第二章 第三十話
「私は今のウィルみたいに魔法が大好きだったわ」
母様が遠くを見つめて語っていく。その遠のいた昔を懐かしむ目が儚げで消え入りそうな美しさがある。
「私はね、ウィルと違って色んな理論を作るより、色んな魔法を実戦で使いたかったの。ちょうど世の中がちょっと荒れていた時だったから色んな場所で色んな魔法を試したわ。そしたらね、”戦さ場の魔女”って言われるようになっちゃった」
てへっと舌を出す母様。僕とはベクトルが違うけどたぶん、母様は魔法に対してひたむきだったんだろうな。
「もちろん人体実験のようなことはしてないわよ?ただ魔法の威力や範囲なんかはその時に理論的に語られてる魔法を全て使ってみたりしてたわ。ちゃんと勧告とかも出してりしてね。興味本位で使って死者なんか出したくなかったからね」
ちゃんと筋も通して母様は魔法を使ってきたんだ。
「もちろんそんなもんだからあなたと出会うの運命だったわよね?」
母様は父様の方をみて恥ずかしげに言う。それもそうか、父様は武の国の脳筋代表、いろんな戦に赴くのは当たり前のことだ。
「いやぁ、母さんのすごさといったら帝国と対面している時に、母さんの魔法で街が1つ滅びたからね。勧告も出してたし死者は出なかったけど、その時の相手は即降伏したよ」
「あら、そんなこともあったかしら」
どうやら母様も魔法界の脳筋だったようだ。
その街を滅ぼした時に父様は母様と初めて出会ったらしい。そこで父様は母様の魔法以外に興味がない、他を寄せ付けない姿勢に思わず惚れ込んだとのこと。父様も武道が大好き。自分と似たようなところに共感したのだろうか。
「母様は名の知れた魔法師だったのですね」
「名の知れ具合が良い感じか悪い感じかはわからないけどね」
ふふ、と微笑む母様。やっぱり母様に色々教えて欲しかったなー。
「今日聞いて思ったけど、やっぱりウィルに私の教えはいらなかったと思うわよ?それだけ十分に理論を練れるのならむしろ私のような他の証明されてる理論しか扱わない人の意見は足枷になる気がするの」
そうかな?でも好きに何も言われずに自由にさせてくれたからのびのびと自分の思うようなことがずっとできた気がする。うん、ポジティブに考えよう。
ただ、母様に教えてもらいたかった気持ちはある。
「でも、母様に教えていただくっていうイベントがよかったのですが•••」
とりあえずふてておく。
「あら、ウィルもまだ子供なのね。ウィルは可愛い可愛い私の息子よ」
頭をなでなでしてくれる母様。ま、いっか!
それから母様と父様の馴れ初めから思い出話が花を咲いた。
そのときは王でなかった父様は何度も母様と会い、時に助けられて時に助けてと絆を深めていったらしい。
父様は脳筋なのでゴリ押しする戦略をとるところは結構想像がつくけど、母様もよく単独行動をしていたらしい。だから2人はいつのまにか行動するようになったんだとか。
そんくらい母様が強ければ武の国であるヴァルヴィデアでも受け入れられ結婚、と言うことになったらしい。
いいなあ。僕も魔法の見識をお互いに深められる仲の人とそんな運命的な出会いをしてみたいものだ。




