第二章 第十二話 【壁】
「これは驚いた、、、まさかオリビアがここまで仕上がってるとはな」
父様が軽くオリビアと打ち合い、今さっきの僕と同じ状況に陥っている。
「父様すごいでしょ?」
「あぁ。無駄がとんでもなく少ない。オリビアが真剣にやるべき練習をしっかりやってきた証拠だな。これは稽古のレベルを前倒しでも全然問題ないな」
「師匠!まだ打ち合い中ですよ!!」
「すまんすまん。オリビアの現状が予想外すぎてな」
父様は稽古用に最初の僕とやった時みたく片手で相手をしている。そして父様は受ける側に徹している。それでも父様はオリビアはもはやそのレベルではないという。僕と同じ父様から1本をとる稽古へと移行しても良いと言っているのだ。僕は身体強化の魔法である程度レベルを上げられてた。今まで僕は総合的に認められてたのだ。しかしオリビアはまだ身体強化の魔法を使えず素の力だ。素の力で父様に認められたのだ。このままで、このまま行けば父様に並べると。
ぞくっと、武者震いをする。オリビアのポテンシャルの高さに。どうやら僕は戦い好きのようだ。そして強者との戦いに心が躍るらしい。オリビアが強くなったときどうなるのか、そして僕はどう戦うのかを想像してしまった。そしてその戦いの想像に心が波打ってしまっている。
僕も、負けてられない。
父様がいつのまにかオリビアへ木剣を突きつけており、オリビアが降参していた。父様はオリビアを褒めるがオリビアは手も足もでなかったと悔しがる。オリビアは負けず嫌いのようだ。だからこそ練習を実直に行い戦闘経験がないにもここまでのレベルに押しあがっているのだろう。でもまあ僕も実戦はないけど。本当にどんな練習したんだろう?
「ねえ、オリビア。オリビアはどういう型の練習をしていたの?」
僕は父様との稽古でくったりなっているオリビアへ駆けつけた。
「練習方法じゃないけど、型のわたしにとってやりにくいところを全部なくして私なりの型にしようと思って練習してたよ」
おお。だからあんなに無駄の動きがない、相連不断な動きになってるんだ。型を崩さずに自分にあった型をつくる。これは僕とオリビアだったら1番”真”に近いのはオリビアなんじゃない?
おいおいオリビアさん、一体どこまで突き抜けちゃうのよ。
「1番”真”に近いのはオリビアかもな、ウィル」
にかっと笑って父様は言う。え、僕の心読んだ?
「しんってなに?」
「オリビア、それは今の私に一本入れれるようになったら教えてやろう。だからまずは自分を高めよ」
ふうううううううとオリビアは息を吐き出す。わかるよ、オリビア。父様との稽古は本当に命をすり減らすくらいの集中力を使うよね。だから、僕たちは強くなれるんだ。
「父様、次は僕の番ですよね」
「ウィルよ、全力でこい」
さぁ、稽古のはじまりだ。
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乱舞、乱舞、乱舞。
父様の果てしない暴力的な攻撃が絶え間なく続く。そして自分が反撃をしようとすると、その予備動作で僕の攻撃を予想して、その対処の手を体のわずかな動きだけで悟らして
くる。僕はそれで結局後手に回される。
くっ、そ。それだけで何もできない圧力だ。でも、打ち合えている。あの頂だった父様と、打ち合えている。
「良いぞウィル!私の本気にここまで付き合えるのはなかなかいない!血沸き、肉踊る!!」
父様はさらに手数を、速度を増してくる。父様、僕だってさらに成長しているんですよ。
身体強化にむらをかけながら迎え撃つ。残像を残した動きから発想を得た局所版だ。
「!?」
僕の体は予想以上にブレてくれた。父様の猛攻のいくつかの剣は空振り隙を許す、が。その隙を晒すほど甘くはない。父様は動きを止めずに僕の剣を弾き返し距離を置く。
「残像を局所的に残してやるとはな。感覚が大変狂ったぞ。しかも錯覚でウィルの体捌き自体がブレて見えた。興味深い使い方をするなあウィルは。私も仕切り直しとはいえ、自分で距離を取るとは思わんかった。そこまで異質な感覚だったぞ」
「お褒めに預かり光栄です、父様。」
父様にも通用する身体強化の魔法運用、しかも局所的にむらをつけるだけなために魔力消費量もだいぶ抑えられていて比較的にヘルシーな使い方だ。それでも、父様は僕に攻めの起点にはさせてくれない。そして何より、やっぱり自分の理想とする動きから半歩遅い気がする。少しの違和感なんだ。少しだけずれが出てきてしまう。
「ウィル。居つきは、死への片道切符だぞ」
瞬く間に父様が目前に詰める。あれれ?おっかしいぞー?頭上、左右、斜め左右、突きの6手の攻撃筋が見えるよ。
「ぐッ!!!」
僕はなんとか全てを捌き切るが、その猛攻に重心を崩される。父様はその瞬間を見逃さない。父様はその両手剣を同時に上段から叩きつけるように振り下ろす。僕は木剣で受けるが重心が崩されているためにそのまま地面に押しつぶされる。
さっきの僕とオリビアの戦いみたいなことを!!もしかして見てたのか!?
父様は僕に木剣の剣先を突きつける。
「参り、ました、、、」
「ウィル日に日によくなっていくな。自分の身体強化の魔法を使いこなせれてきているし、体捌きも匠の域だ。オリビアとの戦いの最後らへんしか見れなかったが直近での間合いでの重心の崩し方は私も勉強になったぞ。お前は免許皆伝の中でもより強者の領域だろう。私もお前との勝負、心躍るぞ。だからこそ自分を貫けウィル。”真”に至れば居つくこともない」
恐らく、今さっきの自分のずれについて考えた一瞬の間を言っているのだろう。確かに、あの考えは無駄だった。考えても一瞬でその場で改善しないことを考えてもその時間に未来はないだろう。じゃあなんでそんなことを考えしまったのか。それはたぶん僕が色んな動きをできるようになったからだ。そしてその動きに対してもっと理想的に、さらに想像以上の考えが思いついてしまうからだ。でもその動きができない。父様は言ってくれてるんだ、ここが真との壁だと。だから貫けば、越えれば、至れば、居つく暇なんてないと。
ていうかオリビア戦見てたんだ。父様、勉強になったとか言ってるけどやり方はただのゴリ押しじゃ無いか。でも、それが父様流なんだろう。その貫きが強さなんだ。よし、諦めない。考えを止めるな。ここを、僕はこの壁を、絶対に越す。




