第二章 二十七話
母様と僕に見守れながらオリビアが身体強化の魔法発現の文字列に手をかざし、魔力を通そうとする。父様は食後のトレーニングとかストレッチとかしてる。たぶん。
「よし、いくよ!」
文字列にオリビアから魔力が注がれ、鮮やかな金色の魔力が溢れ出る。
あら、と母様は見惚れる。
魔力変換効率において、魔法発現の際に魔力は何も考えなければ4割くらいは周囲に拡散してしまう。昔の人はこの魔力が漏れる現象を魔力溢出現象と名付け、この溢れ出る量でその人の魔力量の大きさの指標にしていたりした。今の世の中の考えはわかんないけど、僕はこれを無駄だと思って魔力変換効率と名付けて溢出をゼロにするように工夫している。とにかく、このときに個人の魔力がその名の通り溢れ出る。
そして魔力は人それぞれで個人差があるとされている。
その個人差のわかりやすいうちの1つが”色”である。
オリビアの色は、綺麗な透き通る金色だ。
オリビアのはきはきと元気な性格としたたかな賢さをもった気品に満ち溢れた色だ。母様の感動する気持ちもわかる。金色っていう魔力は珍しい気がする。基本的に母様がいうように、こんな魔法オタクにならなければ、普通にしていれば魔法には適性がある。その名の通りに偏りが生まれるのだ。そしてそれは魔力の色にもでる。火なら赤寄りの、水なら青寄りの、風なら緑寄りの、土なら茶色寄りの、といった風にだ。もちろん人様々で単色っていうのも珍しい。そしてだからと言って別にあまり魔力の色で得意不得意がわかるわけでもない。その中での金色だ。オタクの僕に取ったら美しすぎるぜ、オリビア。
そして身体強化の魔法が発動しオリビアの体が魔力で包まれる。
「おおおお!ウィル!できたよ!!なんだか身体がすごい軽い!今なら空にだって手が届きそうだよ!!」
オリビアが軽く体を動かす。それだけなのに明らかに動きの速さが違うことが目に見てわかる。
「どう?これが身体強化。オリビアの動きが全然違うのが僕からでもわかるよ。だからこそ接近戦での重要性がわかるでしょ?」
「うんうん!これは使いこなせないとやばいね。型の技術量が軽く覆されかねないや」
真面目なことを言うが、体が軽く動くのがオリビアは楽しいのかクルクルと回りながら喋る。
すると急にピタッと止まる。
「でもウィル、これ戦闘中にどうやって描くの?稽古してる時そんなそぶりないよね?それともウィルは紙に書いたのをもともと持って発現させてるの?」
「ふふふ、オリビアよ。ここからが本番ってやつだ!」
ごくっと固唾を飲むオリビア。
「紙に書いた文字列や魔法陣は魔力を通すことができる人はだれでも使える。ただ、その許容量っていうのが紙とインク、その媒体で決まってしまっている。だからもしも大きな規模の魔法を使うことや、どれだけ魔力を注いでも効果などはほぼ打ち止めになってしまうのが欠点だ。だから昔の人は考えた、魔力自体で描けば許容量はその人自体の魔力と身体能力に委ねられるのではないかと!そしてたどり着いた、魔法はイメージだ!!」
「!?」
僕は身体強化の文字列をイメージする、そしてその通りに魔力を発散させるッ!
身体能力の発現。そして身体の能力が底上げされ視界が広まったような全能感。今僕の体は、身体強化の魔法を帯びている。
「・・・相変わらず、溢出現象はほぼないのね」
母様が呟く。
「オリビア、これが実戦の魔法だ」




