第二章 第十三話
オリビアと稽古をし始めて1年が経とうとしていた。そうか、1年かあ。なんかしみじみだなあ。こっちにきて2年となるわけだ。あの時と何か変わったのだろうか。ヴァルヴィデア流剣術の免許皆伝はした。最近は真剣ではないが本気の父様と打ち合えてはいる。でも”真”には至れてないし、父様にはまだ及ばない。3歩進んで2歩下がってる状態というか、1歩ずつ地道に進んでいるというか。今は成長はしている、ということにしよう。
ということもあり、今日は実戦的にそろそろ魔法も使用してみようと思い父様に狩りの時に魔法の精度を見てもらう。
父様との稽古の際は未だに身体強化のみなので、というか魔法を挟む隙もないので最近魔法についてやってきたことはいつも通りの寝てるだけ簡単!魔力量増強法!だけだったのだ。なので近接的なことの次は魔法も使えるようになりたい、ということである。
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父様と歩き回っていると地面をわずかに揺らしながら近づいてくる気配がある。
「おお、これは」
「いつのまにか縄張りに入っていたようだな」
そこには全長3メートルほどの殺意的圧力を放つ熊がいた。僕らを目にした熊は雄叫びをあげ威嚇してくる。びりびりと肌に響き渡るほどの力強い雄叫びだ。
それにしても、熊の中でもでかくない?
「父様、この熊でかくないですか?」
「強個体だな。大きさもそうだしイキもいい。ウィル、いけるか?」
熊は敵意丸出しだが警戒しており威嚇の段階だ。
「はい、これくらい大丈夫です父様。むしろちょうどよかったです。見ていてくださいね」
僕は左手を熊に突き出し、即座に熊の真下に1魔法陣を展開。熊は自身に降りかかったことのない現象に一瞬狼狽えるが僕の魔法の発現の方が速い。僕の魔法が発現した瞬間、1風なびくと共に熊はピクリとも動かなくなった。
「ッ!?」
熊は今の自分が動きたくても動けない自分の状況に声にならない声を上げる。
よし!これならいい感じだ。
龍の時から考えていた魔法。4大元素のうち風の分野を細分化して考えてみた魔法。熊は未だに動けない。ありったけの魔力を練ったからからね、これくらいの熊くらいでびくともされたらどうしようかと思った。
僕はそのまま木剣を持ち、身体強化をかけ思いっきり頭を破壊する。爆発音と共に熊の頭は木っ端微塵となりそのままズシンとその巨体が横たわる。そして僕はいつも通り弱肉強食の世界、自然の食物連鎖に手を合わせる。狩った生物に対して悲しみや懺悔の気持ちは生物に対する人のエゴだと僕は思う。だから僕はありがとう、いただきますと祈る。
「父様、どうでした?」
祈りを終え、父様にできを確認する。
「ん?いや、うん。そうだな、まあ決まれば強いというところかな。魔法自体の魔力の消費も発現の速さも気にならないし汎用性は高く見える。ただ、拘束の魔法?なのかな?なら、逆に魔法自体もその位置でしか発動できないのじゃないか?そうならば条件を鑑みて、決まれば強い、というところだ」
「そうですね、父様の言う通りです。この魔法は位置固定であり、ゆえにその座標でしか効力を発しません。レベルの高い接近戦では難しいかもしれませんが、父様の評価がそれなら安心しました!乱戦やこういった巨大な獲物で使おうと思った魔法なのでよかったです」
父様に子供騙しだなとか言われなくてよかった。なんか歯切れは悪かったけど。そう言われてたらどうしてたんだろ、たぶん自分的にいい魔法だと思ってたからすごい落ち込んでただろうなあ。そして黒歴史として一生封印してる自信しかない。
でも、父様のレベルの接近戦では使えないし、そもそもそんなレベルなら魔法を発動している暇もないだろう。確かに使うことは難しい。よし、これは自分の今後の魔法の課題にしよう。いつか父様レベルでの戦いでもこう言った魔法を使えるように考えておこう。
僕たちは仕留めた獲物を持って帰る支度をすまして棒に吊り下げ持って帰る。
「なあ、ウィル」
「はい父様?」
改まって聞いてくる父様。いったいなんだろう?
「私は様々な戦に出てきた。率直に聞くが今日の魔法はなんだったんだ?なんであの熊止まったんだ?あんな魔法正直見たことないぞ?どう言う原理?今までのウィルの魔法は面白い使い方くらいで留めて置けたがさすがに今回のは私でもツッコミどころ満載だ」
ち、父様が狼狽えてる。貴重な光景すぎるんだけど、圧もすごおい!でもなんか嬉しいな、僕は父様に教わることばかりだけど父様がこのような形で僕にいろいろ聞いてくれてとても、なんとういか、誇らしい感じだ。
「これはですね父様。ずばり、4大元素を細分化して考えてみた魔法です!」




