え撃つ。
確かに身のこなし、剣術の腕は免許皆伝レベルだ。
でも、まだ足りない。
僕はそのまま振り下ろす。オリビアは回転して次に繋げたつもりだろうが、半歩縮まっているんだ。僕の振り下ろした刀身はちょうどオリビアの柄部分になることを考えていたか?
木剣同士がぶつかるとオリビアの木剣は簡単に弾かれ手元から飛んでいく。そして僕はそのままオリビアの体1つの距離で正眼に構えている。
「くっ••••••そーー!!また届かなかったよおおおおおお」
オリビアはだらんと両手を下げて悔しがる。
「いやあ、惜しいねオリビア。身体強化の魔法は問題ないしオリビアの刺突は一撃必殺できたわけじゃなくてその後の何手かも準備してたのはわかったよ。だから前に半歩でてみたんだ、そしたら何もできないんじゃないかって思って」
「えええ、ウィル意地悪すぎだよお。そんな突っ込んでるのに前に出てくるとか思わないじゃん!」
うんうん、僕も父様に最初はそんな感じだったな。感慨深い。だから父様の教えを僕も師範ぽく真似させていただこう。
「オリビアは自分の攻撃で自分の戦略で満足したんじゃないかい?よし作戦完了で終わりじゃあだめなんだオリビア。”果たしてその作戦は相手は考えていないか?予想外のときに相手はどうするか?その時自分はどこまで策をもっているか?”まずはそこまで考えなきゃだめなんだ。勝って兜の緒を締めるまでじゃなきゃ、それはまだ戦いでは自己満足の子供の領域だってことだ」
「なんかウィルがウィルのお父さんみたいなこと言ってる!」
ぎ、ぎくぅ。
「まあこれがうちの教えってやつだよ」
いっつざゴリ押しワールド!
「でも確かにそうだよねえ。はあ、確かに自分のことばっかりで相手の行動なんて予想してなかったよ。まあどれかいい方向に繋がるでしょって感じでやってたかも。うん、今まではわたしが好き勝手に打ち込んでただけだもんね。わたしも次のステップに進む時ってやつなのかな!よーーーし、免許皆伝頑張るぞおおおお」
オリビアに足りないのは圧倒的な実戦経験だ。戦闘の駆け引きさえできれば免許皆伝になるだろう。
•••自分で思ってあれだけど僕だって実戦なんてしたことない。龍のときはあれだ、うん、頭に血が登って記憶がないってやつだ。ただ、父様のプレッシャーの中での戦闘は紛れもない本物だと思ってる。父様の寸止めは明確な死が想像できるからなあ。僕もオリビアにはそんな経験をしてもらいたい。今はオリビアの成長の時だ。僕もプレッシャーをあげていこう。そして僕も自分を見つめ直し磨いていこう。




