第二章 二十三話
「えっと、じゃあ魔力暴走したら死んじゃうの?」
「うーん、死ぬわけじゃないんだけど、魔力暴走するとその反動でめまいを起こしたり血圧が安定しなくなったり、気絶したり体調はめちゃくちゃになるわ。最悪の場合は死ぬこともあるってことくらいかしら?魔力暴走した時にやばいのは、自分の魔力回路がぼろぼろになって魔法がろくに使えなくなることがあることね」
僕もこれを知って最初の魔力を練りすぎてぶっ倒れたときのヤバさを理解した。寝るだけで魔力増大ルーティンて本当に頭のネジがとんでるんじゃないかと今でもふと思う。でも子供の頃からできてるのでやめられないのが今の現状である。もしかしていつか体の中から爆発する時がくるのだろうか?子供の頃の可塑性を信じてやってみたけど、いつまでかわかんないし8歳って結構子供から離れつつあるしオリビアにはためさないでおこう・・・
「母様、人の身体は血液と同じで魔力が常に駆け巡っていると聞きます。それを魔力回路というのですよね?」
「ええ、そうよウィル」
「魔力も血液と一緒で常に身体の中で駆け巡っていないとだめと聞きました。では魔力暴走で魔力回路がずたぼろになった人たちはなにか身体的な不都合はないのですか?」
「ウィル、勉強家ね。それに関してだけど不都合はないわ。体調がおかしくなるのは最初だけでその後の健康状態はまったく問題ないわ」
「え!?なんでなの!?ウィルの話を聞くと魔力回路がやられたら魔力流れてなさそうだよ?」
えー、僕もオリビアと同じ意見。なんでだろ?
「魔力回路はぼろぼろになるけど微細に魔力がながれてたりとか、そもそも身体がその状態に適応しちゃうとか、なんだって。私もその辺の原理はよくわかんないのよね。私の一つの考えとしては魔力酔いを起こすって言ったでしょ?でも魔力酔いって治るの。そこの魔力場の変動に生物は慣れるからって言われてるわ。だから魔力回路がずたぼろになって魔力が例えゼロになっても時間が経てば体が慣れるんだと思うの。生き物ってすごいわよね?」
母様は呑気にそんなことを言うが、僕はなるほどと思った。多分原理なんていくらでもこねれるけど、意外に答えは簡単なものなのだろう。そう、いつだって真実は1つなのだ。
「そう、それでね、普通なら魔力が爆発的に爆発して自分の容量を超えてだめになるの。でも、それに適応する生物がいたの。もちろん魔力は通常では得られないほどの魔力量になり、さらにはその種族はその膨大な魔力量に耐えれる強靭な身体に適応したわ。だからそれは人族を超えた魔力を要する魔の種族、”魔族”と言われるようになったの」
「・・・魔物はそれの動物版っていうこと?」
オリビアの質問に母様はこく、と頷く。
なるほど・・・魔の種族、魔族、魔物か。
なんというか、わくわくする!
魔力暴走の成れの果ての魔力量なんて想像できないし、それに耐えれる強靭な身体・・・魔法も尋常じゃないはずだ。僕の、魔法オタクの血が、沸くッ!!
「母様母様、魔族の人たちはどうやったら会えるのでしょうか!?」
「ふふ、ウィル。あなたはいい子ね。その魔族に対しての認識は絶対に曲げちゃダメよ」
「?」
どういうことだろ?
「ウィルの質問ね。魔族がいるところはね、魔族の王たる魔王が統治している”魔王国”よ」
「それはどんなところなの?」
「まずはさっき言った世間の魔族に対する認識について話すわね。魔族は膨大な魔力を持ち、それに適応する強靭な身体も持ち合わせていると言ったわね?適応した際に魔族は特徴的な外見の変化が起きるの。その特徴的な変化っていうのは角が生えること。なんで角が生えるかって言うと、魔力が膨大すぎてそれまでの身体じゃ耐えれないから魔力を蓄える別の器官として角が生えるらしいの。角にもいろんな形があるらしいんだけど、まあ魔力を制御するのはやっぱり脳だと思うんだよね。だから頭部に変化が起きてるんだと思うんだけど、まあこの話は置いておいて」
母様はときどき話が横道に逸れるけど、たぶん頭が良すぎていろんなことを考えちゃうんだろう。そしてついついそれを言っちゃう。なんてお茶目な母様なんだ。普段はビシッとしていて、所作も可憐なのにそんな茶目っけあるギャップに父様も心を鷲掴みにされたに違いない。
「それでね、その膨大な魔力とその見た目のせいで魔族を、化け物と、昔の人たちが呼ぶようになるまでは時間はかからなかったわ」
ええぇ。魔族ってそんな意味嫌われ者なの?魔族の国ということはなるほど、虐げられて集まって1つの国になったわけなのかな。
「それで世間から行き場のなくなった魔族たちは1つになり、国を作ったわ。それが魔王国。そして魔族はその差別を忘れず、純粋な強さとして私たち人類に反旗を翻したわ。その昔から魔族と人類はずっっっと戦争をしているの。だから私たちの世代はね、そのことを受け継いで魔族を人だと教えられなかったわ。でもね、私たちぐらいから魔族と会う機会が増えたの。全然私たちと変わりなかったわ。違いは角があったくらいかしらね?ふふ、でも私だって髪飾りをつけることはあるからね。そんなに違いは本当にないはずよ。それでも魔族と人類の溝は昔から深く深く深いところまで落ちて行ったから、まだまだその溝が埋まることはないわ。ウィルのように魔族を人と言える新しい世代が、この溝をどうにかできたらどうにかして欲しいの。だからね、ウィル。魔族に会いたければいつかは会えるわ。それは魔王国に行くときかもしれないし、どこか普通な場所かもしれない。でもね、それはもしかしたら戦いの場になるかもしれないし、言葉も受け入れてくれないかもしれないことは覚悟しておいてね」
母様は僕とオリビアの目をじっと見て訴えかけてくる。この世は平和じゃない。武の国が他国と戦い、そして国の中でさえ争いがおきている。
だから僕たちは強くならなければならないのだ。




