第二章 第十七話 【魔法勉強会】
夕暮れ時、でも夕陽はまだ水平線よりちょっと上。
僕たちはご飯を食べ終わり、そのまま居間で母様とオリビアと僕とで魔法についての勉強会が始まった。父様はと言うと、母様の代わりに食事をした食器を洗っているところである。
「オリビアは魔法のことどこまで知ってるの?」
母様がオリビアに食後の紅茶を入れながら問う。
「うーん、あんまりよくわからない。なんか便利なものって言う印象しかないかな?」
魔法学というのは小等教育から段階的に教わっていくのが普通である。だからこの歳ではオリビアみたいによく使われているけどなんか便利なものくらいの認識で正しいのだろう。僕は環境が良かっただけだ。
「わかったわ。じゃあお茶でもしながらまずは私が魔法の歴史と概要を教えてあげる。その後にウィルから実践的なことを教えてもらおうかしらね」
あれ?母様も混ざって教えないのだろうか。
「いいんですか?」
「ウィルの考えは正しいから大丈夫よ。あとウィルの今の魔法の話を私も聞きたいの」
あの時から聞いてなかったからね、と母様はニコッと笑う。あの龍の事件より前は母様にこれだけ魔法が進んだと進捗状況を報告していた。なんだかあの引き篭もりだった頃を思い出す。あの頃で止まっていた母様との話をしていた時間がなんだか動き出したように思う。
「僕も魔法の歴史はすっとばかして曖昧なので母様の話を聞きたいです!」
あの引き篭もりの頃とは違って、今も引き篭もりがちだけど、母様の目をしっかり見て話をしよう。
「お願いします!」
オリビアもうっきうきだ。
「オッケー!じゃあウィルのお茶も入れるわね」
こうして場が整えられてまずは母様のプチ講義が始まった。
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「まずはなぜ魔法ができたってことからね。2人はなんか知ってる?」
「うーーん・・・」
オリビアは魔法のまの字もまだ知らないのでもちろん魔法ができたきっかけも知らない。ただ悩む姿は小動物みたいで可愛い。
そしてもちろん僕も詳しくはわからない。
「はい!」
「はい、そこのウィル君!」
ノリがいい母様である。
「遥か昔に学者が見つけたと記憶しております!」
「よーし、つまりみんなよくわかんないってことだね。まあ別にこれを知ってるからと言っても勉強熱心だねってことで終わるだけなんだけど、今があるのはその歴史の人たちのおかげだから尊敬の意味も込めて習いましょう」
魔法の理論には興味があるし、実際に使うこともできるから頭の中に入ってくる。でも歴史とかは正直僕は得意じゃない。確かに歴史を読み解き、過ちを繰り返さないように学ぶのはとても意味があることだ。ただ単純に興味がわかない。だからそういうのは詳しい人に教えてもらうのが1番だと相場は決まっている。
なので母様、お願いします。
「まず魔法はウィルが言った通り、遥か昔に、賢者・マルディンが不思議な現象を引き起こす文字列と魔力を見つけたことから始まるわ」
「なんで文字を並べただけでそんなことが起きるの?」
オリビアが首を捻る。
「それはね、”世界の理の干渉”によるものとされてるわ」
「世界のことわりのかんしょー?」
わかるよオリビア。意味わかんないよね。
「私たち人間や、他の動物たちもそうだけど、なんで今存在してるかと言われたら理由は偶然でしょ?それと同じで世界の自然の現象にもたまたま偶然で起こることがあるの。それはその時の天気の影響だったり土地の具合だったり様々なことが要因で起こり得るよね。逆に言うとある一定の条件が重なったら世の中の現象は起きてしまうの」
「あ!つまりその一定の条件っていうのがたまたま今の魔法で使われてる文字列もその1つだったっていうこと!?」
世の中には偶然が溢れている。僕たちが生きているのもそうだし、この星が僕たちに適していると言うのも全て言ってみれば偶然の連続だ。その中で賢者・マルディンさんは偶然に文字を並べたらある特定の現象が起きる文字列を見つけてしまったということだ。
「お、やるわねオリビア。あなた可愛くて武芸ができるだけじゃなくて頭もいいのかしら?」
「お父さんとお母さんが立派だから」
ふんすっとオリビアがドヤっと答える。
「ふふ、答えも百点満点すぎるわ。さぁ、オリビアに癒されたところで続けるわよー!つまり、その並べただけで偶然ある特定の様々な現象が引き起こされるってことは、本質的にはまだ誰にも証明されてないわけで、まあそう言うのは全部ひっくるめて世界で決まっていること、人にはまだ到達できないところ、それを”世界の理”っていうことにしたわけ」
言ってしまえば偶然たまたまできたことをうまく説明できないから世界で決まってることってしただけで、それをそれっぽくいうと”世界の理”って言うことだ。
それにしても母様、こっちに引っ越してきてから僕と父様で男しかいない環境だったからか、オリビアが加わると母様もいつもより女子会というのだろうか、なんだか別の波長が合って嬉しそうだ。オリビアありがとう。
「それって結局わからないことをそれぽくいってるだけじゃん!」
当のオリビアは辛辣である。
「でもその文字列を見つけたのはすごいよね。マルディンさんのその発見でいろいろ今の生活があるわけでしょ?」
僕は素直に感心する。マルディンさんは一体どうやって見つけたんだろう。よっぽどの暇人で一生文字遊びをしていたのかな?でも魔法に使う文字列って僕たちが使ってる言葉だけじゃなくて意味もわからない言葉だってある。
「そうよ。ウィルは魔法のことをよく触れているからこその感想ね。魔法の文字列は私たちが使っている文字だけではなく明らかに意味をなしていない文字も含まれている。だから魔法に使う文字のことは古代文字といったりもするわ」
まぁそれは遥か昔にあった言葉ではない言葉だったりなど歴史の変化によって別のことになってしまったのかな。今の言葉でさえ数年前と比べると全然違ったりもするのだ。時の流れというやつのせいにしておこう。
「でも文字列は魔力を注がないと意味ないよ?魔力はどうやってみつかったの?」
「オリビアいい質問ね!じゃあ次は魔力の説明に行くわよー!」




