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第1章 2話

 あの襲撃事件から半年の月日がたった。

 僕は意識を取り戻し、身体には傷一つの異常はなかったが、意識を取り戻した時、人の目をみると悪寒と吐き気がこみ上げてきてみんなの前には出られなくなった。 誰かと目線が合うと、思い出してしまうのだ。あの時の死の目を。


 あの事件は結局のところ兄様の出世と姉様の成長を危惧した、僕たち王族の繁栄を嫌っている隣国の暗殺計画であったらしい。

 けが人は複数でたが、兄様たちと王国騎士の働きにより死人までは出なく幕を閉じた、とのことであった。

 賊は捕虜にする前に全員自決魔法でその身を滅ぼし証拠すらもつかなかったが隣国の仕業と分かったのは隣国の王国の紋章が入っていたかららしい。しかしそれが他の隣国と紛争させる別の国の思惑かも知れないとのことで結局この事件はいったんはみんなが助かったということで終了となった。


 でも僕はそんなことを聞いても全然頭に入ってこなかった。何もかもが恐怖のどん底に塗り捨てられた僕は否応なく部屋に防ぎ込んでしまった。そんな僕に、兄様と姉様は騎士団と学校に戻るまで部屋に来て僕に話しかけてくれたが、僕は何も言葉を返せれなかった。父様と母様も事件の後始末で駆け回っている中、合間をぬって面会に来てくれたのに何もすることができなかった。家族の目線でさえ、いや、人の目線そのものがもう、駄目になってしまったのだ。

 僕は恐怖心と、なによりもその自己嫌悪感でどんどん沈んでいった。そして半年間部屋に蹲って屍のように横たわっていた。そして父様と母様や使用人の人たちは未だに声をかけてくれるが、反応できない自分が歯痒い時間がさらにしばらく続いた。

 そういう燻っている時期が1年に達するころだろうか、それは偶然だったのかもしれない。

 いつも通りに屍のように横たわっていた時、自分の部屋に積んであった本が目に入ったのだ。そもそもあれから物すらもはっきり見ていなかったように感じた。

 そこには魔法についての本が積まれてあったのだ。それは魔法の勉強の最中であの披露会に突入したのかどうかはわからないが、様々な魔法の本が積まれていた。

 

 魔法か・・・


 そう思った時、兄様の言葉が思い出された。

『お前には魔法のセンスは見張るものがある』

 不意に、今までの自分の愚かさが襲ってくる。僕は弱虫だ。愚か者だ。

 認めてくれるものがあるのに燻って。認めてくれる人がいるのに塞ぎ込んで。そして家族の優しさも、ここにいるみんなの優しさも踏みにじって。悔しかった。本当に悔しいと思った。みんなに応えることができない自分が悔しかった。涙がいつのまにか溢れていた。僕はそれから我を忘れて泣いた。ただただ悔しくて泣き続けた。身体の水分が枯れるまで泣いた。

 僕は未だに外に出るのは無理だけど、出来ることをしようと思った、思えたんだ。それも兄様の言葉のおかげかもしれない。


『見極め、乗り越える』


 兄様はやっぱり、かっこいいな。姉様もその背中を見つめて負けじとあんなかっこよくなったんだな。いや、そもそも父様も母様もみんなやるべきとをして、かっこよかった。僕が駄目なんだ。駄目だからこそ、だからいつかみんなの役に立てるために頑張ろう。まずは兄様の認めた、魔法を勉強しよう。もう負けないように。ここにはたくさんの本があるのだから。そうして僕は立ち上がり、久しぶりに地面を踏みしめ、自らの感覚を感じたのであった。


 そこから徐々に時間が流れて行った。未だに僕は人の目をみるのが怖くて外には出れない引き篭りだけど、コミニュケーションは扉越しに取れるようになった。

 最初は父様、母様は扉の前で泣くほど喜んでくれた。そして使用人も祝福してくれた。これは王族とか何も関係なく本当にみんなと一緒で家族でよかったと思う。失ってはないけど気づくものがたくさんできたと感じる。そしてそれに気づけてよかったと思うのと同時に、だからもっと頑張ろうと思った。

 

 魔法に関してだが、魔力を流すと特定の現象を発現する文字列というものがあり、さらにそれをいくつも重ね合わせ魔法陣を組み立て、さらにより高位の現象を発現させることを魔法と呼ぶ。もちろん文字列を多く、複雑に用いて魔法陣を組み立てるほどそれぞれの現象が干渉しあい、魔法を発現させるのが難しくなるのだが、その分、強く複雑な現象を引き起こせるとされている。この特定の配列を用いて魔法陣を組みたてるのが魔法発現の理論である。

 魔法は主に火、水、風、土の四大元素を基礎におき、それぞれの文字列、魔法陣の組み合わせで無限の魔法が理論的にはできあがるとされている。でも現在、未知の魔法陣の組み合わせはまだまだあり日々研究の段階らしい。

 僕は王城の教育で基礎の文字列は大体わかるし、その魔法に対して魔力の通しは元々なんとかなっていたからこの練度をさらに上げていこうと思った。しかし練度を上げる途中である思いがけない発見をした。それは、ある時、頑張りすぎて魔力を枯渇するまで使ってしまい、魔力欠乏でぶっ倒れたことがった。ぶっ倒れる前に目の前がぐるぐる回って下も上も右も左も分からなくて世界が僕をかき混ぜこの星から投げ出そうとするような感覚に陥って廃人になりかけたが、倒れた後起きた時に魔力が明かに上昇していたのだ。

 後で調べてみたが魔力は人間の中に流れる血液と一緒でずっと流れていないと目眩や倦怠感などの魔力欠乏による魔力酔いが出ていまい、完全に枯渇してしまうと重症となり命の危険性まであるらしい。そして最悪、その魔力が循環している自分の魔力回路が傷ついてしまい、うまく魔力が循環しなくなり魔法が使えなくなることもあるとのことだった。


え、いや、僕かなり危なかったのでは?


 でも仮説ではあるが子供のように可塑性がある期間ではむしろ修復され強くなるのではないかと思った。

 僕はとりあえず、この説が正しいかわからないが、練度よりもまず基礎である魔力量を増やすことを考え、気合で試すことにした。

 これを何回か続けてみた結果(ぶっ倒れた回数は数知れず!三途の川を何回も往復し!!星からは何度も放出され廃人に何度もなりかけた!!!)、とりあえずは実験は成功と言えた。魔力回路は以前とは比べ物にならないくらいに強度が増したし、魔力量も各段に上がったのだ。


 よし、これからはこれを晩にしてそのまま気絶して朝起きるという習慣にしよう。しかしこれは当社比なので良い子は真似をしないように。


 これからはさらに魔法理論を勉強して理解を深めていくことにしよう。大まかな計画が決まったことだし後は周回あるのみだな!

 

そして、僕の引篭り魔法修行計画が始まったのである。


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